『ToHeart2 X-RATED』プレイ日記
ToHeart2 X-RATED
Leaf / 2005年12月9日発売 / Windows98・Me・2000・XP対応ゲーム / 18禁 [amazon購入ページ・通常版/初回限定版][ゲーム概要]
1997年にWindows95対応の18禁ゲームとして発売され、のちの美少女ゲームに多大な影響を齎した『To Heart』。その作品世界を引き継ぎながら、2004年12月にPlayStation2対応ゲームとして発表された続編を、18禁描写を含む作品としてリニューアルした作品。
両親の海外赴任のため、この春からひとり暮らしをすることになった河野貴明(名称変更可能)。お隣に暮らす柚原このみや、腐れ縁の向坂雄二らとともに過ごすのんびりとした日常は、だが雄二の姉・環の帰郷や、幾つかの新しい出逢いを経て、少しずつ変化していく……
- 2005/12/14
- 折角進んでるから書くよ、もう。ネタにでもしなきゃやってられん。そのうえ個別で閲覧できるようにわざわざカテゴリまで設けてみた。そんなに延々(以下略)
最初は、委員長こと小牧愛佳シナリオから攻略。……長いなあ。最近はすっかり根気が乏しくなっているのでちとしんどい。またこの委員長は登場する場所やイベントの方向性が限られているので、いささか単調になりがちなのが難です。主人公とのやり取りは非常に可愛いんですが、動きがないので慣れてくるとちょっときつい。
そして、愛佳の秘密について明らかになっていく終盤から、動きは激しくなるのに、プレイヤーに「何かしている」という感覚をもたらせていないのもややマイナス点です。確かに最後、ちゃんと契機をもって報いを用意しているのですが、もうちょっと前段から描写で伏線を張るなりしないとカタルシスにならない。同様に、大団円のあとのグラフィックの展開も唐突で、感動するよりは呆気に取られます。
……と、何故か否定的なことばかり書いてしまいましたが、基本的にはいい出来だと思います。当初は行きすぎた個性ばかりが際立っていたものが、背景が明らかになっていくにつれてリアリティを増し、同時に魅力も増していく、という構図は見事。エンディングの演出が、先に発想ありきでうまくまとまっていないのが一番問題なのですが、しかしそこまでの過程はよかった。
続いて、MTB特攻娘・十波由真シナリオに移行。こっちは逆に動きが激しくて楽しい。ただ、愛佳シナリオでは重要な意味を為していた主人公の“女子に対する苦手意識”がほとんどあげつらわれていないのが気になるといえば気になる――まあ、あんまり女の子を意識させるような言動をしていないキャラクターではあるが。
で、勢いに乗って終了。個人的に不足と感じていた要素が急に補われましたが、こういう補い方はあまり気に食いません。そういう虚飾の代名詞として使うなよぉぉぉ。エンディングの纏め方が唐突なのは仕様なのか? と首を傾げるほど、組み立ては愛佳編に似ている。この辺は、一般向けの恋愛ゲームとして作られたことの名残なのでしょう。どうせレイティングを変えるなら、この辺ももうちょっと調整すれば良かったのに。ただ、終盤の話運びは愛佳編よりも自然でした。臭くて感動は薄かったが。
そしてまた冒頭に戻る。幼馴染みのこのみの未見のシナリオを進めつつ……この娘の友人は攻略対象じゃないんだろうか、と遠い目をしてみたりする。なまじ主要キャラでないだけに、括弧付きの「普通」さがけっこういい感じなんだが。
文章面でも今のところ好印象ですが、「違和感を感じる」とか「うなづく」とか、奇妙な表現がちょっと引っかかります。言い出すときりのないことだとは承知しつつも。
- 2005/12/15
- 何故か幼馴染みふたりはおいといて、『〜XTRATED』で追加された生徒会長・久寿川ささら攻略に走る。
書き下ろしで制作時間に余裕があったのでしょうか、先に攻略したふたりよりトラブルが山盛りです。都合三段階ぐらいエピソードが組まれてるぞ。私は出がいちおうミステリ系なので、過剰に鈍感な主人公には苛立つんですが、構成としては実に見事でした。選択肢が少なくとも、引っ張っていく力がある。お陰で区切りが見つからなくて大変でした。ただ、終盤はちょっと混乱させすぎです。あまりに真面目に突き詰めていくあまり、結論が見えづらくなってます。そして個人的には、ああいう結論にするのなら、直後ではなく半年後を描くべきでした。そうすれば、言葉なんて二つ三つで済みます。力作であるのは解るのですが、ちょっと肩に力が入りすぎて、プレイヤーとしては充分に楽しめなかった印象。
続いて、ようやくメインヒロインであるはずの年下の幼馴染み・柚原このみを攻略。
――う、薄っ?! 直前に攻略した久寿川ささらがあまりに盛り沢山、終盤にかけて重みがしんどいくらいだったのに、このみのストーリーはけっこうあっさり。但し、幼馴染みから恋人へのステップアップ、というテーマからすると、必要なものはすべてきっちりと押さえてある。なろうことなら、身近な人間との感情的な軋轢を加えてもうひと騒動ほしかったような気もしますが……彼女の場合、無理なんだろうな。その意味からも愛称しか出て来ない友人ふたりに奮闘してほしかったところですが、あいつらがしたことと言えば嬉しい余計な知恵を吹きこんだだけか。XRATEDならではの追加シーンも含め、可愛さは絶品でしたが、シナリオ的にはもうひと味欲しかった。更に、序盤のような意外な笑いを取る場面が後半にもあれば良かったんですが――って、それは他のキャラクターを見てみねば解らないか。
引き続きmixiの知人がやたらと入れ込んでいるタマ姉こと向坂環に挑戦――しつつ中盤ちょっと脱線させてみたり。
あ、これは前回既に気づいていたことですが、主人公の名前をデフォルトから変更すると、台詞の読み上げを名前なしでも通用する言い回しに変えているのですが、ところどころ音声だけデフォルトで呼んでいたり、逆にそこだけテキストがデフォルトのままだったりしているのが目につきます。……まあ、あれだけ膨大な分量を相手にしているのですから、取り漏らしがあるのは仕方ないんですが。
- 2005/12/16
- もうひとりの幼馴染み、向坂環終了。
メインヒロインであるはずのこのみと同様、シナリオは薄めです。日常の積み重ねから、ある契機でようやく結ばれるわけですが、きっかけはありきたり。ただ、ありきたりのイベントに説得力を齎すための過程を丁寧に描いているので、“タマ姉”というキャラクターに惚れ込んだら、これ以上に理想的な筋もない。なまじ懇切丁寧に物語を膨らませたりしなかったがために、想像する余地が多々あるのも彼女の場合はいい方向へと働いているようです。
しかし、タマ姉シナリオの本領は何よりもエッチシーンでしょう。凄まじいばかりにエロかった。まるでここに全精力を傾注したかのように。PS2のときこの場面が存在しなかったというのが信じられないくらいに。お約束の“色”ネタも実にいいタイミングで使ってます。
で、そのまま途中寄り道していた隠れキャラシナリオへ。まだ辿り着いていない方のためにいちおう名前や細かな点は伏せる。こちらも展開は至ってシンプル……かと思いきや終盤で思わぬツイストが。メイドロボ云々の解釈からして、『ToHeart』というのはわりと許容力のある世界観ではありますが、こういう展開はさすがに唐突すぎる。何故そういう判断になるのか、何故あそこで意想外の逆転が起こるのか、という伏線がない(或いは、そうと感じさせない)ために、いい結末にも拘わらず釈然としない印象を残す。主人公との交流ぶりは甘酸っぱくて良かっただけに、もう少し柱をちゃんと立てて欲しかった、という印象。
実のところ現時点でキャラクターはあらかた攻略済、あとはひとりと一部のCG埋めが残るのみなのですが、明日以降のネタに残しておきたいのと、実際問題として今日はもう書いている時間がなさそうなので先送りします。とりあえず、私にとっての最強は今のところ双子シナリオだとだけ言っておく。
- 2005/12/17
- 天才工学少女・姫百合珊瑚とその妹でお馬鹿だけど家事の達人である瑠璃の双子シナリオ終了。
前回も書きましたが、個人的には今のところ彼女たちのシナリオをいちばん高く買います。かなり紆余曲折に富んだ展開ですが、久寿川ささらのように段階に分かれているのではなく、少しずつ彼女たちの個性と、ふたりを巡る問題の本質が浮き彫りになってくる筋運びが巧み。
わたくしごとですが、この手のゲームでは登場人物同士の関係性が攻略の面からは軽視されがちなのが気に掛かっていました。その辺を意識した作品も少なくなく、実際この作品でも久寿川ささらはかなり意識していて、終盤では唐変木の主人公を前に意味深なやり取りをする場面が幾度もありましたが、それ自体が波乱の材料にはならなかった。翻って姫百合姉妹のエピソードはそれがギリギリまで牽引材料となっている。その決着がアレ、というのも、『ToHeart』という本来真っ当な恋愛ゲームではかなり意欲的でいい。そのうえ『〜XRATED』としてのプラス要素が濃いのですから言うことはない。出来れば、もうちょっと時間が経ってからの“その後”を示して欲しかったですが、それは望みすぎでしょう。あれから更に“奥”を示唆するのはさすがに厄介だ。
続いては、ミステリ研究会と一口に言っても小説ではなくUFO・オカルト類を追うほうの女の子、笹森花梨。彼女は正直、私にとっては微妙なキャラで、攻略するのも躊躇ってました。相手の意見に耳を傾けることなくマイペースで突き進むようなタイプの人間には、間隔をおいて少しずつ慣らしていかないと駄目、という考えなので、無理矢理引きこまれた部活に訳もなく加わる主人公の心理にまったく同調できないので、必然的に彼女の攻略にも気乗りがしなかったわけで。
シナリオ自体も、彼女のそうしたキャラクターに変化が生じるでもなく、またどうしてそういう人柄になったのか掘り下げてドラマを構築するわけでもなく、唐突にトラブルが生じて、唐突に解決することが求められて、それもまたあっさりと片づいてしまい、物足りなさを禁じ得ない。昔からの幼馴染みで、些細な行動にも主人公が愛着や想い出を感じ取ることの出来るこのみやタマ姉のエピソードと違って、花梨の行動はすべて理解の埒外にあるため、その的外れさや破天荒ぶり以外に魅せるところがないのに、いまいち突出した個性をアピールするシナリオがないのが問題なのでしょう。どうして主人公が彼女に惹かれたのかも、反対にどうして彼女が主人公に気を許していったのかもよく解らないままなので、ロマンスとしても盛り上がりに欠く。まるっきり魅力のないキャラクターだ、とまでは言わないのですが、それがまったく活かされていないので、シナリオとしては評価できません。既に全キャラ攻略を済ませていますが、シナリオという点では彼女が最も低調でした。花梨の良さは寧ろ、最後に攻略した宇宙人娘・るーこのシナリオのほうがきっちり描いていたように思います。
- 2005/12/18
- とりあえずこれで最終回のプレイ日記、自称宇宙人の女の子るーこことルーシー・マリア・ミソラ攻略編。
これもやたら濃すぎるキャラクターゆえに花梨に続いて苦手意識があったため最後まで見送っていたのですが、序盤はともかく、親しくなってからの展開はなかなか心地よかった。まるで価値観の違う人間が、互いに妥協点を見出しつつ心を寄せ合っていく過程が丁寧に、厭味なく描かれているのに好感を抱きます。昨日も書いた通り、自身のシナリオではアクの強さばかりが際立っていた花梨が、このエピソードの終盤では“いい友人代表”として主人公の心の支えになっていることも特筆しておきたい。個人的には花梨とるーこのシナリオを絡めて膨らませることも可能だったのでは、とちょっと勿体なく思いましたが。ある意味予想の範囲内のオチは、描写の回収が不充分で充分なカタルシスに繋がっていないのが惜しまれますが、全体としては不満の少ない出来。
で、これを以てひととおり終了。全体通して、想像していたよりも遥かにいい出来でした。如何せん第一作が強烈に記憶に残っているために、スタッフが入れ替わっているなかでどれだけあの雰囲気を踏襲できるのかが不安材料でしたが、そのハードルは見事に乗り越えています。もともと第一作にしたところで、完璧さよりも随所に空いた穴がプレイヤーに想像の余地を残したことによって魅力を膨らませていた感があり、意地になってシナリオを突き詰めたりせずに、ある程度ゆとりをもって話を構築していったことが奏功したのでしょう。それにしてももうちょっと掘り下げて欲しかったと感じる幼馴染みふたりや笹森花梨、反対に詰め込みすぎて他のキャラクターとの均衡を崩してしまっている姫百合姉妹や久寿川ささらなど、バランスの悪さも目立ちますが、トータルではかなり堪能できる一本でした。
あとは「違和感を感じる」「うなづく」といった奇妙な日本語で統一しているあたりや、折角名前の変更が出来るように工夫したにも拘わらず、文章上でデフォルトのまま表記してしまったり、たとえば「ひ、ひがしさん」みたいに(名前のチョイスに意味はない)口籠もったり吃ったりという場面での調整が行われていなかったり、逆に画面上ではちゃんと調整してあるのに読み上げはデフォルトの名前のまま、という場面がかなり目立ってしまっている、という欠点があります。リメイクということを考えるともっと丁寧に調整をして欲しかったところですが、まあ現実問題としていくら必死にやったとしても取りきれないのが誤字脱字だったりするので、まあ致し方のないところでしょう。
第一作を乗り越えるところまでは達していませんが、雰囲気は踏襲して新しい方向にも果敢に挑戦を試みた、充分楽しめる作品だと思います。エッチシーンも全体に濃密なので、その点も満足。美味しゅうございました。