cinema / 『ALIVE』

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ALIVE
原作:高橋ツトム(集英社・刊) / 監督:北村龍平 / プロデューサー:佐谷秀美、服巻泰三 / 脚本:北村龍平、山口雄大、桐山 勲 / テクニカルプロデューサー:篠田 学 / アシスタントプロデューサー:進啓士郎 / 音楽:森野宣彦、矢野大介 / 美術:林田裕至 / 撮影:古谷 巧 / 照明:田村文彦 / アクション監督:下村勇二 / VFXスーパーバイザー:進 威志 / 音響効果:柴崎憲治 / 編集:掛須秀一 / 出演:榊 英雄、りょう、小雪、國村 隼、ベンガル、菅田 俊、小田エリカ、坂口 拓、杉本哲太 / 配給:KLOCKWORX
2003年日本作品 / 上映時間:1時間49分
2003年06月21日公開
2003年10月28日DVD版発売 [amazon(特別プレミアム版)(デラックス版)]
公式サイト : http://www.alive-movie.com/
シネマスクエアとうきゅうにて初見(2003/06/21)

[粗筋]
 原みさ子(小田エリカ)をレイプした男六人を冷酷・残忍窮まる手口で殺害し、最後にみさ子も手に掛けたあと四ヶ月に亘って逃亡、逮捕された男・八代天周(榊 英雄)に、その日死刑が執行された――だが、彼は死ななかった。執行官は八代に対して、もういちど刑の執行を受けるか、社会的には死んだ存在として生き続けるか、どちらかを選ぶように告げる。八代は、生きる道を選んだ。
 ふたたび目醒めたとき、八代は奇妙な密室の中にいた。同じく刑死を免れた権藤(杉本哲太)と二人きりの部屋はどこかからモニターされており、スピーカーから男の声が「これは実験だ」と告げる。実験の趣旨を明かさないまま、武器となるもの以外すべてを要望通りに支給する、君たちはしたいようにしてくれればいい――
 権藤は洋服に贅沢な料理と好き放題に注文を繰り返すが、一方の八代は半ば虚脱したまま料理にも権藤にもさほど興味を示さない。権藤は苛立ち挑発するが、八代は我関せずの態度を貫いた。
 時間の感覚が失われ、権藤も平常心を失いはじめたある日、部屋の一画にあるシャッターが突如開いた。シャッターの裏にはガラスの壁があり、その向こうにはひとりの女が佇んでいた。自らを魔女と言う彼女(りょう)はガラス越しに二人を誘惑し、権藤は激しい興奮を見せるが、八代は動揺していた――容貌のまったく違う彼女に、みさ子の面影を八代は見ていたのだ。彼女の存在にはしゃぐ権藤に憤った八代は彼に殴りかかり、昏倒させてしまう。
 その様子をモニター越しに眺めていた小島(國村 隼)は人選ミスの可能性を疑ったが、魔女=三枝百合華の妹であり小島と共に実験を監督している明日香(小雪)は望ましい兆候だと判断して実験の継続を訴えた。彼らの目的は百合華の体内に巣くい、彼女の人格を浸蝕する“異次物”と呼ばれる何ものかを、別の人間に転移させることにあった。
 小島たちが実験に手応えを感じ始めていた矢先、実験施設をスーツ姿の男達が訪れる。その瞬間から、“実験”は急展開を見せ始める……

[感想]
『あずみ』の上映開始から数ヶ月も開けずに公開された北村龍平監督の最新作、である。
 舞台を広範に設定し、映画史上最大規模の二百人切りなど派手な話題に事欠かなかった『あずみ』に対し、本編は極端に舞台を絞り、話としても密室劇に近い雰囲気で進行する。こと前半ではアクションの類も登場せず、心理的な駆け引きを中心にしているため、地味な印象が強い。
 だが、粗筋で書いたこのあと、徳武(ベンガル)らが登場したあたりから話は突如大胆に展開する。予告編で見られたような、『マトリックス』を想起させるような戦闘シーンが挿入され、話運びも派手さを増していく。あまりにも前半と趣が違いすぎ、やもすると乖離した印象を与えるのがやや勿体ない。
 登場人物の過去や様々な思惑が交錯し、重い主題をきっちり描き出しているのだが、終盤に至ってうまい形で回収しきっていないことも残念。なんだか色々なことがバラバラに進行しすぎて散漫な印象を残しているし、関係者たちの行動も心理的変遷の描き込みが浅く疑問を多く残す恰好になっているのだ。何より、肝心の“異次物”にまつわる法則性が説得力に欠いているのが最大の問題であろう。
 ただ、中心である八代天周についてはほとんど揺らぎがなく、爆発的な力を具える後半にあっても、その行動理念が明白な点は評価できる。そしてそのアクション場面、ところどころ『マトリックス』を思い出させてしまうとはいえ、敵役がオモチャか道化に見えがちな『マトリックス』と異なり、動き一点張りではなく倒される側の感情や表情を見せて表現に深みを持たせており、見応えがあるのもいい。
 詰め込みすぎたためにぎこちなくなっているもの、テーマへの踏み込みも深く、その上で娯楽性をも留めた仕上がりで、従来の日本映画とは一線を画した作品となっている。とりわけ、結末の格好良さ、潔さは絶品。

(2003/06/23・2003/10/28追記)


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