cinema / 『バイオハザード』

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バイオハザード
原題:Resident Evil / 原案:Capcom『バイオハザード』シリーズ / 監督・脚本:ポール・W・S・アンダーソン / 製作:ベルント・アイヒンガー、サミュエル・アディダ、ジェレミー・ボルト、ポール・W・S・アンダーソン / 製作総指揮:ローベルト・クルツァー、ヴィクトル・アディダ、ダニエル・クレツキー、岡本吉起 / プロダクション・エグゼクティヴ:クリスティン・ローズ / 撮影監督:デイヴィッド・ジョンソン、B.S.C. / プロダクション&衣裳デザイン:リチャード・ブリッドグランド / 視覚効果スーパーヴァイザー:リチャード・ユリシッチ、A.S.C. / 音楽スーパーヴァイザー:アレグザンダー・バーナー / オリジナル・スコア:マルコ・ベルトラミ、マリリン・マンソン / 出演:ミラ・ジョヴォヴィッチ、ミシェル・ロドリゲス、エリック・メビウス、ジェイムズ・ビュアフォイ、マーティン・クルーズ、コリン・サーモン、パスクエール・アリアルディ、ヘイケ・マカッシュ / 制作:コンスタンティン・フィルム、ニュー・レガシー・フィルム、デイヴィス・フィルム・プロダクション / 配給:Amuse Pictures
2002年アメリカ・ドイツ・イギリス合作 / 上映時間:1時間41分 / 字幕:松浦美奈
2002年08月31日日本公開
2003年01月24日DVD日本版発売 [amazon]
公式サイト : http://www.biohazard-movie.jp/
新宿ピカデリーにて初見(2002/08/24)

[粗筋]
 アメリカの巨大企業『アンブレラ』が有する地下研究施設“ハイブ”が突如災厄に見舞われた。外部に通じる扉は閉鎖され、電力は遮断、コンピューターの並ぶ研究室ではスプリンクラーが作動し、エレベーターはワイヤーが切断され、そして施設内にはハロンガスが撒かれ――僅か数分のうちに、研究所にいる全ての人が息絶えてしまった。
 それから数時間後――“ハイブ”から隔たった場所に建つ古風な洋館でアリス(ミラ・ジョヴォヴィッチ)は目醒めた。何故か記憶の大半を喪っていた彼女は、自分が何者で、この建物で何をしていたのかも解らない。怖れを抱きながら屋敷を徘徊していた彼女を、1人の男が後ろから羽交い締めにし、ついで窓から突入してきた無数の特殊工作部隊が、アリスと男とを取り押さえた。工作部隊の隊長ワン(コリン・サーモン)はアリスに対し、現状を報告しろと命じる。
 彼らが言うには、この洋館は“ハイブ”に直結する地下鉄道をカモフラージュするための施設であり、アリスはその監視のために派遣されていた特殊工作部隊員らしい。“ハイブ”正規の出入口が閉鎖されたため、急遽洋館から侵入し事故の原因を調査するために彼らはやって来たのだ。最初にアリスを羽交い締めにした男――ラクーンシティ警察官のバッジを保持するマット・アディソン(エリック・メビウス)と、アリス同様に洋館監視の任務を帯びていたが、進入路の列車に潜んだまま記憶を喪っていたスペンサー・パークス=スペンス(ジェイムズ・ビュアフォイ)を同行させ、特殊部隊は“ハイブ”に侵入する。
 一同は“ハイブ”のネットワークからセキュリティまでを掌握するOS“レッド・クイーン”の核が存在するコンピューター・ルームを目指した。その入口は見取り図上では食堂となっていたが、実際には得体の知れないタンクが立ち並ぶ広大な空間があった。そこにレイン・オカンポ(ミシェル・ロドリゲス)ら数名を残し、アリスはワンらと共にコンピューター・ルームに通じる廊下の手前にあるコントロール・ルームに進む。
 ワンをはじめとした数名が廊下に侵入し、チャド・カプラン(マーティン・クルーズ)が同時にシステムを復旧させるが、途端に廊下は閉鎖され、攻撃システムが作動した。カプランが“レッド・クイーン”を沈黙させたときには既に遅く、ワンを含め廊下に侵入した全ての隊員が無惨な骸を晒していた。
 動揺しながらもカプランは、アリスの協力も得て“レッド・クイーン”を物理的に沈黙させ、予備電源に切り替える。作業を終え、レインらと合流すると――いつの間にか彼らは、不気味な集団に囲まれていた。言葉を失い、呻きながら無秩序に襲いかかり、幾度銃弾を撃ち込もうと倒れない人々。それは“ハイブ”の研究者たちのなれの果ての姿だった。

[感想]
 ゲームを映画化した作品、というのも幾つかあるが、本編は私の知る限り最良の仕上がりである。
『バイオハザード』は3Dで描かれた主人公を動かし、ゾンビの襲撃から身を守りつつひとつひとつ謎を解き物語を進めていくスタイルとなっている。攻略本でも傍らにしない限り常にヒヤヒヤし続けるような作品だが、その緊張感故に指示を勝ち取り現在に至るまでシリーズが継続している。ゲームスタイルそのものは既出だが、そこにホラーの要素を重ね斯界に定着させた功績は確かにある。
 ゲームの世界がきっちり確立されており、しかも本質的に映画に近い作りをしているから(ムービーシーンなどは欧米のスプラッタ・ムービーの印象がある)、そもそも他の作品よりも作りやすいと言うことも出来る。だが、本編の評価するべき点は、安易に模倣するのではなく、オリジナルに敬意を表しながら単体の映画としても成立するように、きちんとしたプロットを起こし、映像的な見せ所を多く用意した。当たり前のように聞こえて、実践はそう容易くない。
 わざわざ『チャーリーズ・エンジェル』『トゥームレイダー』を引き合いに出すだけあって、女性陣の強さが際立ったアクション映画でもある。アクションシーンは多くないのだが、立ち回りに当たっての力強さは女性陣の方が上なのである。
 ただ、アクション映画としては打ちまくるだけの銃撃戦が多かったり、あまりに大量にゾンビを投入したために一方的な戦いになっていたり、と戦闘技術や的を絞ったカメラワークでの見せ場がないことが欠点となっているが、呼吸を駆使した驚きが随所にあるため興奮も緊張も堪能できる。原作のファンならずとも単純に楽しめる、見事な娯楽映画と言えるだろう。同じスタッフ・キャストでの続編があっても、充分に期待が持てる。

(2002/08/31・2004/06/23追記)


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