cinema / 『BONES』

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BONES
監督:アーネスト・ディッカーソン / 製作:ルパート・ハーヴェイ、ピーター・ヘラー、ロイド・セーガン / 製作総指揮:キャロリン・マネッティ / 脚本:アダム・サイモン、ティム・メカトーフ / 撮影:フラビオ・ラビアーノ / 美術:ダグラス・ヒギンズ / 視覚特殊効果監修:アリエル・ショー / 音楽:エリア・クミラル / 衣装:ダナ・キャンベル / 出演:スヌープ・ドッグ、パム・グリア、マイケル・T・ウェイス、クリフトン・パウエル、リッキー・ハリス、ビアンカ・ローソン、カリル・ケイン、マーウィン・モンデシール、ショーン・エイムシング、キャサリン・イザベル / 制作:NEW LINE CINEMA / 配給:GAGA
2001年アメリカ作品 / 上映時間:1時間36分 / 字幕:風間綾平(ややうろ覚え)
2002年07月06日日本公開
2002年09月26日DVD日本版発売 [amazon]
新宿武蔵野館にて初見(2002/07/27)

[粗筋]
 1979年、スラム街の顔役であったジミー・ボーンズ(スヌープ・ドッグ)がある日突然姿を消した。贅を凝らした彼の館はいつしか廃墟となって、近隣の住人からも忌み嫌われる一画となっていた。20年を経て、ふとした拍子から館に足を踏み入れた若者二人が、謎の失踪を遂げるところから、物語は始まる――
 パトリック(カリル・ケイン)は弟ビル(マーウィン・モンデシール)と友人モーリス(ショーン・エイムシング)とともに自分たちのクラブ設立を計画し、父の薫陶に従い誰もが見放している建物を見つけ、父には内緒で購入した――すっかり朽ち果て、どこか不気味な気配を漂わせたその館にパトリックは激しく惹かれるが、ビルや妹のティア(キャサリン・イザベル)はいまいち乗り気ではない。値段の安さと上昇志向をたてに押し切ったものの、近所に住む占い師のパール(パム・グリア)からは不吉な忠告を受け、父のジェレマイア(クリフトン・パウエル)もまた、自分が管理し確信的に放置していた館をわざわざ買い取ってクラブに改装しようとしている事実に激昂する。が、ここまで来て後に引くつもりはパトリックにはなかった。
 改装と準備が着々と進むなか、パールの娘であるシンシア(ビアンカ・ローソン)が手伝いにやってくる。母同様に、見えざるものを見る力を持った娘だったが、母とは異なりパトリックたちに好意的だった。彼女が手伝いに来たその日、元々館に住みついていた野良犬で今はティアに飼われている犬――「ボーンズ」と名付けた――が、固い錠前のかかった扉に執着するので鍵を破壊してみると、そこは地下に続く階段の入口だった。蠅が大量に飛び交い異臭を漂わせた地下室には――白骨化した他殺死体があった。着衣と装身具から、それがスラム街で伝説となっている人物ジミー・ボーンズの遺体であると気づいた一同だったが、開店までは面倒を背負いたくないと言い張るパトリックに従い、しばらくそのまま放置することにした。……だが、最後に残ったモーリスは、白骨の指に嵌った指輪に惹かれ、自分のものにしてしまう。そのときから、館にまつわる不吉な気配はより濃さを増し始めるのだった――

[感想]
 ツッコミどころ満載のホラー映画である。行方不明はどーして発覚したのかとか行方不明という報道がなされているのにどーして地下の白骨死体が発見されなかったのかそれ以前にそもそも館に警察が入ったのかさえ謎だし、そのあとの展開にしても具体的な姿がなくても危害を加えられるのに何故復活する必要があったのかとか、退治方法はいったいどこでどう知ったのか(気づいたのか)とかいう以前に館そのものがあーいう状態なのにアレひとつ退治したところであんまし意味ないじゃん、などなどホラーとしての土台がかなりガタガタなのだ。
 半面、アメリカ黒人社会の現実、70年代の風俗と現在の風俗の差違、そしてダリオ・アルジェントらを下敷きにしたという館の描写といった背景部分の完成度が高く、そうした部分を取り上げると非常に説得力があるのに感心させられる。かといって問題提起に走ったりせず、ごく当たり前のこととして描いているから、ゴシック・ホラー的な要素や纏まりのないガジェットとがあまり反発せず、ツッコミどころばかりとは言えちゃんと驚きや恐怖も地に足のついた表現となって意外な安心感がある――ただ、ホラー部分でのツッコミどころが暴走してついに吹き出しそうになる部分も後半には少なからずあったのだが。
 本編は元々あったアイディアに、スヌープ・ドッグの主演に合わせて脚色を施したというだけあって、衣裳にも立ち居振る舞いにもポリシーを感じさせる、なかなか颯爽としたダーク・ヒーローを創出している。展開やシチュエーションの強引さからB級の雰囲気は否めないが、古い名作の雰囲気を踏まえながら現代的なホラーを作ろうという意気込みが随所に感じられ、好感を持つとともに結構楽しめる作品に仕上がっていた。正直、思いがけない収穫。

 余談。この映画、単館レイトショー上映ということもあり、中綴じのきちんとした体裁のプログラムは用意されておらず、類したものはプレスシートのみが販売されていた。記念と参考のために購入したのだがこれで400円はどうかと思う。しかも粗筋は、冒頭では謎扱いされていた背景から書いているので万一鑑賞前に見ると完全にネタバレだし(が、そもそも宣伝文句からして終盤の展開を想像させるものなので、誰も隠すつもりがなかったのかも知れず)、作品解説ではスヌープ・ドッグに先んじて映画界に進出したラップミュージシャンを紹介しながら、ウィル・スミスを「元ラッパー」と書いたりとどーも配慮に乏しい。せめて有名どころの活動内容くらい調べて書こうよー。

(2002/07/28・2004/06/23追記)


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