/ 『いかレスラー』
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『light as a feather』トップページに戻るいかレスラー
企画:叶井俊太郎 / 原作・監督:河崎 実 / 脚本:右田昌万、河崎 実 / 監修・題字:実相寺昭雄 / プロデューサー:河崎 実、山田宏幸 / ラインプロデューサー:旭 正嗣 / 撮影監督:長野泰隆 / 助監督:水内宏征 / 音楽:石川修一、石井雅子 / 主題歌:西村 修&TOMOKA「いかレスラーの歌」 / 出演:西村 修、AKIRA、石田香奈、ルー大柴、きくち英一、中田博久、テリー伊藤、なべやかん、南部虎弾(電撃ネットワーク)、高山善廣、白石美帆、船越英一郎 / 配給:PHANTOM FILM
2004年日本作品 / 上映時間:1時間32分
2004年07月17日公開
公式サイト : http://www.ika-movie.com/
池袋テアトルダイヤにて初見(2004/07/31)[粗筋]
IMGP王座決定戦の行われているリング。かつては王者・岩田貫一(西村 修)の後塵を拝していた田口浩二(AKIRA)がクラッシュ火山を下し、遂に王座に輝いた瞬間、歴史に類を見ない椿事が沸き起こった。リング上に登り、田口の掲げたチャンピオン・ベルトを弾き落とし、彼をマットに沈めたのは――なんと、巨大なイカだった!
非公式な出来事とは言え、チャンピオンとなった男が即座に地を舐めたという事実は大きな話題として人々の口に上った。田口らの所属する超日本プロレスの社長・渡澤(ルー大柴)は当然ながらイカの勝利を認めなかったが、他でもない田口がそれを許さなかった。ずっと岩田の二番煎じと言われてきた田口にとって念願のチャンピオンという地位を確立し、正日本プロレスのコミッショナー鴨橋(中田博久)の娘である美弥子(石田香奈)との結婚を実現するために、リヴェンジを申し出る。
いかレスラー人気の沸騰に危機感を覚えた渡澤はいかレスラーに対し、最終的に駆逐されるべきヒールとしてリングに上がって欲しいという提案をしてきた。だが、正統的な試合に固執するいかレスラーとそのプロモーターを務める千山(きくち英一)は交渉をはねつける。憤った渡澤はいかレスラーを永久追放にすると宣言するが、世間はそんな彼を放っておかなかった。総合格闘技Q−1をはじめ各社から誘いの声が届くが、そのいずれにもいかレスラーは頷こうとしない。
あるとき、とあるスポーツ新聞がいかレスラーの独占インタビューに成功した。その記事に、いかレスラーの好物が岡本屋のゆず白玉入り豆大福とあるのを見て、美弥子は愕然とする。何故ならそれは、美弥子にとって恋人であり、不治の病に冒されてマットを退いたのち、突如失踪してしまった岩田貫一の好物でもあったのだ。いかレスラーの特技や子供への優しさを目の当たりにした美弥子は、彼が貫一の変わり果てた姿であることを確信する。
いかと今の恋人・田口とのあいだで揺れる美弥子は姉(白石美帆)に相談するが、姉は美弥子の心はもう決まってるんでしょ? と笑った。やがて田口と破局した美弥子は、いかレスラーとなった貫一のもとに帰っていく。
だが、いかレスラーと美弥子が晴れて結ばれたその夜、どういうことかいかレスラーは岩田貫一の姿に戻ってしまった。千山に誘われてパキスタンの山岳地帯フンザで修行、いかとなることで病を克服した貫一だったが、美弥子との幸せが彼の煩悩を呼び覚まし、それがいかへの変身を解くと共に貫一の病を蘇らせてしまったのだ。貫一は世話になっている寺の住職らの協力を仰いで、いかレスラーの躰に戻ろうと試みる。
一方その頃、田口もまた苦難の道を歩んでいた。特異の関節技は効かず十本も手足のあるいかレスラーとどうやって戦えばいいのか悩んでいた彼のもとを突如訪ねたのは、いかレスラー貫一のプロモーターであった千山だった。彼は田口にパキスタンはフンザまでの飛行機のチケットを渡し、奴に勝ちたければついてこい、と言い放つ。迷った挙句に田口は千山に従い、行方をくらました……
そして運命の対戦当日。果たして貫一は無事いかレスラーとして復活出来たのか、そしてフンザを訪れていた田口にいったい何が起きたのか……?[感想]
いかいかいかいかいかレスラー♪……
…………主題歌が頭のなかで延々ぐるぐると廻ってまして……非常に困ってます。
題名からして、しばらく前に色んな意味で話題を攫った『えびボクサー』を意識していることは想像がつく。かくいう私もそちらを気にしながらとうとう観に行くことが出来ず、本家を知らぬままこちらに触れたわけだが……それが良かったのか悪かったのかは定かではない。
のっけからズボンの膝の薄さが気になりそうなチープ感を漂わせてくる。いかレスラーというがどう見ても歩くのに使っている足は二本だけだし、軟体動物だっつーのにいきなり関節技で挑むライバルのアホさ加減が素敵だ。使っている技が似ているのと好物が同じというだけで、明らかに違う生き物をかつての恋人と同一人物だと簡単に確信してしまう女の子もまた凄い。常識的に考えれば絶対におかしい展開を、誰もツッコミもしないまま強引に続けてしまっている。
そうかと思うと、現実のプロレス史や業界の問題点を理解した上での描写らしきものも認められるのがまた微妙におかしい。かなり序盤のほうでルー大柴演じる超日本プロレス社長が力道山をモデルにしたと思しい人物を軸に娯楽としてのプロレスを長々と論じたかと思えば、何故か本編の上映館であるシネセゾン渋谷前でいかレスラーが最強のライバルしゃこボクサーに襲われるシーンは現実の出来事を下敷きにしているらしいし。そう言われてみればリング内外でのパフォーマンスや周辺のころころ変わる反応、ラストの「それは果たしてどんなもんか」と首を傾げたくなる驚愕の真実(?!)の扱いまで、なんとなく実際のプロレスを原型にしているように感じられ……なくもない。
更に突き詰めていくと、不条理というかおーざっぱなスラップスティックのように感じられる本編だが、実は『タイガーマスク』あたりと同様の覆面レスラーのマスク被りっぱなしか、或いは変身ヒーローの変身しっぱなしな話と捉えられることに気づく。普段はマスクなり変身なりを取り払って一般人としてなりを潜めて暮らしている、と思うから別段異様に感じないが、日常からあんな格好、あんな生態でいるとしたらそりゃシュールにもなるだろう。まさにその発想ひとつで作品全体を支えているのである。
惜しむらくは、着想のインパクトが大きすぎてあとが続かなくなり、あっという間に飽和を迎えて中盤以降はどれだけ盛り上げようとしてもいまいち退屈な印象を与えることだ。後半にも「なんじゃそりゃ」と叫びたくなるような無茶な展開が待ち受けているのだが、それ以外の部分は皆さん微妙に変なのは相変わらずでも突き抜けたところがなく、単調に終わってしまう。
ただ、スタッフは無論のこと、出演者も割り切った上でこの無茶苦茶な物語を楽しんでいる節が見られて、安っぽいながらも心地よさがある。過剰な演技も演出も、慣れてしまうと微笑ましく感じたりもする。
真面目に批判しはじめたらきりがない。これはこーいうもんなのだと割り切って初めて楽しめる作品である。ディテールや整合性に拘りすぎるようなら、はじめから見ないほうが身のためです。
それにしてもこのラストシーン、まるで“次”を暗示しているかのように見えませんでしたか違いますかそうですか。レスラーたちはいかの正体をはじめほとんど本職のレスラーが演じており、それ故にプロレスの場面だけはけっこう迫力があるのだが、ほかは基本的に若干玄人の混じった学芸会レベルである。
が、作中いちばん下手だったのがヒロインを演じた石田香奈だったことは指摘しておきたい。科白は聴き取りづらいし表情や仕種はいちいちわざとらしく、子役でも遥かに上手いのがわんさといる。同じく科白下手でも妙な力強さがあった西村 修や、大袈裟ながらちゃんと表情を作り分けていたライバル役のAKIRAのほうがずっと上手に見えるのは甚だ問題なんじゃないか、と思うのだがどんなもんか。(2004/08/02)