cinema / 『クライモリ』

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クライモリ
原題:“Wrong Turn” / 監督:ロブ・シュミット / 脚本:アラン・B・マッケルロイ / 製作・特殊メイク効果:スタン・ウィンストン / 製作:ロバート・クルツァー、エリック・フェイグ、ブライアン・ギルバート / 製作総指揮:パトリック・ワックスバーガー、ミッチ・ホーウィッツ、アーロン・ライダー、ドン・カーモディ / 撮影:ジョン・バートレー,A.S.C.,C.S.C. / プロダクション・デザイナー:アリシア・キーワン / 編集:マイケル・ロス / 衣装:ジョージナ・ヤーヒ / 音楽:エリア・クミラル / 出演:デズモンド・ハリントン、エリザ・デュシュク、エマニュエル・シューキー、リンディ・ブース、ジェレミー・シスト、ケヴィン・ゼガーズ / 配給:東宝東和
2003年アメリカ作品 / 上映時間:1時間24分 / 日本語字幕:岡田壯平
2004年10月09日日本公開
公式サイト : http://cry-mori.com/
銀座シネパトスにて初見(2004/10/16)

[粗筋]
 アメリカ南部・ウェストヴァージニア州未開地を貫く国道をローリーへ向けて、クリス(デズモンド・ハリントン)は車を急がせていた。就職がかかった面接のためだったが、途中トラックの事故による渋滞に遭遇してしまう。面接相手に連絡を取ろうにも携帯電話は圏外、Uターンして入った脇道で見つけたガソリンスタンドは寂れて公衆電話も通じていない。貼ってあった地図に、国道を迂回する脇道が記されていたことに気づいたクリスは、スタンドを出て未舗装の脇道を利用する。
 不慣れな粗い道を走っている途中、うっかりクリスが脇見した瞬間、車は停車していたレンジローバーに追突してしまう。レンジローバーの乗員は道に転がっていた有刺鉄線を踏んでパンクし、全員降車していたので無事だったが、双方ともに大破し身動きが取れなくなってしまった。レンジローバーの乗員のうちフランシーヌ(リンディ・ブース)とエヴァン(ケヴィン・ゼガーズ)のカップルを残し、他はクリスとともに助けを求めるため道を歩くことにした。
 一緒に来た三人のうちスコット(ジェレミー・シスト)とカーリー(エマニュエル・シューキー)はつい最近婚約したばかりの恋人同士は何も気にする風もなくいちゃついているが、クリスとレンジローバー組最後のひとりジェシー(エリザ・デュシュク)は、森につきまとう奇妙な雰囲気に神経を尖らせつつあった。
 地図上はずっと続いているはずだった道は、断崖を前に突然途切れている。迂回していった一同はやがて、一軒の家を見つけた。助けを求めて入っていったクリスたちだったが、そこで目にしたものは悉く、どこか常軌を逸していた。血の匂いのするテーブルに各所にぶら下がった物騒な刃物の類、薄汚れた便所や台所には不気味ななにかを詰めた瓶が大量に陳列されている。それらが人間を解体した残滓だと気づいた彼らは即座に逃げ出そうとしたが、折悪しく住人たちがそこへ戻ってきてしまった。裏口が塞がれていたため、スコットとカーリーは奥の部屋に、クリスとジェシーはベッドの下に隠れる。やがて戻ってきた住人たちがベッドの脇に放り出したのは――無惨に殺されたフランシーヌだった。
 フランシーヌの遺体をいいように蹂躙して、疲れた住人たちが眠りに就いたのを見計らうと、クリスたちは息を殺してふたたび逃走を図るが、最後の最後で気づかれてしまった。クリスたちは懸命に走る――!

[感想]
 製作はスタン・ウィンストンです。『ターミネーター』シリーズ、『ジュラシック・パーク』、『プレデター』など多くの作品で特殊効果を手がけ、斯界の第一人者として崇敬を集めている人物です。本編は、スティーヴン・キングに賞賛されました。某誌で2002年から2003年のあいだのベスト1ムービーとして本編を掲げたといいます。出演者は、有名な俳優ではなく目下売り出し中か、注目を集めつつある若手ばかりで構成されております。この情報から、映画の内容をご想像ください。
 そのまんまの作品です。
 何のひねりもありません。冒頭、フリークライミングをしているカップルが謎の影に襲われる時点で「ああ、そのまんまじゃん」と思ったら本当にそのまんまの1時間半でした。未開の森でトラブルに巻き込まれて、怪しげな小屋に入ったら不気味なものが沢山並んでいて、そうしてとんでもない連中に襲われて……ともうひたすらに常道を踏んでいくだけの映画である。あまりにそのままなのでいっそ潔い。
 第一人者が製作しているだけに、登場する化物たちの造形や美術デザイン、惨い死に様の演出ぶりなどは非常に巧いが、それ故強烈に印象に残る場面がないのが弱点でもある。
 敵対するクリーチャーにこれといって特色がないが、これは弱点であると同時に強みでもあるかも知れない。個性を立たせないことで、次に何が起きるかが予測しきれず、終盤まで緊張感を持続させている。但し、そうして弱点が厳密に規定されていないが故にどうせここでこいつが来て、という予測も出来てしまうので、結果的にはあんまり変わっていなかったりもするのだが。
 ハリウッドの王道とも言える“化物”スタイルによるホラーの常道を忠実に守り、そこから一歩も逸脱していない。思考硬直ではあるが、しかしそれ故にたまーにはあってもいいんじゃないかな、と感じる類の作品である。タイトルバックの形で暗示される化物たち=マウンテンマンの来歴については、少々蛇足であるし色々な誤解を齎しかねないものなので、不要ではないかと思ったが、それさえ除けばこれはこれで充分面白い。
 ……ただ、チラシで“スーパー・ナチュラル・ホラーの衝撃作”と謳っているのはどうだろう。“超自然”と呼べる要素はほとんどないでしょ、この話。

(2004/10/16)


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