cinema / 『ディープ・ブルー』

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ディープ・ブルー
原題:“Deep Blue” / 監督・脚本:アラステア・フォザーギル、アンディ・バイヤット / 製作:アリックス・ティッドマーシュ、ソフォクルス・タシュリス / 音楽:ジョージ・フェントン / 演奏:ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 / ナレーション:マイケル・ガンボン / 製作総指揮:アンドレ・シコエフ、ニコラウス・ヴァイル、ステファン・ベイトン、マイク・フィリップス / アソシエイト・プロデューサー:ヴァルター・ケーラー博士 / プロダクション・マネージャー:リン・バリー、アマンダ・ハッチンソン / 撮影:ダグ・アラン、ピーター・スクーンズ、リック・ローゼンタール、ほか / 編集:マーティン・エルズベリー / 提供:グリーンライト・メディア / 製作:BBCワールドワイド、グリーンライト・メディア / 制作:BBCナチュラル・ヒストリー・ユニット / 配給:東北新社
2003年イギリス・ドイツ合作 / 上映時間:1時間31分 / 日本語字幕:佐藤恵子 / 字幕監修:大森 信
2004年07月17日日本公開
2005年05月27日DVD日本版発売 [amazon]
公式サイト : http://www.deep-blue.jp/
ヴァージンシネマズ六本木ヒルズにて初見(2004/07/26)

[粗筋]
 地表面の70%強を覆い、すべての生命の母と言われる“海”。だが、肺呼吸によって生活し長時間の遊泳に適した体格をしていない人類にとって、その世界は身近なものではない。スタッフは綿密な準備を経て、約七年間の制作期間、7000時間を超えるフィルム、200ヶ所に跨るロケーションを費やして撮影した、壮大なるドキュメンタリー。

[感想]
 ……粗筋ではなくただの紹介文でしたが、説明するよりも見たほうがずっと早い。この映像を見て、圧倒されない人はまずいないでしょう。
 冒頭から、広大な青い海が画面を覆う。いくら視点を高くしても全貌を捉えることは出来ない。カメラは波の形作るチューブの中にまで忍び込み、巨大な水流がそれを飲み込み白い泡に包まれるまでを見せつける。この、従来の実写映像ではあり得なかったアングルと、地響きにすら似た音響が凄い。
 以後も、およそ経験したことのない映像世界が展開する。海面に乱舞するイルカの群れ、雲霞の如く舞うイワシの大群の中に突入し、水深15メートルにまで潜っていくオニミズナギドリ。満潮時、渚までやって来たアシカの子供を座礁の危険を冒してまで襲撃し、集団でコククジラの親子に接近しまだ海に慣れない子供を引き離し溺れさせて狩るシャチ。隣り合ったサンゴ礁が互いを貪りあい、深海では不可解な形状をした魚たちが瞬いて餌をおびき寄せ、なかにはこの撮影を通して初めて発見されたものもあったという。膨大な記録の中から抽出された映像には、ただただ度肝を抜かれるばかりだ。
 映像の饒舌さを信頼し、説明を極力廃しているが、それ故に一般人の知識ではその“すごさ”を把握しきれない映像や出来事をあっさりと見過ごしがちになるのが残念だ。劇場で鑑賞するときは、プログラムを一緒に購入することをお勧めする――但し、完全な解説ではないうえ、買う習慣のない方には700円という価格設定が割高に感じられるかも知れないが。
 説明を廃した代わりに映像を彩る、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団によるBGMがまた素晴らしい。部分的に演出しすぎという印象はある(たとえば深海での発光する生物がイルミネーションめいた表情を見せる場面での音の付け方は少々いやらしかった)が、単独での完成度の高さを保ちつつ映像の動きを踏まえた音の作り方をしており、映像世界をより格調高く、しかし親しみやすくすることに一役買っている――どころか、映像と共に主役を担っていると言い切ってもいい。
 ただ、あまりに精選された映像が並ぶあまり、後半に進むに従って慣れてしまい、やや退屈な気分に陥ってしまうのが難点かも知れない。そのことを理解した上で、個々に繋がりがないながらも一続きのストーリーを感じられるような編集をしており、尺も(およそ7000時間のフィルムの大半を捨てて!)90分程度と手頃に纏められているのだが、良く出来ているがゆえにジレンマに陥ってしまった感がある。しかしこの点を責めるのは酷だろう。いちど二度鑑賞しただけで捨てられるべき映像ではないし、いちど観た者の心に必ず何か残さずにおかない作品であることは確かなのだから。
 一種リラクゼーション・ムービーのような体裁であり、漫然と眺めていただけでも楽しめる。だが、映像のひとつひとつを自分なりに解釈し、様々なメッセージを感じ取ってこそ本当に観る価値のある作品である。映像ソフトが発売されてから観るのもいいが、出来れば設備の整った劇場で、その優れた音響共々堪能して欲しい。

(2004/07/26・2005/05/27追記)


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