cinema / 『たたり』

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たたり
原題:“The Haunting” / 監督:ロバート・ワイズ / 原作:シャーリー・ジャクソン / 脚本:ネルソン・ギディング / 撮影:デイヴィス・ボールトン / プロダクション・デザイン:エリオット・スコット / 特撮:トム・ハワード / 編集:アーネスト・ウォルター / 音楽:ハンフリー・シール / 出演:ジュリー・ハリス、クレア・ブルーム、リチャード・ジョンソン、ラス・タンプリン / 配給:MGM
1963年アメリカ作品 / 上映時間:1時間52分 / 字幕:飯島永昭
2003年08月08日DVD日本発売 [amazon]
DVDにて初見(2003/08/09)

[粗筋]
 ニュー・イングランドの郊外に建つ“丘の家”。90年前にヒュー・クレーンが若い妻と娘との新居としてこの地を選び建てた家であったが、妻は屋敷に辿り着く直前に馬車の事故で亡くなり、二番目の妻も原因不明の事故で死亡するなど、当初から不吉な出来事が相次いだ。間もなくクレーン自身も外遊先で亡くなり、娘のアビゲイルがただひとり取り残された。
 アビゲイルは終生保育室で過ごし、晩年看護人として村娘を雇ったが、この娘が“丘の家”の悪評を世間に広め、アビゲイルの死後は屋敷を相続することになった。だが、その娘も間もなく図書室の螺旋階段の上で首を吊って自殺、屋敷は娘の遠縁のものの管理下に置かれることになった。
 人類学者であり超常現象の研究家であるジョン・マークウェイ博士(リチャード・ジョンソン)が、この屋敷に目をつけ、奇妙な体験や特殊な能力があると思われる人々のなかから候補者を厳選し、屋敷の中で発生する超常現象を記録する、という実験を実行に移す。
 彼によって選ばれた人物のひとりが、エレナー(ジュリー・ハリス)だった。11年にわたって母の看護を続け、母の死後は姉夫婦の家に身を寄せ肩身の狭い思いをしていた彼女は、博士からの連絡に歓喜する。やっと自分の居場所を手に入れた、もう自分はひとりきりではないのだ、と。
 ややエキセントリックだが洗練された立ち居振る舞いのセオドーラ(クレア・ブルーム)、現在の所有者の係累であるルーク(ラス・タンプリン)とともに屋敷での生活を始めたエレナーだったが、初日の夜から奇怪な現象が彼女たちを襲う――

[感想]
 虚仮威しを極力抑えたホラー映画である。同時代にギミックを多数導入した鬼才ウィリアム・キャッスルが存在したことを思うと興味深い。
 いまの見地からするとナレーションが多すぎ、少々説明的になっているのがやや興醒めだし、ヒロインであるエレナーの言動があまりに感情的かつ恣意的で理解に苦しむ箇所が少なからずあるように思え、やや恐怖が伝わりにくい。学者と言いながら趣旨の一貫しない発言が目立つ博士、というのも微妙な違和感を齎す。
 とは言え、先の予測が出来ないストーリーは魅力的だし、近年のホラー映画のような明確さのない決着は、不気味な余韻を残して秀逸である。カメラを揺らしながら扉をじっくりと映したり、モノラルのために表現しづらい音の移動をカメラワークで代用したりという、鋭さの光る演出も見所になっている。
 まさしくホラーの古典的名作、だがそれだけに、元々ホラーものが好きであるとか、映画の演出技法に興味があるという方でないと、今となってはやや入りこみにくい作品かも知れない。

(2003/08/09)


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