cinema / 『アイ・スパイ』

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アイ・スパイ
原題:“I SPY” / 監督:ベティ・トーマス / 原案・脚本:マリアンヌ&コーマック・ウィバーリー / 脚本:ジェイ・シェリック&デヴィッド・ロン / 製作:ジェンノ・トッピング、ベティ・トーマス、マリオ・カサール、アンディ・ヴァイナ / 製作総指揮:ウォーレン・カー、マーク・トベロフ、デヴィッド・R・ギンズバーグ / 撮影:オリバー・ウッド / 美術:マルシア・ハインズ=ジョンソン / 編集:ピーター・テシュナー / 特殊視覚効果:ソニー・ピクチャーズ・イメージワークス / 衣装デザイン:ルース・カーター / 音楽:リチャード・ギブス / 出演:エディ・マーフィ、オーウェン・ウィルソン、ファムケ・ヤンセン、マルコム・マクダウェル、ゲアリー・コール、フィル・ルイス / 配給:Sony Pictures
2002年アメリカ作品 / 上映時間:1時間36分 / 字幕:菊地浩司
2003年04月26日日本公開
公式サイト : http://www.ispy.jp/
日比谷みゆき座にて初見(2003/05/05)

[粗筋]
 米軍が極秘開発した最新型ステルス機能搭載の戦闘機“スイッチブレイド”が盗まれた。最近スペシャル・エージェントに昇格したばかりの若きスパイ、アレックス・スコット(オーウェン・ウィルソン)はウズベキスタンの捕虜収容所にいた犯人を一旦は確保し、武器商人のガンダーズ(マルコム・マクダウェル)に売り払ったという情報までは聞きだしたものの、脱出のどさくさに犯人を死なせてしまう。
 ちょうどその頃、ボクシング界ではミドル級の王者ケリー・ロビンソン(エディ・マーフィ)が連勝記録を57に延ばし、キャリアの絶頂にあった。そんな彼のもとに、大統領直々に連絡が入った。極秘の任務に手を貸して欲しい、という話に、ヒーロー願望の強いケリーは易々と乗る。
 ボクシングの愛好家でもあるガンダーズは、自らの拠点であるハンガリー・ブダペストで開催されるケリーの防衛戦に合わせて、盛大な前夜祭を計画していた。その中枢に確実に侵入できる人材として、アメリカ国家保安局はケリーを選んだのだ。
 そうでなくても保安局きってのスペシャル・エージェント=カルロス(ゲアリー・コール)に支給される機材との格差に劣等感を覚えていたアレックスは、その喋りを鬱陶しがっていたケリーと組まされる羽目になって不愉快になる。任務の遂行に先駆けてミーティングを行うが、極秘の任務という認識が乏しくボクシング王者としての自尊心をやたらひけらかし、八時から始まるパーティに十一時まで行かないなどと駄々を捏ねる彼に、いよいよ不快感を募らせるのだった。
 最先端のスパイ道具でケリーの興味を惹き、ついでに強烈な脅しをかけ、現地でアレックスの同僚、かつアレックスが秘かに恋い焦がれている女性エージェント・レイチェル(ファムケ・ヤンセン)と合流すると徹底した褒め殺しでようやくケリーのやる気を引き出して、ふたりは勇躍パーティ会場へと向かう。ケリーが衆目を惹き付けているあいだにガンダーズの執務室に侵入し内偵を進めるアレックスだったが、気紛れで執務室に入ってきたケリーのせいで敵に察知され、ふたりは慌てて逃走する。
 二流のエージェントと口八丁手八丁のボクシング王者、このろくでもないコンビは果たして無事に任務を遂行することが出来るのだろうか……?

[感想]
 007もどきのゆる〜いスパイ・コメディである。各種スパイ道具の雰囲気も活動の主旨も007をあからさまに意識しているが、何せ主人公がボクシングと口先がすべてのええかっこしいに、才能はあるけれど何処か間の抜けた二流スパイという組み合わせのため、何処まで行っても正気を疑うような話運び。危機また危機でスリリングな展開のはずなのだが、敵が後背に迫るカーチェイスの途上でも延々冗談じみたやり取りが繰り返され、妙に緊迫感に欠いている。
 スパイ・アクションとして見るとそれだけでかなりハズレの感触を受けるだろうが、なに、そもそも本編の主演がマシンガントークの元祖エディ・マーフィに、自ら脚本や製作も手掛けコメディもシリアスもこなす才人オーウェン・ウィルソンだということを思えば、はなからそういう期待を抱く方が間違っている。緊張感には乏しいがどっちに転ぶか解らないストーリーと、その間延々と繰り返される二人の口喧嘩と言おうかボケツッコミと言おうか、を楽しむべき作品である。
 気を入れる必要などないし、あとあとまで賞味しようなどと思わない方がいい。1時間半ちょっと気軽に楽しんで、あとはすっきり忘れてしまって構わない、そういうタイプの娯楽映画であろう。一分の隙もない傑作や感動大作では肩が凝って仕方がない、という向きにお薦めします。
 ……但し、ギャグの方向性やセンスは明らかに日本人向きではないので、その点は覚悟しておいた方が身のためです。合わないととことん笑えません。私自身、途中ちょっとばかし飽きました。

 図らずも劇場での映画鑑賞で二作続けてファムケ・ヤンセンにお逢いしてしまった。異様に抱えているものの重かった『X−MEN2』に対して、こちらは作品の主旨に合わせてまあ軽いこと軽いこと。彼女が登場するなりエディ・マーフィ演じるケリーに色気を振りまいているのを見て、一瞬眩暈がしました。
 プログラムによると『MIBII』を蹴ってこちらの出演を承諾した、とのことだが……それ程の価値があったのかは定かではない。てかどっちでも一緒だろ。

(2003/05/05)


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