cinema / 『呪怨2』

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呪怨2
監督・脚本:清水 崇 / プロデューサー:一瀬隆重 / 製作:熊沢芳紀、川上國雄、沼田宏樹、江川信也、松下晴彦 / 撮影:喜久村徳章 / 音楽:佐藤史朗 / 音楽プロデューサー:慶田次徳 / サウンド・エフェクト:柴崎憲治 / 編集:高橋信之 / 視覚効果:松本 肇 / ライン・プロデューサー:金子哲男 / 主題歌:「間違い」推定少女(Epic Records) / 出演:酒井法子、新山千春、堀江 慶、市川由衣、葛山信吾、斎藤 歩、尾関優哉、藤 貴子 / 製作プロダクション:オズ / 配給:ザナドゥー+東京テアトル / 宣伝協力:アルバトロス・フィルム / DVD版発売元:GENEON ENTERTAINMENT
2003年日本作品 / 上映時間:1時間32分
2003年08月23日公開
2004年02月25日DVD版発売 [amazon]
公式サイト : http://www.juon2.jp/
池袋シネマサンシャインにて初見(2003/08/30)

[粗筋]
 ――ホラー映画の出演作が多いため、近頃ホラー・クイーンのふたつ名で呼ばれることの多くなった原瀬京子(酒井法子)は婚約者である石倉将志(斎藤 歩)とともに交通事故に遭った。将志は昏睡状態に陥る重体、京子は比較的軽傷で済んだが、将志との子供を孕んでいた腹部に出血し、絶望する。しかし後日、かかりつけの産婦人科の診察を受けると、胎児は順調に育っているとのことだった……
 ――テレビ番組のレポーターを務める三浦朋香(新山千春)は最近、妙な物音に悩まされていた。十二時三十分が近づくと、壁の同じ場所を叩く音が聞こえてくるのだ。角部屋のため、その向こう側には何もないはずなのに。恋人の典孝ともども首を傾げるが、原因は判然としない。ホラー・クイーン原瀬京子をゲストに招いた撮影が終わったある日、自宅に戻った朋香は恐ろしいものを目の当たりにする……
 ――テレビ局でメイクアップの仕事をしている大林恵(山本恵美)は他人と較べて霊感が強い。大国圭介(葛山信吾)がディレクターを務める番組の撮影のため、かつて陰惨な殺人事件が発生し、以来人が住みついても長持ちしないという曰く付きの家を、クルーの一人として訪れるが、楽屋代わりに使っている一室に奇妙な染みがあったり、録音技師が奇妙な音を確認したりと不穏な出来事が続く。局に戻りメイク室で後片付けをしていた恵は、妙に落ち着かなかった……

[感想]
 ……なんか変だ。
 前作の高い評価を受けて宣伝も増え、公開館も飛躍的に増加しており、贅沢さを増した役者陣と相俟って話題作と呼んで差し支えない規模に拡大している。が、内容的にはかなりインフレを起こしていて、初心者ならともかく旧作から通して鑑賞している愛好家やホラーマニアにはあまり驚きがない――というより、ところどころ失笑を禁じ得ない場面がある。
 もともと、未知の恐怖を煽る類のホラーは、シリーズとして作を重ねるほど困難を増す厄介な性質がある。この『呪怨』シリーズはビデオ版の時から怪談・ホラー映画への深い造詣と配慮を伺わせる丹念な作りが魅力だったが、それも通算第四作となるとさすがに手詰まりになったというところだろうか。全般に描写が大袈裟すぎて、あまり衝撃を感じなかった。こと、あるものから怨霊となった人物が現れる場面など、文字や漠然としたイメージで伝えられるならともかく、ああして直接映像で見せられるとかなり滑稽な印象を受ける。
 また、従来の作品で種明かしとしての伽椰子の怨念のもとがかなり詳述されてしまったため、本編ではほとんど触れられいない。それ自体はいいと思うのだが、そのせいで怪奇現象のひとつひとつと伽椰子・俊雄母子とを関連づけないといけなくなり、やや無理矢理にふたりが引っ張り出されていると感じる場面が多いのも問題だ。こと終盤の幾つかの場面など、ないほうが余韻は深まったように思えてならない。
 しかし、描写ひとつひとつはよく研究されていて、怪談を愛好している者ほど楽しめることは間違いない(怖いかどうかは別として)。また何より、シリーズ旧作から通して行われている、時間軸を前後して描き、次第にことの核心が見えてくるように工夫された独特の構成はいよいよ巧みさを増していて、ことリポーター朋香のパートと女子高生千春(市川由衣)のパートは秀逸の一言に尽きる。
 続けようと思えばいくらでも続けられるシリーズなので、清水監督自らが手掛けるハリウッド・リメイクのあと、引き続き映画版第三作が製作される可能性もあるだろうし、あるなら楽しみにしたいところだが……同時に色々と不安を掻き立てられる一本でもあった。ホラーとして悪い仕上がりではないのだが、旧作を繰り返し鑑賞している私のような人間が期待するものとはちょっとずれてきているような。

 全般に脱線気味の本編だが、更に輪をかけて脱線しているのがプログラム、である。「超豪華特典付き限定パンフレット」などと銘打って、俊雄くん福笑いに伽椰子と俊雄くんのリバーシブルお面、更に飛び出す絵本風の伽椰子のピンナップとふざけた記事ばかりが並び、まともに作品に触れているのは四ページだけ。
 個人的にこういう遊びは嫌いではないし、本編は脱線するしないに拘わらず遊ばせる要素をたくさん含んでいる。が、作品紹介や直接に関わる記事をほとんど載せず、遊びばかりで作るのはどうかと思う。比率にして3:2か、せめて同率になるように調整しなければ、作品の余韻を必要以上に破壊するだけだ。
 このプログラムを作ったスタッフは反省して公開劇場の前で半日ずつ正座して廻ってください。限定パンフレットなんて銘打つぐらいならもっとまともなものを作れ。

(2003/09/02・2004/02/24追記)


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