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『light as a feather』トップページに戻る火山高
英語題:“Valcano High” / 監督:キム・チギュン / 脚本:ソ・ドンホン、チョン・アンチョル、キム・テギュン、パク・ホンス、ホ・キュン / 製作:チャ・スンジェ / プロデューサー:キム・ジェウォン / 撮影:チェ・ヨンテク / 照明:チョン・ヨンミン / 美術監督:チャン・グニョン、キム・キョンヒ / CG:チャン・ソンホ / 特殊効果:チョン・ドアン / アクション監督:イ・ウンジュン / 音楽監督:DAITA / ミキサー:チェ・テヨン / 出演:チャン・ヒョク、シン・ミナ、キム・スロ、クォン・サンウ、コン・ヒョジン、チョン・サンフン、キム・ヒョンジン、ユン・ムンシク、ピョン・ヒボン、ホ・ジュノ / 日本語吹替:関 智一、林原めぐみ、森川智之、子安武人、宮村優子、山口勝平、檜山修之、磯部 勉、古田新太 / 配給:Amuse Pictures
2001年韓国作品 / 上映時間:1時間48分 / 日本語字幕・吹替翻訳:根本理恵
2002年12月14日日本公開
2003年05月24日DVD日本発売 [amazon]
公式サイト : http://www.kazanko.com/
新宿シネマミラノにて初見(2003/01/13)※日本語吹替版[粗筋] (役者/日本語版吹き替え)
強すぎる、ただそれだけで生徒からも教師からも目の仇にされ、八度もの退学を経験した挙句、キム・キョンス(チャン・ヒョク/関 智一)が門を叩いたのは、怪しげな暗雲漂う火山高であった。登校早々に、三階の窓から転落してきたカタツムリ(チョン・サンフン/山口勝平)を目撃するわ、職員室と間違って入った部室棟で武功を操る学園のナンバーワン=ソン・ハンニム(クォン・サンウ/子安武人)に攻撃をしかけられるわ、と不穏な雲行き。キョンスは知る由もない、この火山高では17年に亘る「教師の乱」を契機に教師の権威は失墜し、それさえあれば学園に覇を唱えることが出来るという「師備忘録」を巡って生徒・教師入り乱れての覇権争いが繰り広げられているのだった……。
無情組の頭目として学校の支配を目論むチャン・リャン(キム・スロ/森川智之)は秘かに教頭(ピョン・ヒボン/池田 勝)と結託し、最大のライバルであるハンニムを罠にかけようとしていた。部下のカタツムリを使って、ハンニムがときどき校長(ユン・ムンシク/石森達幸)に提供しているお茶の葉を毒入りのものにすり替える。作戦は奏功し、校長は毒に冒された状態で「気」を使ったために奇妙なショック状態に陥り、身動きが出来なくなってしまう。この機に乗じて教頭は校長の草屋を自らの支配下に置き、何処かに隠されているはずの「師備忘録」を探し回る。
一方、証言からハンニムが少年院に送られると、校内はにわかにチャン・リャンの天下となった。乱暴者で単純バカしかも本名はマルチャンととっても可愛らしいチャン・リャンだが、ハンニム不在の今彼に敵うものは学内にいなかった――ただひとり、キョンスを除いて。ハンニムを他にすれば、いち早くその実力を見抜いたのは学内一の美女であり、「氷の宝石」と渾名される剣道部主将ユ・チェイ(シン・ミナ/林原めぐみ)だけだった。学内の治安回復を望むチェイは頻りにキョンスに協力を請う。転校初日に彼女と逢って以来けっこう気があるキョンスだが、両親にもう二度と争いごとに関わらず、無事卒業証書を手にすると誓ったキョンスは繰り返しその求めを拒む。同じくチェイに想いを寄せるチャン・リャンと直接対決の機会を得ても、チェイの親友で剣道部副主将ソ・ヨソン(コン・ヒョジン/宮村優子)に無理矢理入部させられそうになっても首を縦に振らず、チェイに愛想を尽かされても――キョンスは意地を張り通す。
だが、チャン・リャンの跳梁と裏腹に、いつまで経っても「師備忘録」が発見できないことに苛立った教頭は、遂に強硬手段に出る。学内の風紀が乱れていることを理由に、各地で暴力と恐怖による管理を行ってきた学園鎮圧教師五人集を招聘したのだ――[感想]
週刊少年ジャンプ連載十週であえなく連載打ち切りでも大丈夫はじめからそれを前提に書いてたから伏線張っても回収してもいません、みたいな。
冒頭でいきなり、予告編に使用していた「チョークを気で受け止めて弾き返す」というとんでもねービジュアルを提示し、以後全編人間離れしたというよりどう考えても人間じゃない荒技が飛び交う。金属的で暗い独特の美術をベースに展開する格闘シーンは、そこだけをひとつひとつ切り抜いても映像として堪能できるに違いない。
が、しかし。
完璧にアクションを魅せるためだけに特化したようなシナリオは整合性に欠き、いつまで経っても脈絡が掴めない。伏線らしい伏線はほとんど張られていないし、物語が進む上で大切なある要素にも、早いうちに見抜けるような単純極まりない絡繰りが隠されているだけで、物語を盛り上げるための牽引力とはなっていない。何より、登場人物たちの行動理念に全然筋が通っていないので、真面目に観てしまうとことの成りゆきが却って理解不能になる。君たちは学校を支配したいのか平和にしたいのか余計パニックに陥れたいのかいったいどうなんだ、と二時間ぐらい問い詰めたくなる。上映時間より長い。
とは言え、格闘シーンに限らず映像演出は全体にセンスを感じさせ、見応えがある。シナリオとの噛み合わせはさておきキャラクターもきっちり立っているので、妙に現実離れした言動だけを割り切って楽しむのもいいだろう。また、こうしたキャラクターの非現実性を際立たせる仕掛けとして、舞台がものの見事に学校内部に限定されていて生活の匂いがほとんどしないことも評価できる。てかみんな必要以上に学校のことしか考えてない。
本編を評してよく「間抜け」という言葉を耳にするが、それもシナリオの繋がりの中で見えてくるものではなく、土台に隠された「間抜け」である、と言えるだろう。冒頭の喩えを聞いて興味を抱くような向きでないと、無心に楽しむのは難しいかも知れない。そうでなければ割り切って映像と音楽と、キャラクターだけを楽しむように努力してください。
とりあえず、私は好きだ。特にカタツムリが。なんでカタツムリかわからないあたりが。なお、普段こーした海外映画を鑑賞する場合、極力音声はオリジナル、字幕による上映を選ぶようにしているのだが、今回下調べを誤って吹き替え版を鑑賞することになってしまった。……が、本編については正解だったような気がする。林原めぐみ氏に関智一氏、宮村優子氏などなどアニメーション中心に活躍する声優をメインにした吹き替え陣は、漫画以上に漫画チックな本編の作風によく噛み合って違和感がない。特にナレーションに古田新太氏を起用したのは慧眼だったと思う。ハキハキした中にも滑稽味のある喋りが見事に嵌っていた。
見ている間中、愛すべき悪役チャン・リャンの風貌が誰かに似ている、とずっと思っていたのだが、途中で解った。某シナリオライターさんだった……気づいてもほとんどの人には理解できない罠。
(2003/01/13・2003/05/23追記)