/ 『メン・イン・ブラック2』
『cinema』トップページに戻る
『light as a feather』トップページに戻るメン・イン・ブラック2
原題:“MEN IN BLACK II” / 原案:ロバート・ゴードン / 原作:ローウェル・カニンガム / 監督:バリー・ソネンフェルド / 製作総指揮:スティーヴン・スピルバーグ / 製作:ウォルター・F・パークス、ローリー・マクドナルド / 脚本:ロバート・ゴードン、バリー・ファナロ / 音楽:ダニー・エルフマン / 出演:トミー・リー・ジョーンズ、ウィル・スミス、リップ・トーン、ララ・フリン・ボイル、ロザリオ・ドーソン、ジョニー・ノックスヴィル / 配給:Sony Pictures
2002年アメリカ作品 / 上映時間:1時間28分 / 字幕:菊地浩司
2002年07月06日日本公開
2002年11月21日DVD日本版発売 [amazon|通常版:amazon]
2004年07月14日DVD最新版発売 [amazon]
公式サイト : http://www.mib2.jp/
劇場にて初見(2002/07/20)[粗筋]
――“虫”の到来による未曾有の(ただし人類の大半はまるで関知しなかった)危機から五年の時が過ぎた。極秘組織“MIB”の新米であったJ(ウィル・スミス)はいまやトップクラスのエージェントに成長していたが、かつての相棒が有能すぎた所為なのか、新しい人間と組まされてはいちいちニューラライザー(記憶除去装置)を用いて勝手に解雇してしまうため、別の意味で怖れられる存在ともなっていた。上司のZ(リップ・トーン)はその暴走と休暇も取ろうとしない勤務態度を窘めるが、まるで聞く耳を持たない。とりあえず、当面Jの新たなパートナーとして宛われたのは、エージェントF――宇宙外交の専門家でもある、パグ犬の外見を持った異星人であった。
ふたりの最初の仕事は、ピザ屋の主人をしていた宇宙人の殺害事件。物陰から一部始終を目撃していた店員のローラ(ロザリオ・ドーソン)の証言によれば、犯人は“ザルタの光”なるものを求めて地球を訪れたらしい。そして現場に程近い公園では、カイロシア星人のものである小型の宇宙船が発見される。
――一連の出来事の発端は25年前にあった。宇宙屈指の凶悪さを誇るカイロシア星人に襲撃されたザルタ星の女王は、打開の鍵を握る強大な力を秘めた“ザルタの光”をMIBに託そうとした。しかし、中立を保つことで平穏を護ってきた地球側として安易に請け負うことは出来ず、別の場所に隠すことで辛うじて事態を収束させた。だが当時、MIBの担当エージェントは“ザルタの光”を異星に送ると見せかけて、地球のとある場所に隠匿していたのだ。その場所は、担当エージェント以外に誰ひとり記憶していない――その担当エージェントこそ誰あろう、五年前にJを抜擢し育て上げたのちに記憶を消されて現役を退いた男、K(トミー・リー・ジョーンズ)であった。
JはFとともに、記憶を喪ったKが働く郵便局に赴き、交渉のすえ記憶を恢復させるためにMIB本部に連れ出す。だが、ディノラライザー(記憶回復装置)のある一室で治療を開始したそのとき、“ザルタの光”を狙うカイロシア星人が寄越した刺客・サーリーナ(ララ・フリン・ボイル)の襲撃によってMIB本部が占拠されてしまう。緊急脱出システムにより辛くも網から逃れ出たKとJは、半端なままのKの記憶を取り戻しながら、“ザルタの光”奪回の使命に着手する。タイムリミットまであと僅か、再び訪れた地球の危機をふたりは無事に回避できるのだろうか――?[感想]
お話短め、内容ざっくばらん、観たあとすっきり何も残らず。娯楽映画というもののひとつのお手本とも言うべき第一作のスタイルをきちんと踏襲した、これまたある意味理想的な第二作である。
前作ではJが宇宙人のそこかしこにいる状況にいまいち馴染みきれずに困惑している部分が楽しみどころとなっていたが、今回は前作ラストでMIB絡みの記憶を消されたKが戸惑う立場になっている――ただし、今回は登場人物は無論観客にも「そーいう世界なのだ」と受け入れる土壌が予め出来ているせいで、この辺のギャグや驚きはいまいち効果を上げていない。代わりのように、前作をきっちりと見た者なら思わず吹き出してしまうお遊び(女性検屍官のその後とか、Kの記憶がないのをいいことにJが反対のことを吹きこんでみたり)をピンポイントで差し挟んでいるあたりが寧ろ巧妙でいい。故に、単品でも随所に贅沢な遊びがあり楽しめる本編だが、前作を見てからのほうが遥かに面白いだろう、と付け加えねばならないが。
劇場で帰り際、「前作に較べるとメリハリがない」という感想を漏らしていた一団と擦れ違ったが、確かに一理はある。ドタバタが絶えないために、却って全体が平板になってしまった印象が強いのだ。が、それが2時間も3時間もだらだらと続けばどうかと思うが、弁えたことに本編は1時間半足らずという短い尺。そのために、展開にすっかり飽きるということはない。尤も、その短すぎる尺のために、結局“ザルタの光”はいったいどーいう代物なのか、何故時間内に地球外へ運ばねばならなかったのか、どーしてそんな執拗に狙われていたのか、などなど疑問が残ったりもするのだが、少なくとも観ている間はそんな深いことまで気にする必要はないし、しなくても多分楽しめるだろう。
単純明快な娯楽作品というだけで評価に値すると思うが、個人的にはラストにおける、中盤のガジェットを活かしたふたつの大ネタだけでも観る価値はある、と断言したい。エンディング直前のアレは前作の毒を踏まえただけだが、もう一方はまさにアメリカならではの壮大なギャグである。
予備知識が乏しくても楽しめるだろうが、やはり前作を観た上で隅々まで堪能していただきたい。ハリウッドだからこそ出来る贅沢極まりない娯楽大作。
前作とくらべて、異星人の数も格段に増えたが同時に名前つきで呼ばれるMIBエージェントの数もかなり増えている――登場場面は多くないが。その中でも笑えるのは、やはりエージェントMであろう。劇場で観たときは目を疑ったが本当にあの人が、しかも自ら志願して出演したらしい――異星人という設定で。素晴らしすぎる。(2002/07/23・2004/06/23追記)