/ 『模倣犯』
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『light as a feather』トップページに戻る模倣犯
原作:宮部みゆき / 監督・脚本:森田芳光 / 製作:島谷能成、亀井 修、安永義郎、棚次 隆 / 音楽:大島ミチル / テーマ曲:タカハシタク(m-flo) / 出演:中居正広、藤井 隆、津田寛治、木村佳乃、山崎 努 / 配給:東宝
2002年日本作品 / 上映時間:(だいたい)2時間5分
2002年06月08日日本公開
2002年12月21日DVD発売 [amazon]
公式サイト : http://mohouhan.yahoo.co.jp/
日劇PLEX2にて初見(2002/06/22)[粗筋]
――2月の汗ばむような陽気の日、有馬義男(山崎 努)の孫娘・古川鞠子(伊東美咲)が行方を眩ました。
それから十ヶ月、事態は突然動き始めた。東京・大川公園の花壇で、犬を散歩させていた高校生塚田真一(田口淳之介)が、保冷シートにつつまれた女性の右腕を発見する。腕そのものは鞠子のものではなかったが、一緒に放置されていたセカンドバッグは鞠子のものと特定された。
その頃から、各所にPCで声質を変換させた怪電話がかかるようになる。テレビのワイドショーに犯人しか知り得ない情報を提供し、有馬の経営する豆腐店に電話をかけ、有馬を翻弄した。有馬を居慣れないホテルで引きずり回した挙句に、留守の彼の家に鞠子の腕時計を土産として置いていった。そして、マスコミに絵と写真のヒントを提供し、該当する場所に紙袋入りの人骨を隠した――
一方、右腕の発見者である塚田真一は、過去に体験した悲劇の縁から、ルポライター前畑滋子(木村佳乃)の家に身を寄せていた。頼るところのなかった真一が、滋子とその夫で畳職人の昭二(寺脇康文)の優しい人柄に触れて次第に平穏を取り戻しつつあった。
犯人は更なるイベントを世間に仕掛ける。アリバイが成立したことで捜査対象から外れていた男を、ワイドショーの席上で顔を晒すようにし向け、更にストリーミング放送で殺人現場を生中継する、と言い出した。しかしそれとほぼ同時刻、とある山中の道で車が崖から転落、炎上する事故が発生し、トランクから男性の他殺体が発見され、運転席にいた栗原浩美(津田寛治)と高井和明(藤井 隆)は共に一連の事件の真犯人と目されるようになり――事件は幕を降ろした、かに見えた。
間もなくマスコミに、浩美と和明の友人で経営コンサルタントを標榜する男・網川浩一(中居正広)が登場し、和明の無実を謳いはじめた。浩美の犯行は疑いようがない、が彼には和明ではなく他の共犯者が存在したのだ、と。浩美の後ろにいて、この前代未聞の犯罪を計画した共犯者が――[感想]
鑑賞する前に原作を読み終えておこう、と思っていたのだが、多忙に加えてあの大部が災いし、第一部まで目を通すのがやっとだった。――が、それが却って幸いした気がする。けっこうシンプルに楽しんでしまった。
問題点は多い。第一部までしか読んでいなくても、相当に話を端折っているのが解る。宮部作品のポイントである少年のエピソード――本編では塚田真一の過去の事件――がさわり程度しか語られず、またそれでも少なくない部品を2時間程度に詰め込んだために出来事を詳細に綴れず、結果として一番際立った場面のパッチワーク――早い話が総集編のように積み重ねていくしかなく、脈絡を掴みかねる場面が、こと前半に多い。
しかし、その割り切った駆け足のテンポが作品に独特のムードを与えているのも事実で、原作への忠実さに拘らなければ、かなり面白い。
とは言えあのラスト、二つの展開は賛否が分かれるところだろう。あまりに気になったので帰宅後原作のラストを確認してしまったが、いずれも映画で独自に取り入れた要素のようで、その双方が兎に角過剰なのである。最初の方は物理的な面で問題を感じるし、後者は前の方で伏線らしき台詞が挿入されていたのだが、私の理解したとおりだと動機や登場人物の関係性に大きな問題が生じることになる。また、どちらの問題にしても一体いつ、どの段階から準備をしていたのかという疑問があり、ミステリとして捉えた場合、ラストの対決場面を含めて落ち着きの悪さを感じる。
が、いずれのアイディアも人間の善と悪とを対比させる、というテーマからは逸脱していない。問題こそ感じるが、あの大部を圧縮し映像化する上では有効な一手だろう。手放しでは賞賛できないが、役者たちの思いのほか堅実な演技まで含めて、多様な楽しみ方の出来る佳作。(2002/06/22・2004/06/22追記)