/ 『ローラーボール』
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『light as a feather』トップページに戻るローラーボール
原作:ウィリアム・ハリスン / 監督:ジョン・マクティアナン / 脚本:ラリー・ファーガソン、ジョン・ボーグ / 製作:チャールズ・ローベン、ボー・セント・クレア、ジョン・マクティアナン / 音楽:エリック・セラ / 出演:クリス・クライン、ジャン・レノ、LLクールJ、レベッカ・ローミン=ステイモス / 配給:東宝東和
2002年アメリカ作品 / 上映時間:1時間37分 / 字幕:菊地浩司
2002年05月11日日本公開
2002年10月02日DVD日本版発売 [amazon|限定版:amazon]
2004年04月23日DVD最新版発売 [amazon]
公式サイト : http://rollerball.eigafan.com/
劇場にて初見(2002/05/18)[粗筋]
ジョナサン・クロス(クリス・クライン)は純粋だが冒険に飢えた若者だった。ホッケーリーグでドラフト一位指名を受けるほどの実力を備えながら、どの契約にも頷かず公道で行われるリュージュの違法試合に参加するという無鉄砲ぶり。そんな彼を、旧友マーカス・リドリー(LLクールJ)は自らが参加する全く新しい競技に誘う。乗り気でなかったジョナサンだが、リュージュでの違法行為から自宅周辺を警察に包囲されている事実を知ると、やむなくその話に乗るのだった。
四ヶ月後、ジョナサンはアジア某国にいた――賭け競技『ローラーボール』の花形新人選手として。『ローラーボール』は総延長180mの、8の字に描かれたリンクを舞台に、インラインスケート、或いはバイクを駆った10人対10人で繰り広げられる、危険度の高いスポーツだった。リンクの中央から射出される鉄球をパスしながらリンクを数周し、中央反対側にあるゴールに叩き付ければ得点となる。団体戦でありながら個人の能力が主に問われ、事故によっては死者も出かねない競技だったが、リドリーを含む“赤い騎士団”のメンバーとなったジョナサンは、天性の運動能力を遺憾なく発揮し瞬く間にスターとなっていた。
しかしその日、ジョナサンは最初の悪夢を目の当たりにする。試合の中盤、“赤い騎士団”のメンバーの一人である巨漢のトッドが、競技中にヘッドプロテクターを取り落とし、その剥き出しになった頭部を試合相手“金の略奪団”の鉄球が襲ったのだ。辛うじて命は助かったものの、激昂したジョナサンは“金の略奪団”をリンク上でなぎ倒していく。
試合後のパーティー席上で、ジョナサンは更なる衝撃を受けた。メンバーの一人が回収したトッドのヘッドプロテクターには、ベルトの部分に鋭利な刃物で傷つけられた跡があったのだ。妨害行動だ、と怒りを新たにしたジョナサンは、『ローラーボール』の興行を取り仕切るペトロピッチ(ジャン・レノ)に訴える。
その話をあとになって聞かされた、ジョナサンのチームメイトであり、密かに関係を持っているオーロラ(レベッカ・ローミン=ステイモス)は、軽率な行動だ、と非難する。根拠は、その日のテレビ中継だった――リンクを取り巻いて五つ設置されたカメラのうち、事故発生当時四つまでがトッドを狙っていた。加えて、15秒前には録画の指示さえ出されていた――会場全体に浸透した手筈は、明らかにオーナー・ペトロピッチの関与を匂わせていた……[感想]
――突っ込みたいところ全てに突っ込んでいると膨大になるので、最大の問題点に絞って触れておく。
何がいけないって、『ローラーボール』という競技のルールと魅力が前提として全く描かれていないこと。これが全てのバランスを破壊している。
この競技がスクリーン上で開始され、最初に展開するのはジョナサンの、恐らくは華麗なゴールシーンである。ジョナサンはボールを手にするとあらゆる妨害を蹴散らして開始数秒で最初の点を得る――まずここからいけない。
『ローラーボール』の厳密なルールについて作中では殆ど解説がなされていないが、よくよく検討すれば醍醐味はある程度想像できる。リンクが8の字型になっており、ボールを奪ったチームはゴールする前に必ずリンクを数周することが強いられるから、相手チームはコースが交わる点を基本にして戦略的に妨害を加えることが出来る。双方共にインラインスケート・バイクと異常な速度を実現する乗物を利用しているから、この駆け引きが極めてスピーディにスリリングに行われ、当然大怪我の危険とは常に背中合わせだ。つまり、そうした競技としてのきつさ、魅力をまず前面に出すべき掴みの箇所で、いきなり主人公の派手だが曲折のない活躍を描いてしまったために、『ローラーボール』という競技が備えていなければならない「魔力」が観客に全く伝わらなくなってしまった。
そのあとも、『ローラーボール』のシステムから想像される戦略や駆け引きは全く描かれず、ただ「危ないぞ」「大怪我するぞ」「死ぬかも知れないぞ」という登場人物たちが持つイメージだけで筋を運んでしまったから、逆に観客は置いてけぼりになる。
とどめには、クライマックスでも「鉄球にインラインスケート、バイクという器具を利用した危険なスポーツ」という魅力的な素材を殆ど役立てず、肉弾戦と大雑把なアクションだけで片を付けてしまったこと。それ以前でも『ローラーボール』の魅力が殆ど表現できていなかったのに、最後までこれでは杜撰に過ぎる。
『ローラーボール』の描写以外でも突っ込むところは多いが、これらの点だけでも「根本的に失敗している」ことだけは理解いただけるだろう。ラップにヒップホップ、ロックに民族音楽など様々な要素を取り入れたBGMと音響は悪くない、細部に鏤められた民族色豊かな意匠や、ローラーボールの競技場にユニフォームなどのデザインは非常に凝っているし、ところどころのカメラワークにも熟練の業を感じさせる。部分を取り上げれば決して悪くない。それでも、これ程激しいアクション映画なのに、前半数十分で欠伸を催させる出来になってしまったのは――?
本編は26年前に製作された同名映画のリメイクとなっている。プログラムによれば、社会派的要素も取り入れてしまったためにテーマが空回りし、カルト的人気は得たが大方の評判は今一つだった、とある。では、娯楽に徹しようとした(……そうか……?)本編がオリジナルよりも高い支持を受けるか、と訊かれたら……実の処オリジナルは未鑑賞なので、本来答えるべきではないのだが、少なくともプログラムに記されている粗筋通りの作品ならば、多分本編よりは格段に成功していると思うのだが。どーなんだろうね。(2002/05/18・2004/06/22追記)