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ROOM 13
原題:“ROOM#13”
1999年フランス作品 / 上映時間:1時間15分
日本未公開
2002年06月19日DVD日本盤発売 [amazon]
パソコンテレビGyaOにて初見(2006/05/16)[概要]
同じ部屋の異なる時代、6分程度の尺という約束のもと、13組の監督が競作したオムニバス。1, 老女の晩餐
監督:アンナ・ヴィリエ、ファビエンヌ・ベルトー / 出演:エリザベル・ガザ、スタニスラ・メーラー
13号室に宿泊する車椅子の老婦人。彼女がここに来た目的は……?
シンプルな怪奇ものですが、老婦人が目的を果たす際の様式美がいい。わざわざそんなことせんでも。2, 非情のダイス
監督:パスカル・サンジュヴァン / 出演:フローレンス・ボルファー、セドリック・トゥー
ダイスを転がして数を競う簡単なゲーム。勝つごとにバットを組み立てていき、完成したあとは、相手の躰を破壊していく……。
特に感慨もない話。ちょっと女優の演技がわざとらしいのが問題か。3, バスルームの真相
監督:ディディエ・ドゥレトル / 出演:ジャン=マリー・ラムール、イザベル・ディネリ
清掃のために部屋に入ったメイドだが、バスルームで屍体を発見してしまい……
予測はつくが、厭な余韻は悪くない。ただ、こういう展開になることがあり得るのかどうか。4, 毒の応酬
監督:ミキャエル・スエテ / 出演:ジュヌヴィエーヴ・カジル、ステファン・メッツガー
男と老女が対峙し、ワインを酌み交わしながら腹を探りあう。
心理戦を描こうとしているのだが、演出が稚拙でわざとらしさばかりが記憶に残る。5, 花嫁の過ち
監督:ニコラ・クーシェ / 出演:エリース・ティールロワ、アラン・ブジーグ
目醒めてみれば見知らぬ男の部屋。明日に結婚を控えた女は激しく動揺する……
やや醜悪なコミカルさの果てに辿り着く結末の、後味の悪さが見事。目的が不明だが、5分程度の尺ゆえ無理に説明しないのが正しいだろう。6, 裏切りの引鉄
監督:フィリペ・モンボンテ / 出演:イングリット・ショーヴァン、クリストフ・ロービョン
共犯者の男女、だが女は男に向けて引き金を引いた――次の瞬間、男は数分前に舞い戻っていた……
内容的にはいちばん気に入った1話。悪夢としてこれに勝る出来事はない。当人にしか認識できないというのがミソである。7, 三度目の正直
監督:ラース・プラマーズ / 出演:パスカル・エルソ、ルシア・サンチェス
美しい女死神は、犠牲者となる男に対してゲームを申し出る。勝てば寿命を延ばし、負けたら自分が何かを提供する――
序盤に垣間見えるユーモアが結末の非情さを強調する――という趣なのだが、ゲームとその罰の必然性が不明瞭なのでややインパクトを欠いた印象がある。8, 呪いの初夜
監督:オリヴィエ・ダアン / 出演:クレア・ケイム、フレデリック・ディーフェンタール
新婚初夜に13号室を利用したカップル。だが、新郎は果てしない悪夢に苛まれる……
悪夢の連鎖という設定がこのオムニバスでは多いために、終盤で登場する特殊メイクの滑稽さが際立ってしまったのが勿体ない。ネタとしては悪くないと思うのだけど。9, 狂気のゲーマー
監督:フレデリック・フォレスティエ / 出演:ステファン・ギャトー、アレックス・シャルヴォズ
13号室に潜んだ爆弾魔と警官との心理戦。
だが結局、どういう決着だったのかがいまいち掴みにくい。眼鏡を壊されてしまったために警官が肝心なものを視認できない、という発想は巧いのですが、爆弾魔の狂気がちょっと有り体だったのが物足りない。10, 嫉みの贈物
監督:ミリアム・ドナシス / 出演:ジュリエット・ティエーレ、シルヴァン・ジャック
不倫に走る妻と若い愛人の逢瀬を襲う悲劇。
ちょっと展開が読みやすいぶん、決着に捻りが欲しかったところ。短いながら官能的な描写は悪くない。11, 偶像の願い
監督:エリック・バレット / 出演:ステファニー・ブラウンシュヴェイグ、ジェラルド・ラローシュ
13号室に潜んだ男の願いは、自分を殺すこと。さもなければお前を殺す、と言われた女の選択は……?
設定は面白いのですが、やや拡がりに欠きます。もうちょっと女の内的葛藤を描くか、結末にもうひとひねりが欲しかった。12, 13人目の犠牲者
監督:オリヴィエ・メガトン / 出演:マーゴ・アバスカ、マニュエル・ブラン
シートで覆われた部屋で目醒めた女、枕元のテレビは連続殺人犯のニュースを報じている。女がいるのは、犯行に使われるという13号室……。
ネタは見え透いていますが、限られたシチュエーションを駆使して演出される緊張感は秀逸。13, テントウムシの娼婦
監督:サラ・レヴィ / 出演:エドアール・モントゥート、ナタリー・ビアンエメ
浮気のたびに男の手で背中に“刻印”を捺される娼婦の話。
暴力に至る過程をじわじわと描き出す緊迫感に、会話でとどめを刺すくだりが巧み。ラストシーン、軽く躓いてみせるあたりまで含めて、無駄のない仕上がりである。[総評]
ホラー、というよりスリラー競作の趣であるが、それぞれに大して相談はなかったのだろうか、同じ部屋で起きる悪夢、という前提をあまり活かしていないのが勿体ない。出来としても凡庸なものが多く、いま一歩という印象だった。
個人的には6本目『裏切りの引鉄』と13本目『テントウムシの娼婦』が、無駄のない仕上がりという点で好感を持った。(2006/05/16)