cinema / 『少林サッカー』

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少林サッカー
原題:“少林足球” / 監督:チャウ・シンチー / 脚本:チャウ・シンチー、チャン・カンチョン / 製作:ヨン・クォッファイ / プロダクション・スーパーバイザー:ティン・カイマン / 音楽:レイモンド・ウォン / アクション指導:チン・シウトン / 出演:チャウ・シンチー、ラム・チーチョン、ウォン・ヤッフェイ、モク・メイラム、ティン・カイマン、チャン・クォックァン、ヴィッキー・チャオ、ン・マンタ、パトリック・ツェー / 配給:KLOCKWORX、GAGA-HUMAX
2001年香港作品 / 上映時間:1時間49分 / 字幕:風間綾平
2002年06月01日日本公開
2002年11月22日DVD日本版発売 [amazon|限定版:amazon]
2003年12月21日DVD最新版発売 [amazon]
公式サイト : http://www.shorin-soccer.com/
劇場にて初見(2002/06/05)

[粗筋]
 20年前、出来心から八百長に同意してしまったことが、ファン(ン・マンタ)の転落は始まった。フリーキックにわざと失敗し、憤った観衆によってファンの黄金の右足は叩き折られ、以来20年間、不自由な足を引きずりながら、かつての後輩であり今や名声を確立した指導者ハン(パトリック・ツェー)のもとで一介のコーチとして働くほかなかった――八百長事件がファンを陥れるためにハンが画策したものだ、と知るその日までは。その日は同時に、ファンが仕事をも喪う日でもあった――
 失意から酒に溺れ町を徘徊していたファンは、偶然からひとりの青年と出会う。清掃員をしているその青年シン(チャウ・シンチー)は、貧しい暮らしを余儀なくされながらも少林拳法の普及に熱意を燃やす、「鋼鉄の脚」の持ち主であった。意欲に反して生活は思うようにならず、かつての弟子兄弟たちもそれぞれ拳法から離れた暮らしを送っていることを惜しんでいた。ひょんなことからシンのキック力を目の当たりにし、そこにサッカーの才能を見出したファンは、自分と共にサッカーの世界に乗り出そう、と提案する。少林拳法普及の一助になる、と確信したシンは、兄弟子たちの説得に乗り出した――
 ここに、誰も見たことのない「究極のサッカー」が生まれる。

[感想]
 ……馬鹿だなあ。本当に馬鹿だなあ。
 全編ツッコミどころしかない映画である。起きていること、やっていること、全てが現実からずれている。そして、ツッコミまくることも観客の権利として、出来ればあんまり触れずにおいてあげたい。その徹底した隙こそが本編の売りであり、全てと言いきっていいだろう。理屈を唱える必要などなく、観ている間本気で理屈ばかり考えてしまうようなら根本的に向かない。ただただ、感じるままに楽しめばいい、それだけの映画だ。
 エピソードひとつひとつの繋がりが緩い(しかし、クライマックスでのある登場人物の扱いについて、実はかなーり最初から伏線が張ってあったことには感心した)、狙いすぎて逆に笑いようがなくなってしまったネタが大量に――そりゃもう溜息が出るほど大量に――ある、ルールが無視されすぎてどこからが勝ちでどこからが負けなのかもはや判然としない、などなどやりすぎたが故の欠点も幾らだって挙げられる。が、それさえ含めてどこまでも計算ずくと思わせ、一旦嵌ったら何回も繰り返し観たくなるような中毒性を閉じ込め得たのだ。
 どこか面白くてどこが変なのか、いつもならばあれこれ説明しているところだが、それがこうも蛇足と感じられる作品もちょっと珍しい。それでも相性は否定できない、と考えつつも「必見」と呟いてしまう。

 今回、これでも感想を書きすぎたと思っている。簡潔に言い直そう。
 ……堪能しました。興奮がなかなか冷めません。傑作。ほんとは観た人とてってーてきに語りあいたいぐらいなのだが、未見の方もここを御覧になる可能性を配慮して一切口を噤みます。……ああ喋りてえ。

(2002/06/05・2004/06/22追記)


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