cinema / 『ターミネーター3』

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ターミネーター3
原題:“TERMINATOR3 RISE OF THE MACHINES” / 監督:ジョナサン・モストウ / 脚本:ジョン・ブランカート、マイケル・フェリス / 原案:ジョン・ブランカート、マイケル・フェリス、テディ・サラフィアン / 製作:マリオ・F・カサール、アンドリュー・G・バイナ、ジョエル・B・マイケルズ、ハル・リーバーマン、コリン・ウィルソン / 製作総指揮:モリッツ・ボーマン、ガイ・イースト、ナイジェル・シンクレア、ゲイル・アン・ハード / 撮影監督:ドン・バージェス、A.S.C. / プロダクション・デザイナー:ジェフ・マン / 衣裳デザイン:エイプリル・フェリー / 編集:ニール・トラビス、A.C.E.、ニコラス・デ・トス / 音楽:マルコ・ベルトラミ / ターミネーター・メイクアップ&アニマトロニクス効果:スタン・ウィンストン / VFX:インダストリアル・ライト&マジック / デジタル・アニメーション監修:ダン・テイラー / VFX監修:パブロ・ヘルマン / SFXコーディネーター:アレン・ホール / 出演:アーノルド・シュワルツェネッガー、ニック・スタール、クレア・デーンズ、クリスタナ・ローケン、デヴィッド・アンドリュース、マーク・ファミグリエッティ、アール・ボーエン / 配給:東宝東和
2003年アメリカ作品 / 上映時間:1時間50分 / 字幕:菊地浩司
2003年07月12日日本公開
公式サイト : http://www.t3-jp.com/
日劇PLEX1にて初見(2003/07/12)

[粗筋]
 最初は彼の誕生以前。二度目は彼がシニア・ハイスクールに在籍していた頃。1997年の「審判の日」を控えた人知れぬ攻防に勝利したジョン・コナー(ニック・スタール)は、母の死後旅に出、決まった住所も持たず浪々の暮らしを送っていた。
 事件は彼がバイクで転倒し、傷を治療するために動物病院に侵入したその日に発生した。忍び込んで意識朦朧となっていたところを、急患の連絡があって深夜に出勤してきたケイト・ブリュースター(クレア・デーンズ)に見つかってしまった。ケイトがジョンを動物用の檻に閉じ込めたとき、動物病院のなかで激しい銃声が響き渡る。
 襲撃したのは異様な腕力を備えた女(クリスタナ・ローケン)。彼女は病院にジョンがいると知って、ケイトに居場所を質す。だがそこへ、一台の車が突入してきて、女を病院の壁に叩き付けた。車から降りてきた男(アーノルド・シュワルツェネッガー)もまたジョンの居所を訊ねてきた。混乱しながら口を割ったケイトを病院のワゴン車に閉じ込めると、男はジョンの元に向かう。
 男を見たときのジョンの衝撃は計り知れない。何故ならその男は、最初はジョンの誕生以前に彼の存在を抹消するため母を襲撃し、二度目は未来のジョン自身が過去の自分を守るためにデータを改竄し時間を超えて送り込んだターミネーターと同じ姿形をしていたからだ。男はジョンを守るために来たと言い、ワゴンで先に逃げるように命令する。
 女の執拗な追撃を辛くも免れたあと、合流した男が口にしたのは恐るべき現実だった。「審判の日」は回避されたわけではなく先送りになっただけであり、女はジョン・コナーをはじめとする抵抗軍の幹部たちをそれ以前に抹殺するために送り込まれた、最新型のターミネーター=T-Xだというのだ。そして、T-Xはケイトも標的に定めているという――ジョンの未来の妻である、という理由から。

[感想]
 久々に、力任せのアクションというものを観た気がする。SF的設定を活用し、有り得ないパワーを備えた者同士の非常識な闘いっぶりが冒頭20分も経たないあたりから始まり、終盤までほぼノンストップで繰り広げられる。その描写は前作二本のスタイルを巧く踏襲しており、そういう点で不満は感じない。
 が、ドラマとしても秀逸な要素を多く備えていた『2』と比較すると、色々と見劣りがしてしまうのは否めない。特にシナリオ、どーも考証があちこち緩く感じられる。記憶しているだけでも、T-850が心理学のノウハウがあると言っておきながらその舌の根も乾かないうちに「男女間のことは解らない」と言い出したり、既に戦争回避を信じていたサラ・コナーが何故か武器を隠すよう指示していた、という設定があったり、何より敢えてこの日に刺客を送り込んだ理由が不透明だ、などなど微妙な点が多いのだ。
 また、キャラクターがあまり立っていないのも気に掛かるところ。旧作の設定を引き継いで構築することが出来たT-850とジョン・コナーはそれなりなのだが(だがそれ故に後者は駄目っぷりが際立ってしまったけど)、もっと重要視されるべき女性ふたりがどうも弱い。とりわけ、折角の女性型ターミネーターであるというT-Xの設定が物語の中でほぼ死んでいるのが拙い。冒頭、警官の注意を逸らすために予め胸のサイズを大きくするという小細工をしているのが唯一で、あとは形状にまったく必然性がない。ヴィジュアル的な衝撃を狙うのなら子供の姿でも――と思うのは流石に我ながらひねくれた考え方だとは思う、が、この形ではあくまで「旧作で描かれていなかったこと」を狙っただけであり、それ以上の結果が残せていないのだ。
 元々、SFアクションとして定評を得ていた前二作を超えるのは困難だったろう。あれから10年近く経過し、またスタッフも大幅に入れ替わってしまった以上、設定を敷衍しながら新しいものを構築するのは不可能に近い。ゆえに、旧作で構築された世界観を重視しつつ新しいものを盛り込んでいくという意味では、堅実な作りをしていることは評価するべきだろう。少なくとも、やるべきことはほとんどやっている。
 そういう意味で最も評価されるべきは、ラストシーンである。従来のシリーズで残された幾つかの疑問に、それまでの出来事を踏まえたうえで解答を用意しており、全編通して初めて頷かされた場面だった。
 あえてあの名作の続編を志し、従来の設定とモチーフを敷衍しながら新しいものを作ろうとした努力は素晴らしいし、その意味では敢闘賞に値する作品である。が、それ故にトータルで旧作を超えられなかったのも致し方のないところか。
 そうしたことを納得のうえでちょっと寛容な姿勢を選ぶか、或いは重量級のアクションのみに期待して鑑賞すれば充分に楽しめる。前作と較べての、或いはSFとしての粗は、突っ込むことを前提にして御覧ください。いや、それだけ覚悟があれば、結構面白いと思いますよほんまに。
 ……流石に、これで『T4』なんて言われたらちょっと卓袱台ひっくり返したくなりますが。

(2003/07/12)


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