cinema / 『トリプルX』

『cinema』トップページに戻る
『light as a feather』トップページに戻る


トリプルX
製作総指揮:アーネ・L・シュミット、トッド・ガーナー、ヴィン・ディーゼル、ジョージ・ザック / 製作:ニール・H・モリッツ / 監督:ロブ・コーエン / 撮影:ディーン・セムラーAM,ACS,ASC / 編集:クリス・レベンソン、ポール・ルベール、A.C.E. / 脚本:リッチ・ウィルクス / プロダクション・デザイナー:ギャビン・ボクエット / 音楽監修:キャシー・ネルソン / 音楽:ランディ・エデルマン / 衣裳:サーシャ・ミルコヴィック・ヘイズ / 特殊視覚効果:ジョエル・ハイネック / 出演:ヴィン・ディーゼル、アーシア・アルジェント、マートン・チョーカシュ、サミュエル・L・ジャクソン、マイケル・ルーフ / 提供:Revolution Studio / 配給:東宝東和
2002年アメリカ作品 / 上映時間:2時間4分 / 字幕:菊地浩司
2002年10月26日公開
公式サイト : http://www.xxx-triplex.com/
劇場にて初見(2002/11/09)

[粗筋]
 チェコ、古色蒼然たる建築物に囲まれた街プラハ。NSA(国家安全保障局)はとあるテログループの内偵のために苦戦を強いられていた。ナイトクラブを拠点とし、元ロシア軍人のリーダー・ヨーギ(マートン・チョーカシュ)の許に結集した一団“アナーキー99”。うまく潜入に成功したと思われたエージェントは悉く水際で暗殺され、既に3人もの手練れが犠牲となっている。業を煮やした安全保障局のアウグスタス・ギボンズ(サミュエル・L・ジャクソン)は奇想天外な策を提案する。死ぬ危険が高いなら、予め使い捨てが可能な戦力を投入すればいい。社会のクズ共の中から、戦闘能力の高い人材を見つけてプラハに送り込もう、というのだ。
 そこで目をつけられたひとりに、ザンダー・ケイジ(ヴィン・ディーゼル)がいた。エクストリーム・スポーツのエキスパートとして、法に抵触する危険な競技を行ってはその様子を撮影し、ビデオやインターネットの裏サイトで発表してはその収入で生活している。その日も、テレビゲームの規制法案を打ち出している議員の車を強奪し、高所にある橋の上から突き落とし自分はパラシュートで脱出する模様をリアルタイムで配信する、という大仕事をこなしていたが、アジトに帰るやいなやNSAの部隊に急襲され、麻酔銃の餌食となる。
 次に目醒めたとき、彼は食堂にいた。訳も解らず眠気覚ましのコーヒーを注文したところに強盗が現れ、ザンダーにも手をかけようとするが、彼は一切がサル芝居であることを見抜いた上で軽くあしらう。そこに姿を見せたギボンズが「テストは合格だ」と宣告すると、ふたたびザンダーは麻酔銃を撃たれ――今度は、ほかの合格者二名と共に、あろうことかコロンビアの平原に置き去りにされてしまった。
 ザンダーたちは瞬く間に魔薬密造業者によって捕えられる。今度も芝居だと高を括っていたザンダーだったが、拷問道具に血の匂いがこびり付いていることから本物だと悟り、慌てて脱出を計る。だがそこへコロンビア政府軍の襲撃があり、仲間はひとりが逃亡、もうひとりは足を撃たれて身動き取れない。ザンダーはバイクを強奪し脱出するが、傷付いた仲間を連れ出すためるに舞い戻ったところで逮捕されてしまう。だが、間もなく到着したギボンズは、ザンダーに対してテストの合格を伝える。とっさの機転と指導力、何より一緒に捕えられた見ず知らずの男を、危険を承知で救出に戻ってきた度胸を認められたのだ。それまで反権力的活動に邁進してきた自分があっさりと国家のために働くことなど出来ない、と拒むザンダーに、ギボンズは刑務所入りといままで通りの危険とスリルに満ち溢れた自由との二者択一を突き付ける。――こうして、型破りの急造シークレット・エージェント“トリプルX”が誕生した。
 早速プラハに派遣されたザンダーは、プラハ警察側の協力者であるソーヴァ(リッキー・ミュラー)の身分をヨーギに知らせる、という奇策に加えて、ヨーギの弟コルヤ(ペトル・ヤクル)がエクストリーム・スポーツのヒーローであるザンダーのファンであった事実も奏功して、容易くアナーキー99の内部に潜り込んだ。秘密兵器オタクのエージェント・トビー(マイケル・ルーフ)による発明も応用してヨーギらの信頼とともに情報を獲得するザンダーだったが、ヨーギの恋人イレーナ(アーシア・アルジェント)の彼を見る眼差しはやけに冷たい。
 アナーキー99のもうひとつの潜伏先である古城に招かれたザンダーは早朝、隠し金庫に細工をしているイレーナを発見する。秘密の代償として彼女をランチに誘い出したザンダーが身分を明かすと、イレーナは情報の代わりに自由とアメリカでの永住権を要求した――そのとき、イレーナの携帯電話が鳴る。ヨーギの許に密告があり、ザンダーがNSAのスパイであることが知れてしまったのだ――!

[感想]
 ストレートなアクション映画って最近ご無沙汰だよな、と思いつつ鑑賞したあと、調べてみたところ本当に何と半年ぶりぐらいだった。このペースで映画鑑賞を続けているのに半年ぶり。それは爽快な気分にもなるわな。
 シナリオは、細かい工夫は兎も角、大筋に於いては『007』や『M:I』シリーズと同系統のいわゆるスパイ・アクション映画の王道から外れていない。寧ろ、気づけば世界を守るところまで話が膨らんでしまっていく構造は完璧な王道と言っていい。故に、主人公の生還を観客が確信できてしまうので、そういう意味での緊張感は乏しい。
 その中で本編を特色づけているのは、主人公が元々地下で遣り取りされている違法スポーツのヒーローであり、社会的に見ればチンピラでしかないこと。肉体能力に優れ、同時に洞察力もありカリスマ性にも恵まれている、とは言え本質的に犯罪者だから国家に依頼するところがない。だから行動中にあっさり「自分はシークレット・エージェントだ」と明かしてしまうし、上司の言動にあからさまな反抗を試みたりもする。主人公がやむを得ぬ経緯からエージェントに祭り上げられるまでの過程を、三分の一近い尺を使って描いている点が最大の特色だろう。
 そして、従来のスパイものと較べると、娯楽性が高い。ザンダーの設定に合わせて、モトクロスバイクやスノーボード、パラセーリングといった危険なスポーツをアクションに盛り込んで、単純に危険なだけのシチュエーションとしなかったことが、現実離れした設定に妙な親近感を齎すと共に全編の爽快感に繋がっている。また、ドイツのハードロックグループやヨーロッパ中心に活動するレイヴのアーティストなどなど、ポップカルチャーを随所に取り入れていることも、従来のスパイ・アクションと一線を画す要因と言えるだろう。
 主人公を知的に見せる表現をあちこちに盛り込んでいるが、細かいところは強引だし無理も多い。そんなうまくことが運ぶかーっ! とかあまりに僥倖に縋りすぎてないか、という場面もある。何より、最後に世界を脅かす代物の設定があまりに御都合主義的だった点は、演出のためとは言えちょっと軽々に考えすぎだという気がした。が、ザンダーというキャラクターの完成度と、ひたすらに娯楽性の高いアクションだけでも充分に楽しめる一本である。ただただ後腐れのないアクションを堪能したい、という向きには文句なくお薦めする。全米での公開前に製作が決定してしまったという続編にも期待しましょう。
 ……ただ、見終わったあとでいちばん印象的だったのが、エンディングで使われたCGIによるタイトルバックだった、というのはどーだろう。

 今回の出演者のなかでまともに名前を知っているの、サミュエル・L・ジャクソンだけだなぁ、などと思っていたのだが、実際のところなかなかの才人揃いだったらしい。ヴィン・ディーゼルは同じロブ・コーエン監督のカーアクション『ワイルド・スピード』によるブレイクした、という印象があったが、それ以前に自ら脚本・監督を手掛けた作品によってスピルバーグに見出され『プライベート・ライアン』に出演しているそうだし、本編でも製作総指揮という形で裏方にも参加している。ヒロインのアーシア・アルジェントもまた自ら脚本・監督に携わった『スカーレット・ディーバ』により高く評価された経歴があるそうな。
 しかしそれ以上に驚いたのはこのアーシア・アルジェント、どっかで見た名前だと思ったら案の定、イタリアン・ホラーの巨匠ダリオ・アルジェントの娘だそうである。親のようにホラーとスリラーとに拘っている風もなく、実に様々な作品に参加しているようだが。

 最後に、日本の配給会社に通告します。プログラムと作中の字幕と、固有名詞のカタカナ表記は統一するようにしましょう。混乱するぞ。

(2002/11/10)


『cinema』トップページに戻る
『light as a feather』トップページに戻る