「AIR」舞台探訪

〜舞台モデルの謎について〜



 なぜ、「AIR」と「ラブひな」の舞台が同じなのか?
 その謎を解くカギは、背景の元になった写真資料集の存在にある。

 「AIR」の舞台の背景は、実は、その一部を、とある漫画家,アニメーター向けの著作権フリーの写真資料集から引用している。(…というのは、今となっては結構有名な話かもしれない)
 だからこそ、同じ写真資料集を元にした「ラブひな」の体育館のモデルと「AIR」の学校のモデルがすぐ近くにある、という接近遭遇もあり得たわけである。

 千葉の飯岡駅、国立駅前の旭商店街がその写真資料集に載っていることを、最初に教えてくれたのはQLAND氏だった。
 「だから、『AIR』のスタッフは関東の方まで取材に来たわけではない」というのが、以前からのQLAND氏の主張だった。
 ところが、そのQLAND氏から、今回の探訪の前に一通のメールが届いた。

 「なぜ、霧島医院の隣のレンタルビデオ店の看板が赤なのだ? なぜ、飯岡駅の屋根の色が違う色なのだ? なぜ、僕ごときに場所の特定ができたのか?

 は? 一体、何を言っているんでしょうか?
 QLAND氏の話を続けて聞いてみよう。

「ああそうかあ、スタッフは現地取材もしていたのではないのか?
 だって、写真資料集って白黒写真だもん。
 だから、霧島医院の背景の色彩感覚は実物に似ているのか、看板の赤は画面の引き締めとしても屋根や壁の塗り分けの茶色までわかるかなあ、現地見なくて。
 じゃあ飯岡駅はなぜちがってるのかというと、それは建て替えられてしまって、もうないから。
 そう考えると、僕が場所を探せたのはあたりまえなのだ。なにしろ両方とも、場所が丸わかりの駅の写真と組みだから」

 なるほど、説得力のある意見である。

「となると、今度の学校も取材されているのではないかなあ。
 なにしろ、道路のフェンスは赤で違うけど、これは画面の引き締めと堤防の手すりとのマッチングとして、木造の建物の張りだした小屋根だ、問題は。瓦っぽい色だからいいじゃんなのだが、資料集では露出オーバーで白く飛んでいるのだ。しかし実物は屋根と同じ色みたいなのだ、ゲームと同じで。おお、スタッフが取材したとなれば、ついでに資料集で手に入らない風景を撮っているかもしれないぞ。これは、わくわくするなあ」

 という事前のやりとりがあって今回の探訪となったのだが。
 実際に行って見た感想としては、木造の建物の色分けが微妙に違うし、周囲の情景に似たところは無いし、「ここに『AIR』のスタッフは来なかっただろう」というのが、私とQLAND氏の一致した意見。

 しかし、実際のところ、私にとっては「AIR」のスタッフが取材に来ようが、元が背景写真集だろうが、そんなことは大して重要なことでは無かったのだ。
 ゲームの中で過ごしたあの夏と情景と同じ情景が、この地上に実際に存在する。
 それだけで、旅に出る理由としては十分だったのである。

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