「ARIA」舞台探訪

〜伏見稲荷、貴船神社編〜



舞台探訪者の心得
 ・探訪先では、地元の人の迷惑にならないように行動する。
 ・観光地でない場所や公共施設でない場所への探訪,撮影には十分注意する。
 ・探訪者の多い場所での行動は控えめに。


 水の惑星、「AQUA」へようこそ!
 日本全国、舞台を求めて歩いた我々ですが、今回の舞台は、ついに地球を飛び出して、火星までやって来ました! 火星探査船「のぞみ」の周回軌道への投入断念からはや300年、惑星地球化改造(テラフォーミング)されてから150年、かつて火星と呼ばれた星は、極冠部の氷の予想以上の融解で地表の9割以上が海に覆われて、今日では水の星、「AQUA」と呼ばれています。

 …な〜んてはずも無いわけですが。

 天野こずえ先生の手になるマンガ「AQUA」「ARIA」の舞台は火星。そして、そこに登場する街のモデルはイタリアのヴェネツィアです。当然、舞台探訪が出来るはずもないわけですが(いや、イタリアに行け、という正面なツッコミは無しで)。
 けれども、「ARIA」第1巻の第4話に、AQUAの中の風景として、京都の伏見稲荷をモデルにした話が登場します。
 「これなら行ける!」
 そう考えた我々は、期待に胸をおどらせて、惑星「AQUA」舞台探訪ツアーへと出かけたのでした。
 今回のメンバーは、SUGI氏が休日出勤で来られなかったもので、例によって例のごとくQLAND氏と私。
 さて、初の地球外舞台探訪の結果は…。

惑星「AQUA」 −京都市 伏見稲荷大社 楼門−

伏見稲荷大社 楼門

 やって来ました、京都市の伏見稲荷大社。
 大社への坂を上って行くと、最初に目にするのが、正面に鎮座する楼門。
 ここで、左右の狐の像に注目。

左側の狐右側の狐

 向かって左側の狐が、第1巻 P108に登場する「不思議な顔」の狐にそっくり。稲荷大社内を廻って、口にくわえている法具(?)がこの形をしているのはここだけなので、これがモデルと考えて良いでしょう。
 また、向かって右側の狐がP119に登場する狐のモデルかも?

惑星「AQUA」 −伏見稲荷大社 千本鳥居−

第1巻 P115

 本殿から奥へ進むと、延々と続く鳥居の列が現れます。有名な千本鳥居の始まりです。
 本殿から奥社奉拝所に行く途中にあるのが、上の場所で、P115に登場する鳥居のモデル。そっくりです。
 ちなみに、右の道に入っていくアリシアさんが左に行こうとする灯里ちゃんを呼び止めて「迷子にならないようにね」と言ってますが、実はどっちの道へ行っても奥社奉拝所に着きます(笑)

どこまでも続く鳥居の列…

 限りなく鳥居の列が続く非日常的な光景は、灯里ちゃんが言うように本当に「違う世界へ繋がってそう」です。

惑星「AQUA」 −伏見稲荷大社 熊鷹社−

「ARIA」第1巻 P121,P123の階段

 写真の石段は、奥社奉拝所からさらに登って、新池のほとりにある熊高社の手前の石段。
 左側の斜めに突き出した木、左側の社の形、頂上の鳥居の形などから、P121,P123に登場する背景と見て間違いないでしょう。

 ところで、昨日歩いた嵯峨野もそうだったんですが、京都を歩いている人の1眼レフデジカメ、または1眼レフの所有率が高いのにはビックリ。印象では半分以上が1眼レフデジカメ/1眼レフ、残りのほとんどがコンパクトデジカメと使い捨てカメラ、私のような大きな1体型デジカメは少数派でした。1眼レフデジカメって急速に普及してるんですねぇ。

「最近はみんな良いカメラ持ってるんですねぇ。私みたいな200万画素のカメラなんて、もう古くなっちゃいましたよ」
QLAND「でもね、大切なのは機械じゃないよ」
「そう、そうなんですよ! 大切なのは機械じゃないんですよ!
 大切なのはぬいぐるみですよね!? やっとQLANDさんも分かってくれましたか!」
QLAND「…帰れよ。いいから、もう帰れよ、オマエ」

これが大切だよねっ?!

惑星「AQUA」 −伏見稲荷大社 三ノ峯、二ノ峯、一ノ峯まで−
 さて、ここまでは順調に「ARIA」の背景を発見出来たものの、ここからが苦行の道のりだった。
 あと第4話で印象に残っている背景と言えば、左右に狐を従えて、中央に口に丸い何かをくわえた狐が鎮座してるお堂である。
 こんなに印象的な背景なのだから、どこかにモデルがあるに違いない、と根拠の無い確信に導かれて、我々は稲荷山山頂(233m)を目指してお山を登り始めたのだった。

 登る。

 ・・・登る。

 ・・・・・・登る。

 ・・・・・・・・・ひたすら登る。

 登っても登っても、目の前には果てしなく続く朱の鳥居。
 痛んで来た足を引きずりながら、「朝霧の巫女」の三次市といい「SNOW」の美山町といい、なんで我々の舞台探訪には山登りが付き物なのか、などと、とりとめもなく考えているうちに、ようやく広い所に出た。

四ツ辻からの俯瞰風景

 やれやれ、登った登った、…と思ったら、ここは四つ辻。三ノ峯から一の峯へ巡る巡礼路の、ようやく起点に辿り着いたばかり。…orz

 そんなわけで、まだ登ります。

 …三ノ峯。足が痛いです。
 でも、狐はいません。

 ……間ノ峯。ゼイゼイ。
 狐はどこだ〜…。

 ………二ノ峯。
 …春が来て、ずっと春だったらいいのに。

 …………そして、一の峯。

一ノ峯(末広大神)

 狐を探して、ついにここまでやって来てしまいました。末広大神と崇められる一ノ峯。標高は233m。
 でも、狐のいるお堂は、ない。

 …観鈴ちん、がんばったよね?
 …もう、ゴールしてもいいよね?

観鈴ちん、ゴール…


惑星「AQUA」 −伏見稲荷大社 「お山する」−
 一ノ峯から四ツ辻まで、今来た道とは別の巡礼路がある。
 もうここまで来たら「毒食らわばそれまで」。狐を探してそちらの巡礼路を通って降りてみることに。
 稲荷山に登って、神蹟やお塚を巡拝することを「お山する」と言うのだそうだが、図らずも我々は「お山する」ことになったのだった。

 一ノ峯から下って、御劔社、御膳谷奉拝所、と巡って歩いて行く。
 この間に大小の「お塚」や薬力滝などの“神蹟”が現れる。
 が、狐が真ん中に鎮座したお堂は、ない。

「…ふと思ったんですが」
QLAND「何が?」
「狐は、日本古来から害獣のネズミを獲る益獣として狐をあがめる風習があったのに加えて、インド神話が起源の『ダーキニー』という鬼神が仏教(密教)の『荼吉尼天』として入って来て稲荷神と神仏習合した際に、荼吉尼天の眷属がジャッカルであることから、稲荷神の使いが狐とされたそうなんですよ」
QLAND「そうなの?」
「と、いうことは、狐は『お使い』であって、お堂の真ん中に座ったりしないんじゃないかと。お堂の真ん中は『稲荷神』の場所なんですから」
QLAND「…あれはさ、灯里ちゃんが狐の世界に迷い込んで、狐の世界だから狐が真ん中にあったという設定じゃないの?」
「今、QLANDさんが良いこと言った! それだ、そういうことにしましょう。と、いうわけで、狐探しはこれにて終了ということで…」
QLAND「ここまで来たら降りる距離変わんないけどね」
「………」

 こうして、約2時間あまりの捜索を終えて、我々は足を引きずりながら稲荷山を降りたのだった。
 モデルでもう一つ、作中に登場する茶屋が無いかと探したのだけれども、稲荷山の参拝路にも、下の土産物屋の並びにも、見つけることは出来なかった。

 伏見稲荷を出た後は、周辺のお寿司屋で、昼食にいなり寿司を食べる。観光地価格なのでお手ごろ感は無いけれども、灯里ちゃんがお土産に買っていたので、記念モノということで。

惑星「AQUA」 −京都市 貴船神社 南参道−
 さて、これで旅は終わらない。
 惑星「AQUA」、最後のステージが残っているのだ。

 翌日、京阪電車から叡山電車へと乗り継いで、やって来たのは京都市北部の貴船神社。
 第1巻の第4話の扉絵(画集にも載っている)のモデルが貴船神社ではないかとQLANDさんが言うので、足を延ばした次第。

二の鳥居

 貴船口駅からバスで3分程度。バス停から徒歩1分で着くのが、貴船神社本宮の南側にある、二の鳥居。
 ここをくぐって進むと、有名な南参道がある。

「ARIA」第1巻 第4話扉絵

 ほぼそっくり。ここがモデルと判断して良いでしょう。
 扉絵では、左右が山の登り斜面になっているが、実際には向かって右側は下降斜面である。
 よく扉絵と比べてみると、参道の上の門と道の両側の灯籠の配置から、どうも扉絵は左右反転しているように見える。けれども、左右反転用のうまい撮影ポイントがどうしても見つからない。上の写真は、比較的似ているかな?、と思えるアングル。(写真では石段が白く飛んでしまっているのが残念)
 また、現在は写真のように真ん中に金属製の手すりが設置されているのだが、これは最近になって向かって右側にあったものが中央に移動したものらしい。バリアフリーは良いのだけれども、貴船神社で一番有名なスポットなだけに、景観とのマッチングがもう少しどうにかならなかったものかと思うのだが…。

 以上で、「ARIA」舞台探訪は終わり。
 少々強引なこじつけの舞台探訪でしたが、それでも背景のモデルの場所が見つかったので一応の成功と言うべきでしょう。
 最後になりましたが、いつもながら案内役をしていただいたQLANDさんに感謝です。

 「AQUA」,「ARIA」は、水の惑星という異世界を舞台に、穏やかな時の流れの中で起きる日常の何気ない出来事が、繊細な感性でみずみずしく描かれる雰囲気が好きです。急き立てられるような毎日で心が乾いてしまった時に読むと、心がうるおうような気がします。
 惑星「AQUA」と、水先案内人(ウンディーネ)たちの世界よ、永遠なれ。

  終わり。