微分方程式の部
北海道三笠高校
渡邊 勝
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198×年1月○○日、サンドー宇宙ステーションでは、地球帰還も間近かな隊員達が、
トランプをしたり、プロレスごっこしたり、楽しんでいた。
ところがフクシ監視員より、怪しい物体が、ステーションのまわりをうろついているとい
う報告が入った。
ヨコタ司令官は、この怪物体をPと名付け、その動きを調査するようアラキ隊員に命じた。
直ちにアラキ隊員より「物体Pの加速度ベクトルは位置ベクトルと大きさが同じで、方向は
丁度反対になっています」との報告があった。
ヨコタ司令官は、コバヤシ、オサナイ両隊員を呼び、コバヤシ隊員には「x軸方向のみの動
きをチェックせよ。」オサナイ隊員には「y軸方向の動きのみをチェックせよ。」といって下の
指令書を渡した。
αx、αy、x、y、ともに時刻tの関数である。
コバヤシ隊員は「諒解。αx=−x ですね。」
オサナイ隊員は「諒解。αy=−y ですね。」
ヨコタ司令官「そのとおり」
両隊員は直ちに作業に入った。
vxはx軸方向の速度 vyはy軸方向の速度
両隊員声をそろえて「司令官、このあとどうするのですか?」
ヨコタ司令官「両辺に、それぞれvx、vyをかけろ」
両隊員コーラスで「諒解」
ヨコタ司令官「コバヤシ隊員は、右辺のvxをdx/dtとせよ。オサナイ隊員はコバヤシ隊員にならえ」
両隊員「諒解」
(2C1′=C1) (2C2′=C2)
オサナイ「フクシ監視員へ。C1 の値を求めたいので、観測値を知らせて下さい」
フクシ「ナイイッテルノヨ!!ウジイエお前代われや」
ウジイエ「x軸通過、R点、vx=0、vy=r ダァ〜」
オサナイ「諒解」
x=r のとき y=0 のとき
vx2=0 vy2=r2
−r2+C1=0 r2=−02+C2
C1=r2 C2=r2
vx2=−x2+r2 vy2=−y2+r2
ヨコタ司令官「ガブン隊員に命ずる。以上の結果をまとめろ」
ガブン「ハイ!わかりました」
vx2=−x2+r2
+ )vy2=−y2+r2
vx2+ vy2=−(x2+y2)+2r2
vx2+ vy2=│V│2
x2+y2=2r2−│V│2
ガブン「│V│の値は変化してますか?ウジイエ隊員至急調査ねがいます。」
ウジイエ「│V│の大きさは一定です。アーダルイ」
ガブン「わかった!!」
x=r、y=0 のとき
r2+02=2r2−│V│2
│V│2=r2
x2+y2=r2
ガブン「物体Pは半径rの円を描いて運動しています。その速度は一定です。
中心は我がステーションです。」
ヨコタ司令官「ナン隊員に命ず。物体Pの位置を時刻tによって表せ。」
ナン「諒解」
角速度をωとして、t時刻(x軸上R点のとき、t=0 として)
には
ω2=r2 ゆえに ω=r
x=cosrt
y=sinrt
カトウ隊員「大変です。ピカピカ光る変な物体がもうひとつステーションのまわりを
うろついています。」
ヨコタ司令官「全員配置につけ!!」「ケイジ。直ちに、怪物の動きを調査しろ。」
ケイジ「物体Pと同じく、加速度は位置ベクトルと逆ですが、大きさがちがいます。」
ヨコタ司令官「大きさを知らせよ。」
ケイジ「大きさは、位置ベクトルの1/4です。」
ヨコタ司令官「
タカダ隊員はx軸方向、ユウジ隊員はy軸方向を解析せよ。」
タカダ、ユウジ「諒解」
タカダ「フクオカ隊員へ。C1を決定したいので観測値を知らせてくれ。」
フクオカ「x軸通過点Aは、10宇宙キロ、vx=0、vy=8宇宙キロ/sec
タカダ「諒解 x=10 のとき vx=0
y=0 vy=8 」
ヨコタ司令官「vx2+vy2=│V│2 が一定かどうか、サンユー調べろ。」
サンユー「一定ではありません。速くなったり、遅くなったりしています。」
ヨコタ司令官「それでは、さらに解析を続ける。ナカヤマ隊員はvxを、ヤスダ隊員はvyを調べろ。」
ナカヤマ、ヤスダ「諒解」
ヨコタ司令官「 だから
となる。
ナカヤマ、ヤスダ隊員は、共同して作業に当たれ。」
ナカヤマ、ヤスダ「諒解
ですが、±どちらかがわかりません。コクブン隊員、至急知らせよ。」
コクブン「大体←方向です。」
ヤスダ「←じゃわからん。プラスかマイナスか?」
コクブン「エート、マイナスです。」
ヨコタ司令官「それでは全員に命ずる。−10≦x≦10,−8≦y≦8
の整数を dy/dx 式に入れて計算し、グラフに書き込め。」
ナン「どういうことですか。もっとくわしく、教えて下さい。」
ヨコタ司令官「ワタナベ先生に説明してもらうから、フクシ、よんでこい。」
そこで、のっそり現れたワタナベ先生は、いくつかの例を説明した。
全員がグラフを描き終えて、それをながめてみて、あることに気がついた。
ヨコタ司令官「アラキ隊員は、積分を続けて、x、yを時刻tの式で表してみよ。」
アラキ「諒解」
左辺について
右辺について
左辺=右辺
t=0 ならば x=10
アラキ「
でピカピカ物体は動いています。」
ヨコタ司令官「ケイジ隊員、tを消去してみよ。」
ケイジ「やってみます。」
辺々加えて、
ケイジ「長軸10KM、短軸8KMの楕円です。」
さきほどのP物体も、ピカピカ物体も、グルグルとステーションのまわりをまわりな
がら、別に危害を加えるという様子もなかった。
見ていたヤスダ隊員は、居眠りをはじめた。サンユー隊員も見飽きてねてしまった。
いつもウロウロしているウジイエ、フクシ両隊員は、二つの物体のまねをしながら、
ステーションの大広間の中をぐるぐるまわっていた。すると、どこからともなく、
美しい女性の声が聞こえてきた。
「サンドーステーションのみなさん。お元気で地球へお帰り下さい。みなさんが、
私たちの軌道を共同、協力して調べたことにとても感動しました。」
声がおわると、二つの物体は、一瞬のうちに姿を消していた。
「回転の数学」THE END
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