札幌市。あけぼの旅館
基礎資料
単元;数学C「行列」 、工業数理「予測と計画」−“産業連関表”
指導要領にあるもの;
1.行列の定義、相等、
2.行列の和と実数倍、零行列、行ヴェクトル、列ヴェクトル、
3.行列の積、非可換、零因子、単位行列、
4.逆行列、二次行列逆行列の公式
5.連立一次方程式、二次;逆行列の公式使用、消去法、三元一次→消去法
6.コンピュータによる行列の計算
定数倍;2×3行列、和;2×3行列、積;2×2行列、消去法;三元連立
必要とされる予備知識;上記1〜4
この指導案で上記以外に準備するもの
1.転置行列;定義
2.転置行列の逆行列 *要点参照
この指導案の特徴点
@ 「掃き出し法」を操作だけに終わらせないで、行列と対応させた。
A 「掃き出し法」によって、逆行列も算出できることを示した。
B 二次行列の場合も、逆行列の公式を使わないで、掃き出し法を徹底する。
C 普通高校では扱わない産業連関表=投入産出表をとりあげた。
D 「あなたは経済大臣」の節を設けて、産業連関表をシュミレーションの材料とした。
産業連関表の歴史
1.フランソワ・ケネー;Francois Quesnay(1694〜1774年)
ポンパドール侯爵夫人(渡邊勝氏の高校時代一コ下のマドンナI.N嬢に似ている)の侍医、
ルイ十五世の侍医、「百科全書」に執筆、
1758年に「経済表」初版を印刷。(岩波文庫−白43)
重農学派;重商主義によって疲弊させられた農村の復興、
農業が富の源泉:商工業は不生産的、
自然法の思想
2.カール.マルクス;Karl Marx(1818〜1883年)
マルクスは経済表(範式)を評して、次のように述べている。(剰余価値学説史、第一章第
十四節)。「この表は、資本の全生産遇程を再生産過程として叙述し、流通をただこの再生産
過程の形態として、貨幣流通を資本の流通の一動機として、叙述するの試みであった。同時に
また、この再生産過程の中に、収入の起原、資本と収入との交換、再生産的消費と決定的消費
との関係、というものを包含しょうとするの試みであった。また、資本の流通の中に、消費者
と生産著(事実上、資本と収入)との間の流通を、包含しようとするの試みであった。最後に、
この再生産過程の動機として生産的労働の二大区分−原生産と工業の間の流通を叙述するの試
みであった。そしてこれらすべてを、一つの表の中に、すなわち実際上ただ、六つの出発点と
帰着点とを結ぶ五つの線から成る表の中に、叙述するの試みであった。しかもそれは、十八世
紀の最初の三分の一、すなわち経済学の幼少時代においてである。それはたしかに最も天才的
な思いつきであった。経済学が今までにこれに負うところは少なくない。」
マルクス自身は、「資本論・第二巻・第二部・第三篇・第20章;単純再生産、第21章;
蓄積と拡大再生産」の中で、再生産表式を展開している。生産財生産、消費財生産二部門にお
ける剰余価値の生産と部門内取引、二部門間取引を分析している。経済主体の相互関連をマク
ロにみている。
例;単純再生産の場合、添字(サフィックス)の1;生産財部門、2;消費財部門
C;不変資本、V;可変資本、M;剰余価値、W;生産された商品の価値
3.ソヴィエット革命後
ブハーリンの指導下、「ソ連邦国民経済バランス」1926年、
(商品経済消滅→経済学消滅→客観的経済法則の否定→計画経済下の均衡体系を追求)
数理形式主義的偏向があって、スターリンから「数字の遊技である」との批判され、経済バラン
スは中止。産湯を捨てて赤子まで流してしまった。1929年
以後ソ連では、経済学の数理的側面を軽視してしまう。
4.ワシリー・レオンチーフ; Wassily Leontief(1906〜
ソ連からドイツそして米国に移住しハーバード大教授となった経済学者;
「産業連関表」を創案(経済バランスを米国に移植)した。
「アメリカ経済の構造1919〜29」1942年
依って立つ経済理論は真に科学的経済学でなく、現象論に留まっていた。
5.日本;官庁経済学
1957年通産省が「日本経済の産業連関分析」発表、それ以降5年ごとに作成、
産業連関表の問題点
1.剰余価値が隠されてしまっている。剰余価値の生産こそ資本主義的生産の基本動機である
2.「投入量=産出量」;自動均衡論
3.依って立つ学理;「新古典派」等;経済主体;企業、家計とみる、価格は需給決定論
4.真に科学的な経済学で、表を編成し直すことも可能;ただし、初学者には難しい。
高等学校工業科用「工業数理」実教出版1996年
ケネー、戸田正雄・増井健一訳「経済表」岩波文庫(951−951a)1966年
関恒義「現代の経済原論」実教出版1997年
関恒義「経済学と数学利用」大月書店1979年
大阪市立大学経済研究所編「経済学辞典第2版」岩波書店1979年
マルクス、資本論翻訳委員会訳「資本論」新日本出版1997年
転置行列について要点
A=[aij] B=[bij] 両者ともにn次正方行列とするとき、
A′=[aji] B′=[bji] これらを転置行列とよぶ。
(@)
(AB)=[aij][bij]=[Σaikbkj] ならば、
(AB)′=[Σajkbki]=[Σbkiajk]=[bji][aji]=B′A′
すなわち (AB)′=B′A′ ・・・・・@
(A)
E;単位行列 E′=E
(AA−1)′=E′=E
(A−1)′A′=E
上の式より
(A′)−1=(A−1)′ ・・・・・A
(B)
(E−A′)=[(δij−aji)]=[(δij−aij)]′=(E−A)′ (δij;クロネッカーのデルタ)
すなわち (E−A′)=(E−A)′ ・・・B
非負解存在の保障
問題;(E−A)x=d の係数行列(E−A)がはなはだ特殊な形をしている。
(E−A)=[bij] i≠jのとき、bij<0 i=jのとき、bij>0
はたして、dの要素が非負のとき、xの要素も非負であるか?
一般に
のとき、
が保障されるか?
[定理] Hawkins-Simonの条件(首座小行列式が正値をとる)
[証明]
n=1のとき <A>は、b11x1=c1
<C>より b11>0 、x1=c1/b11
c1≧0⇒x1≧0 即ち<B>が成立
n=k−1で成立すると仮定 ・・・<D>
掃き出し法の操作を行い
(2)について<D>より
行列式の性質により、<Ak>の係数行列Bと<A′k>の係数行列B*の行列式は等しく、
右辺を展開して、
(3)より │B│>0、(1)より
<Ak>より、b1j≦0,(4)よりxj≧0(j=2,・・・、k)
まとめて n=k のとき
ゆえに、すべてのn(n;自然数)について成立
二階堂副包「経済のための線型数学」新数学シリーズ22 培風館1961年