サボテン今昔 No.3 「Conophytum burgeriPart2

Hammer本2

私が「サボテン今昔」の一項としてConophytum burgeriを取り上げたのは1999年11月。その後コノフィツム属についてのより一層徹底研究した本「Dumpling and His wife:New Views of the Genus CONOPHYTUM」Steven Hammer著が出版された。2002年の事である。この本には前著「The Genus Conophytum」発行以後に発表された新種、園芸種が多数取り上げられている。C. burgeriの記事も前著よりは若干詳しくなっているが、目新しい部分は少ない。しかし、栽培の項ではより丁寧に記載されているので重複部分はあるがここに追加しておきたい。
【栽培は難しい方ではないが移動の際は気難しい。根部は貧弱で植え替えは簡単に出来るが移した直後の水遣りはいけない。移植後はナプキンで覆い数日後に霧吹きで水を掛ける。通常の水遣りは一週間後から。以後は適切な潅水を続けるのが良い】
又、分頭についての発言は注目に値するのではないかと思われる。
【球体は分頭せずにただただ太るだけで最終的にはレモン位の大きさになる。稀に2頭になるが、例えて言えばシャム双生児であって不揃い。偶発的な細胞増殖と言える。繁殖の手段としては実生しかない。】
つまり、日本でブルゲリが2頭、3頭になって喜んだり、多頭株が育たずに枯れたと落胆するのは、ブルゲリの多頭化現象を他の大部分のコノフィツムと同じ分頭過程の生理現象と思い込んでいる為ではないか?
ハマーの記事にある通り、‘偶発的な細胞増殖’に過ぎないのであって、生長期から休眠期を経て一年経った時、ブルゲリの多頭は偶発的であった為に次の生長過程には繋がらないのではないかと思われる。例えばタビ型や鞍型などの一般的なコノフィツムが元親の体を芯として正常に分頭するのとは違って、ブルゲリの場合は、脇芽が生じて親株の隣に親に近い大きさか、それより小さな個体が分頭した様な状態で現れる。芯から出たものでないだけに元親以外は継続して生長(分頭)出来る体質になっていない。例えて言えば子の体内はカラの可能性も考えられるのではないか。この解釈だと多頭株が翌年か或いは、近い将来には枯れると言う状況が理解できる。ハマーの解釈を推量した結果の私の考察はこのようなものであるが、科学的説明を受けて完全に納得したと言うものでもない。この点は皆さんでご研究頂き結果をお知らせ願いたい。

                     長野県松本市 錦園 田中正人氏によるCo.burgeriの新球形成過程の研究写真
田中1 田中2 田中3 田中4
Co.burgeriの新球の芽が見える 新球が大きくなってきた 外皮が乾燥し新球がハッキリ見える 旧皮を破って新球が完成

交配種(西川氏) ハマー氏サイン
S.Hammer氏交配種 S.Hammer氏のサイン


尚、ここに取り上げた2002年の新著には交配についてもその歴史と実例の記述がある。既に1920年頃から交配が始まっていて、現在は二次、三次交配段階まで進んでいる。ある種とある種を交配するのはどの様な意図かを明らかにしながらの実例写真は興味深い。似た物同志を安易に交配するのではなく、形態的にも、性状的にもかけ離れていると思われる物の交配は、交配嫌いの方も注目して良いのではなかろうか。
ただ、所謂、雑交配による‘交配屑’が市場に出回る事は厳に戒めたい。交配には親株を厳選し、厳重に管理してその交配種の履歴を確実に把握すべきであろう。交配種として価値の認められない個体は処分する…と言うくらいの断固たる意識を持って臨まないと、嘗てのギムノやロビビアの雑交種の轍を踏み、趣味家の意欲に水をさす事になりかねない。日本において明確な目的を持ち、意欲的な交配を試みておられる方々の今後の業績に期待し、コノフィツム園芸の将来に明るい光を希望している。




故橋口嘉治氏(兵庫県)の交配種
橋口氏交配種 橋口氏ブルゲリ交配種ブルゲリ交配種開花
故橋口嘉治氏交配種
(ラツムxベルコーサム)
ラベルがカタカナ表記の為ratumlatumかは不明
同じく橋口氏の交配種
(ブルゲリ x ラツム)
形はブルゲリで肌に光沢が無く、梨子地の様に見える。花は2004年に初めて開花、清楚で美しい
  
                                   珍しいコノフィツムの綴化今昔
小米雛綴化 小米雛綴化2 千姫綴化 千姫綴化2
小米雛綴化(岩手県 多田征夫氏) 左写真別角度 千姫綴化(シャボテン社) 千姫綴化(一年後)
小米雛C.hirtumの綴化。40年以上の栽培品との事、この様な綴化面が長い見事な作柄は少なく先行きが楽しみ。私は1965年頃千姫 C.quaesitumの綴化を持っており、シャボテン誌61号に発表したが、この株は翌年多頭になり綴化としては持続しなかった。(平尾博)

最新情報 1 岩手県盛岡市 赤石幸三氏の赤花カリキュルス
カリキュルス親株 赤花 黄花
Cono.calculusの赤花出現には驚嘆した。寡聞にして今まで報告に接した事がないので恐らく世界初であろうと思う。
ご本人の報告によれば「紅色とでも言いましょうか、今回初めての開花と思います。昨年は花を見てなかった気がします。
以前からある群生株についた種子の実生です。」との事。大切に育てて頂きたい。(平尾博)


最新情報 2 紅波園のハメリ
ハメリ1 ハメリ2
2004年10月に神奈川県藤沢市の紅波園でイギリスより輸入したCono.hammeriが開花。オーナーによると意外に地味な花であったそうで花の後ろの株は2頭株に生育中。
(写真提供 横浜市・中村敏也氏)

今回の記事に掲載にあたり、下記の方より写真の提供を頂きました。厚く御礼申し上げます。
赤石幸三氏 阪井健二氏、多田征夫氏、田中正人氏、竹村一志氏、中村敏也氏、西川弓子氏、渡辺喜久子氏(50音順)
Webサボテン今昔事務局
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