夢のような出来事
これは、2002年シーズンに仕事で福島県に1年間出張してた時の話である。その年の暮れ(クリスマス)に移動だった為、遅い春が来るまでの間は、もっぱら管釣り通いで寂しさを紛らわしていた。幸い近場にはいくつか管釣りが有り、また釣り仲間も数人いた為、情報交換、釣りの話題は途切れなかった。
そして、こちらの渓流もドライでの釣りがメインになり始めた5月中旬頃、仲間の1人が『○湖に流れ込んでる川で、6月頃イブニングで尺イワナがライズするらしい』と言う情報を持ってきた。でも自分の居る所からは2時間程の道のリ、ましてやまったく未踏の地だった為、その時は軽く話を流して聞いていた。しかし、部屋に戻っても、会社に居ても、あの『尺イワナがライズするらしい』の言葉が頭から離れなくなってしまった。とりあえず地図で調べると○湖に流れ込んでる川は、釣りになりそうな川が3本ある。あいにく河川名は解らない為、この3本の中に含まれているかさえも解らない。そして地図を眺めているうちに、我慢しきれなくなり気が付くと会社に『明日休みます』と電話していた・・・。そしてまだ暗いうちに○湖目指して車を走らせていた。
途中道を間違えながらも、5:00頃○湖に到着。今日1日で3本の川を釣るのは無理なので、1本の川に的を絞り探って見る事にした。その川はすぐに見つける事ができた。暴れ川らしく下流はいくつもの提が作られおり、少々趣に欠ける為、車を更に上流に走らせる。川沿いの道を上流に行くと所々に釣り人らしい車が止まっている。しかもほとんどの車が関東ナンバーなのにはビックリ(苦笑)
更に上流に行くと、車止めのゲートが現れた。ゲート手前の駐車場には車が3台止まっている。しかし、これより上流の流れが、いかにも東北と言うような渓相を見せていた。先行者がいるのは解っていたが、ゲートから上流を釣ってみる事にする。仕度をしていると漁業のおじさんがやってきて話掛けてきた。なにやら親切に最近の釣果やポイントを教えてくれているらしいのだが、方言だらけで自分には何を言ってるのか理解出来なかった。しかし地方でその土地の方言を生で聞くと、何か心が温まる気がする。(おじさん有難う)
仕度を済ませ更にゲートから20分ほど歩く。途中おおきな堰堤が2つ有り、その2つめの堰堤上から入渓する。水はまだ冷たく雪も所々に残っている。しばらくドライで釣り上がるが、案の定ドライには反応がない。良さそうなプールが有ったのでしばらく観察したが、ライズは起きそうもないのでルースニングを試してみる。普段はやらない釣りだが、管釣りで使ったマーカーがベストのポケットに1つだけ残っていた。魚影は小さいのが数匹確認出来るが、マーカーには反応は無かった。そうこうしてるうちにティペットとマーカーのサイズが合っていなかったようで、マーカーが外れ下流に流れていってしまった。何かまったく釣れる気がしなくなり、場所を移動しようか、帰ろうか考えながらトボトボ入渓点に戻る。入渓点には堰堤上のプールが広がっている。時計を見るとまだ8:30。プールの流れ込みに腰を下ろしコンビニのおにぎりにかぶりついていると、プールの水面にいくつかの輪が広がっている。初めはガスだろうと思って気にせずいた。そのうち輪の数がどんどん増えて行く。そこに先程の流されたマーカーが漂っているのに気付く。そしてその瞬間、マーカーめがけ水飛沫と一緒に銀色の魚体が飛び出した。ガスではなくすべて魚だったのである。その数30匹程。しかもライズリングから推測するとすべてかなりのサイズ。(この時はまだハヨか何かだろうと思っていた。)
とりあえずライズの主を確認するべく狙ってみるが、プールとは言っても50m×30mは有る。自分の握っているロッドは#3。自分の技量ではとても太刀打ち出来る距離ではない。それでも立ち位置を替え追い風にも助けられながら、出来そこないのダブルフォールで狙うと、何とかライズ地点にフライを運ぶ事に成功。そして、数秒の沈黙のあとフライが静かに水面から消え、反射的に竿を立てるとロッドに確かな生命感が伝わってきた。しばらくのやりとりの末ネットに収まったのは、ハヨなどではなくアメマス系のイワナであった。興奮のあまり震える手で持つとズッシリと重く太い。メジャーで計ると34.5cm!思わず両手を挙げて雄叫びを上げてしまった(^^;
ライズはまだまだ続いている。先程の雄叫びのせいか、ライズは更に遠くに行ってしまった(汗)。林道を走って車に戻り、ロッドを#5に持ち替えて再チャレンジ(笑)。#5だと自分の下手くそキャストでも勝負になる。その後32.5cm、33cm、35cmの3匹を追加。この日はまだライズは続いていたものの、大満足したのと何か悪い事をしているような気分になり、15:00で納竿とした。
この年、8回この川に通い、合計10匹以上の尺イワナを釣る事が出来た。そしてこの先出会う事が出来ないであろう40.5cmの大イワナを手にする事が出来た。まだまだ自分の知らないすばらしい渓、美しい渓魚の出会いを求めて私の旅は続くのであった(^^)

              
             
違う日に釣れた38.5cm(撮影後リリースしました。)

P.S 翌年、再びこの地を3度訪れたが、ライズはおろか魚影さえ確認できなかった。

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