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第1期マイナビ女子オープン決勝5番勝負第4局
矢内理絵子女流名人−甲斐智美女流二段 於 将棋会館 2008.5.14(水) |
写真・トップは、局後挨拶する矢内女王(右)と、
それを見守る大盤解説会聞き手の中村桃子女流2級(左)。 写真・左は、惜しくも敗れた甲斐女流二段。 女流新棋戦。 初代「女王」の座を巡る戦いである。 この称号については、賛否両論。 というか、非とする意見が多い…かもしれない。 確かに、(はやりの言葉で言うと)こじゃれた名前ではなく、ベタな名称。 これを敢えて持って来たところに、女流の最高賞金棋戦として、王道を歩む、という主催者の並々ならぬ決意を、わたしはしかし感じるのである。 昨年の10月20日、公開で行われた予選の一斉対局を見に行った。 その後本戦トーナメントが進み、矢内理絵子女流名人と甲斐智美女流二段の決勝となった。 同じ顔合わせの、第1回大和証券杯・女流最強戦決勝の解説会にも行った。 こちらは一発勝負で、甲斐女流二段が勝って優勝した。 マイナビ女子オープンの方は、決勝が5番勝負で行われる。 3局が終って、矢内女流名人の2勝1敗。 あと1勝である。 第4局、対局のある将棋会館で大盤解説会。 矢内女王誕生の瞬間に居合わせるため、わたしは労働者としての正当な権利を行使し、会社を休んだ。 電話で予約して、解説会の前に行われる特別指導対局も受けることにした。 特典として、昼食休憩後の再開時の数分、対局をそばで見られる。 早めに食事を済ませ(別頁「「ほそ島や」にて女王誕生祈願08.5.14」をご参照されたし)、12時半頃、将棋会館へ。 2階の道場で待機。 平日の午前中は「女流棋士スーパーサロン」で指導が受けられる。 水曜日の担当は安食総子女流初段と貞升南女流1級で、まだやっていた。 13時頃、客が集められる。 注意事項。 私語禁止。 携帯電話は電源を切る。 難しい局面なので、差し手は進まないかもしれない、との由。 案内されて、ぞろぞろ階段を上がる。 4階。 対局室は和室である。 広い上がり口で靴を脱ぎ、脇の下駄箱に靴を入れる。 受付のような所に、鈴木大介八段が立っていて、若い衆を集めてわいわいしゃべっている。 手元には盤駒。 何やら研究しているらしいが、なぜこんなところで? 今日は藤井猛九段と対局中らしい。 廊下を歩き、ふすまの閉められた2部屋程を通り過ぎて、目指す部屋(特別対局室)に入る。 窓 客客 客客 甲斐■矢内 客客 客客 立会 記録 入口 両対局者は既に盤を挟んで着座。 その脇に立会人の中村修九段、記録係、あと誰かわからない方々が座っている。 そこにぞろぞろと入って行き、甲斐女流二段の後ろに2列に並んで座る。 誰も何も言わず、重苦しい雰囲気。 矢内女流名人は、はかまの和服姿。 何度かお目にかかったことがあり、かわいらしい女性という印象を持っていたが、今日はこれまでと違った、怖い顔つきで盤をにらんでいた。 でもそれは美しく、かっこよくもあった。 一方甲斐女流二段は、位置的にお顔を見ることができなかったが、カジュアルな服装で、背後に客が来ているにもかかわらず、平気で足を掻いたりして、至ってマイペースであった。 これはこれで立派であろう。 動きがないまましばらくたち、これはやはり指すところは見られないだろうと思っていると、記録係が「再開します」というようなことを言って、対局時計を動かし始めた。 実はそれまではまだ休憩中だったのである。 すると矢内女流名人が指した。 甲斐女流二段も指した。 両者とも2,3手ぐらいずつ、対して間を置かず指した。 望外の喜びで感動した。 もっとも位置的に、盤面は見られなかった。 その後退出したが、一体どのくらいの時間だったのだろうか。 長かったのか短かったのかもよくわからなかったが、濃密な時間を過ごした。 また少し待ち時間があって、13:30から、2階の研修室(道場の外)で、大盤解説会の解説者による、特別指導対局が行われた。 戸辺誠四段が8面指し、中村桃子女流2級が5面指し、だったか。 告知では先着10名程度、とあったが、多少増やしてもらったようだ。 14:40までの予定だったが、終らない人が多く、10分程度延長。 わたしは時間切れで指し掛けか、と思っていたら、あっという間に詰まされ、棋力のなさを痛感した。 皆、最後まで指せたようだった。 次は大盤解説会。 15:30開場で16:00開始。 また間が空く。 道場で人の将棋を見たり、置いてある本や雑誌を読んだりする。
15:30、また研修室へ。
大盤や椅子が準備されている。 客席は7×8列で総数56。 それほど大きい部屋ではない。 「次の一手」の解答用紙に、名前だけ書いて出すよう言われる。 対局の進行が早いので、出題する時間が取れそうもなく、賞品は純粋な抽選になった由。 16:00、解説開始。 解説は、若手期待の有望株、戸辺誠四段。 聞き手は、笑顔が素敵な中村桃子女流2級。 マイナビ女子オープンの予選や、世田谷花みず木女流オープン戦で対局も見ているが、若いながら解説の仕事もそつがない。 NHKの名人戦中継にも抜擢されていたが、何より華があって、将棋界のイメージアップに貢献大だと思う。 大盤が載っているテーブルにお2人も上がって、駒を動かしながら解説。 時々連盟の人が新しい棋譜を持って来る。 それを見て指し手を進める。 戸辺四段は、両対局者とは、奨励会でいっしょだった。 矢内女流名人は3年ぐらい先輩で、3局ほど。 甲斐女流二段は同期で、5局ほど。 それぞれ指した、とのこと。 |
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先手▲矢内理絵子女流名人
後手△甲斐智美女流二段 39手目、▲5六銀までの局面。 戸辺四段曰く、「将棋世界」3月号の付録で「△5五銀があるので危険」と書いた局面に似ている、とのこと。 ここでは振り飛車有利、と見られていたらしい。 40△5五銀 41▲同銀 42△同歩 43▲6七金右 44△4七角 45▲6五歩 46△7三桂 47▲6六銀 48△5四銀 49▲3六角 50△同角成 51▲同歩 52△6九角 53▲1八角 |
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40△5五銀のところで昼食休憩、とのこと。
再開後、数手を見ることができたのだから、41〜44手目ぐらいか? 終ってみると、そこら辺から数手が本局の切所だったらしい。 45▲6五歩、47▲6六銀が落ち着いた好手だったようだ。 逆に後手は46△7三桂はよかったが、48△5四銀がよくなかった。 △2五角成がよかったのではないか。 △3九銀もあったのでは、ということであった。 53▲1八角は▲3五歩を見せている。 この後、この端角のにらみが最後まで利き、居飛車有利に進み、91手で先手・矢内女流名人の勝ちとなった。 終局は16:41とのことで、程なくして両対局者が研修室に来てくれ、挨拶と感想戦を行った。 矢内女流名人はにこやかに話されていたが、まだ目にはジャガー横田ばりの鋭さが残っているように感じた。 甲斐女流二段は常に変わらぬ飄々とした様子であった。 内心は違ったのかもしれないが。 この場は戸辺四段が仕切っていたが、対局者に先んじてどっと入ってきたカメラマン群に緊張したのか、いささか進行が澱みがちなのに、矢内女流名人と中村桃子女流2級が顔を見合わせて微笑むシーンもあった。 2人は余り長くいず、カメラマンもいなくなってしまったので、戸辺四段は終局が早かったため解説会が短いのを気にして、再び解説を初手から始めてくれたが、その後記者会見がある、とのことで、これもそんなに長くやらず。 賞品の抽選会を最後にやって、17時半前には終ったと思う。 賞品は本やせんす、カレンダーなど。 記者会見は、客も見学できる、とのことで、また30分ほどぶらぶらして、18:00過ぎ、三たび研修室へ。 前の方は記者席ということで、椅子の前にテーブルが置かれていた。 客は後ろの方の席に座る。 撮影、質問は禁止。 矢内女王・女流名人が正面の席に着く。 他には、脇に立会人の中村修九段。 甲斐女流二段はいなかった。 まず、週刊将棋編集長が代表質問。 次いで、各記者が自由に質問。 最後に、スポンサーから勝利者賞の授与。 この模様は、マイナビ女子オープンのHPで動画が公開されている。 http://shogi.weblogs.jp/mynavi/2008/05/post-1155.html 現在挑戦している女流王将戦に勝てば三冠となることについて聞かれて、矢内女王・女流名人は次のように答えた。 そうですね、できることならば三冠になってみたいですし、あのー、その結果…が、もしかしたらこの女流棋界を動かすようなことになるかもしれませんし、そういったものをまあ女流棋界の一ファンとしても見てみたいという気持ちもあるので、女流王将戦も今回のマイナビ女子オープンと同じように、全力を尽くしてがんばりたいと、強く思っています。 女流棋界を動かす、とは、長らく続いた時代を終わらせる矢内新時代の到来、ということであろうか? 記者会見で大団円。 わたしの有意義な休日も終った。 ゆっくり歩いて千駄ヶ谷駅に着いたのが、18:30ぐらいであった。 メニューページ「将棋その他ウォッチ2008年度」へ戻る |