ソラキチ・マツダも柔術家?


Physical Culture
  Wrestling

身体文化レスリング

Farmer Burns School
of Wrestling  
Omaha   

ファーマー・バーンズ レスリング教室 ネブラスカ州オマハ



What the Course of Lessons Contains

教科過程に何が在りや


SEVENTH―You are taught MANY GREAT TRICK HOLDS AND JIU JITSU. Farmer Burns defeated the Japanese Champion Jiu Jitsu wrestler, Sora Kichi, in straight falls, first 31 minutes, second 4 minutes, proving the superiority of American wrestling to the so-called Jap trick wrestling. You can learn these trick holds and they are exceedingly useful for self-protection, and for controlling men larger and stronger than yourself. With friends the holds must be used with much care.

第7―貴兄は多くの優れたトリック技と柔術を教わる。ファーマー・バーンズは日本王者の柔術家、ソラ・キチを、ストレート勝ちで破った。1本目は31分、2本目は4分でフォールし、所謂日本式トリック・レスリングに対する米国式レスリングの優越を証明した。貴兄は此れ等のトリック技を学ぶを得る。其れ等は護身の為、自身より大柄で強力な相手を支配する為により有用である。友人と共に其れ等の技を用いる際は大いに注意すべし。



 上記はバーンズのレスリング教室の広告パンフ(1920年頃発行の由)より。
 ソラ・キチ(Sora Kichi)は日本人プロレスラー第一号、ソラキチ・マツダ(松田幸次郎、四股名は荒竹寅吉)でしょう。つまり元相撲取りです
 それにも関わらず「柔術家」とされているのは、当時の米国においては相撲よりも柔術の方が有名で、ネーム・バリューがあったからなのでしょうか。

 ソラキチ・マツダ自身は、決して無名の選手ではありません。
 近代プロレス以前のグレコローマン世界王者、ウィリアム・マルドゥーンにソラキチ・マツダが挑戦した試合(1884.7.26、シカゴ)は、リング社刊の世界格闘史「ミロンからロンドスまで」で、かなり大きく扱われている由。試合結果はフリー・スタイルで引き分け、グレコローマンで負け、と大善戦でした。
 また、初代「絞め殺し」イワン・ルイス戦は「ポリス・ガゼット」紙の呼び物記事となり、「フェイマウス・ビリイ・ゴート・ラッシュ」(有名な羊の頭の狂い突き)がテリブルだった、と記録されているとのこと。頭突き(ぶちかまし?)が得意技だったようです。

出典:「日本プロレス30年史」日本テレビ
    「プロレス大研究」講談社      何れも田鶴浜弘さんの名著。

 その活躍は、母国日本でも報道されました。
 小田切毅一さんのサイト「スポーツ・レク文化資料情報館」
 http://www.eonet.ne.jp/~otagiri/index.html
の「書庫明治8」●938
 http://www.eonet.ne.jp/~otagiri/new_page_25.htm
で、当時の朝日新聞の記事を読むことができます。

追記
 東京横浜毎日新聞の記事もありました。
「書庫明治5」 ●1045 あるいは
http://www.eonet.ne.jp/~otagiri/new_page_19.htm
「書庫明治7」 ●578 をご覧下さい。(同じ記事ですが)
http://www.eonet.ne.jp/~otagiri/new_page_24.htm

 イワン・ルイスとの再戦(1886.2.15)を報じています。得意の絞め技(ストラングル・ホールド)を封印したルイスは、足関節技(レッグ・ロック)でソラキチを破りましたが、余りの残酷さ故か、客から大ブーイングを受けた由。

アメリカーナ ドットコム 「プロレス世界史年表」
http://members.jcom.home.ne.jp/americana/page/history/page02.html

によると、この試合は「ニューヨーク・タイムズ」紙の一面で報道されたそうです。


 「ニューヨーク・タイムズ」の記事は次の通りです。
http://query.nytimes.com/gst/abstract.html?res=9503E3D91F39E533A25755C1A9649C94679FD7CF

SORAKICHI’S LEG BROKEN.

  CHICAGO, Feb. 15―The catch-as-catchcan wrestling match to-night, under the management of Parson Davies, between Evan Lewis, of Madison, Wis., and Matsada Sorakichi, the Japanese, was decided in less than one minute. Scarcely had the wrestlers shaken hands when the two were rolling each other about on the floor, and Lewis, seizing Sorakichi’s left leg, bent it over his own by main strength, until the Jap’s limb was dislocated. Lewis was awarded the match, and was hissed and cursed without stint. Over 300 people were present.

ソラキチ脚を折られる

 シカゴより2月15日――キャッチ・アズ・キャッチ・キャン・レスリングの試合が今宵、デービス牧師管理の下、ウィスコンシン州マディソンのイワン・ルイスと、日本のマサダ(Matsada)・ソラキチとの間に行なわれ、1分弱で決着した。2人のレスラーは握手を交わすや床上を組んず解れつ、しかしてルイスは、ソラキチの左脚を掴み、自身の脚の上にて力の限り折り曲げて、遂に日本人の脚を脱臼せしめるに至った。ルイスは勝ちを宣せられるも、遠慮会釈無く野次られ罵られた。観衆は300人を超えた。



追記2016.3.21
 別ページ「1886.1.28、2.15 E・ルイス 対 松田そら吉」で、より詳しい記事を紹介しています。




 こちらのサイトからテキストを貰いました。

F Physical Culture Wrestling
http://www.sandowplus.co.uk/Competition/Burns/pcw/pcw01.htm
 This 30 page promotional leaflet was published around 1920 and is full of facts, photos and testimonials
 Contributed by Gordon Anderson