ロケ地訪問

・聖路加国際病院 明石町

「彼岸花」と言えば例の赤いヤカンと浪花千栄子と山本富士子の爆笑漫談トークが印象に残りますが、どうして どうして他にも美しい絵が登場します。

娘の縁談話しの為に上京した浪花千栄子が人間ドックの為入院する病院が、この美しい聖路加国際病院です。
1902年に創設されたキリスト教系の歴史のある病院です。

この美しい西洋建築物の登場は「麦秋」のニコライ堂と同じパターンで、協会の鐘の様な音と賛美歌によって見る者を一瞬して小津さん独特の高貴な世界へ導きます。
小津映画の音楽についてはあまり語られる事がありませんが、斉藤高順の名を出すまでもなく、映像と一体となったそれは小津さんの美意識の象徴として管理人は意識せずにはいられません。



・聖路加国際病院 (裏側)

浪花千栄子の娘、山本富士子が泊まっている旅館から見える風景がこの聖路加病院の裏側です。
旅館から有馬稲子と二人並んでこの病院を眺めます。
撮影ポイントを探して見ましたが、今はぎっしりと建物が立っていて、それを探るのは不可能でした。
裏通りからしか写真は撮りませんでしたが、映画の感じだともう少し離れた位置が映画の撮影ポイントだと思います。

しかし、ニコライ堂の次は聖路加病院か・・・・小津さんには美しい物を探し出す嗅覚の様なものが異常とも言える程発達しているんですね。
・日刊スポーツ本社と築地本願寺 築地

真ん中に見える白いビルが日刊スポーツビルです。
このビル越しに下の写真、築地本願寺を遠景に捉え、聖路加病院方面から撮影されたシ
ーンがあります。
浪花千栄子が看護婦と会話する後のシーンでしょうか・・・・。

築地本願寺がやたら美しく見えます。
それは一瞬のシーンで見逃しかねない様なものですが、この遠景に見える築地本願寺の不思議な造形美に小津が拘った事は言うまでもありません。
この拘りこそ小津芸術の真髄です。

でも、よく考えてみると病院から見える寺と言うのも何とも縁起が良くないですねぇ。 





そして、もう一つ小津映画の中にあって印象的に築地本願寺が登場する作品に「長屋紳士録」と言うものがあります。
飯田蝶子が家なき子を探し回る時に遠景に見える築地本願寺。
広大な焼け野原の中にポツンと立っているこのインド風の寺院と言うものは、なんとも言えない幻想的なシーンです。
最も、戦争・戦後を知らない管理人にとって幻想的なのであって、その時代を生きた小津にとっては幻想的どころか現実の何物でも無いのですが、管理人の世代から見るとあの焼け野原の東京と言うものは本当にリアリティーがありません。
この場所を訪れた半分の理由は「長屋紳士録」のあのロケ地を見たかったからなのですが・・・・・・当たり前ですが、その面影は欠片もありません。

しかし、戦争ってやつはやっぱ凄いです・・・・一瞬してすべてを破壊してしまうんですねぇ・・・管理人にとってはまさに白日夢です。


東京(日本)にもあんな時代があったんです、それもそんな昔じゃない・・・・すぐれた映画と言うものは後世に色々な事をおしえてくれます。