トップページへ戻る 第2回 診断学総論

第1回 臨床医学総論とは
 □ 臨床医学とは
 □ 臨床医学総論の内容


 1年間、臨床医学総論という科目を担当することになりました。よろしくお願いします。僕の学生時代を振り返ってみると、2年生という学年は地元の治療院を見学させてもらって、色々な治療法や考え方に触れた学年でした。鍼灸手技療法はご承知の通り、東洋医学に携わるといっても、様々な考え方があります。古典に従った考え方、中国伝統医学(中医学)的考え方、現代医学的な物理療法としての鍼灸手技療法。自分自身がどの立場で施術を行うか。僕が2年生の時は、その判断材料を得るために色々と見て回った記憶があります。みなさんも、1年生では鍼灸手技施術の基礎の基礎を学んできましたが、その知識や技術をどのように応用することが患者さんのQOLの向上に貢献できるのか。2年生ではそのようなことも考えながら取り組んで頂きたいと思います。


 □ 臨床医学とは


 「医学」とは、病気を治すための診断・治療についての学問です。直接、診断や治療に触れなくても、人体の構造と機能(解剖学・生理学)、病理学、薬理学も基礎医学として医学に含まれていましたよね。また、疾病の予防や健康の維持、健康・疾病と社会的要因との関係を研究する社会医学という領域もありました。衛生学や公衆衛生学、リハビリテーション医学が社会医学に含まれています。
 あぁ、東洋医学も医学ですね。医学という言葉は自然科学の学問領域を示す言葉という側面もありますが、東洋医学とか精神医学などのように、手法や対象の違いによって使い分けるために用いられています。

 では臨床医学とは何でしょうか。臨床医学というのは、病気の原因・症状・経過・予後・診断・治療を研究する実際的な学問領域を便宜的に総称したものです。そして、臨床医学には内科学や外科学、眼科学、産婦人科学、整形外科学、麻酔科学…等、様々な学問領域が含まれます。

 ここまでは1年生の「医療と社会」で学習したことのおさらいでした。

 

 □ 臨床医学総論の内容


 そのような臨床医学の総論というのは何なのでしょうか。言葉の意味からいえば臨床医学全体をまとめたもの。ということになります。2年生の科目には「臨床医学各論」というのがありますが、これらを掘り下げて学習していくと、もしかしたら医師になれるのではないか…。そう考える方もいるかと思いますが、そんなことはありませんのでご安心下さい。臨床医学の専門家は医師ですが、僕はあん摩マッサージ指圧師・はり師・きゅう師(以下、「あはき師」)です。臨床医学を行うための臨床医学を教えるには荷が重すぎますよね。では、あはき師で扱う臨床医学総論・各論とは何か。おそらく厳密な定義はないように思います。患者さんと接する上で、または医師とコミュニケーションをとるのに必要な臨床医学の知識が、その内容であると思います。

 具体的にはどのような内容が含まれているか見ていきましょう。
 まず、現代医学全般的に、どのような方法で患者さんの病態を捉えているのかについて学習していきます。タイトルとしては「診察法」ですね。現代医学における診察法、その主なものとして問診(医療面接)、視診、打診、聴診、触診、測定(身体計測など)、バイタルサイン、神経系の検査、運動機能検査、これらについて学んでいきます。臨床医学といっても、例えば問診(医療面接)については僕たち「あはき師」も同じ方法で行いますし、他にも臨床では欠かすことができない検査法も多数含まれます。この「診察法」は2学期の中間、だいたい10月頃までになると思います。
 次に、「臨床検査法」について学習します。ここでは一般検査や生化学検査について、尿・便・血液検査を中心に学んでいきます。また、生理学的検査や画像診断の概要についても触れていきたいと思います。2学期が終わるまでにここまで進みたいと思います。
 順調に話が進めば、3学期からは「治療法」に入れると思います。薬物療法、食事療法、理学療法、その他の治療法について学びます。
 最後に「臨床心理」ということで、患者の心理、カウンセリング、心理療法について学習していきます。
 さらに、途中で血圧や関節可動域の測定、徒手筋力検査、神経学的検査、整形外科的検査法についての実習を行います。

 これらを細かく学ぼうとすると、一つの項目だけで多くの時間を費やす必要があります。とても一年間で網羅できる内容ではありません。ですので、重要であるところはそれなりに、そうでないところもそれなりにといった具合で進めていきたいと思います。授業で取り扱うかそうでないかの判断基準は、まず教科書に書かれていることを基本方針とします。そして、国家試験の過去問や傾向を見ながら、また東洋療法研修試験財団(以下、「財団」)が編集している「国家試験出題基準」も参考にしたいと思います。また、医学の世界では一般になって、医師とコミュニケーションをとるのに知っておかなければならない内容や、最近のトピックス(疾患名や診断基準の変更等)については学んで頂きたいと思います。最後に鍼灸手技臨床上知っておかなければならない内容について、僕自身の臨床経験も取り入れながら触れていきたいと思います。

 1年間の大まかなスケジュールについてお話しました。授業中、説明が分かりにくかったり、解釈の確認をしたいとき等は、話をとめても構いませんのでその場で質問してください。先ほども申し上げましたが、臨床医学の専門家は医師ですので、質問にお答えできない場合もあろうかと思いますが、その場合は参考書や辞書等から分かる範囲でお答えできる部分についてお伝えします。

 最後に、国家試験のお話を少ししたいと思います。国家試験では、臨床医学総論の問題は全部で12問前後です。各論が20問前後ですので、臨床医学系は合わせて32問前後でしょうか。過去問を見てみると、第1回〜第6回くらいまでは教科書を覚えれば解けるようなかわいらしい問題がほとんどだったのですが、最近はそうでもないような印象を持ってます。教科書には載っていないキーワードや説明し切れていない部分についても出題されているように思います。教科書から話を広げられる部分についてはいいのですが、全く載っていない言葉とかがでてくると、とてもやっかいですよね。なんせ臨床医学の範囲は厖大で、どこから出てもおかしくないなんて話になれば、とても太刀打ちできそうにないんじゃないかと思います。ただ、全く予想できないかというと、そうでもないようです。例えば話題になったニュースや法律の改正・施行(感染症新法や介護保険法)などから関連したキーワードが出たりすることもあるような気がします。その辺りについては、僕の感覚でひょっとしたら出るかもしれないという事で授業の中に取り入れていきたいと思います。また、そうはいっても基本をおさえていれば6割以上は解ける問題となってますので、難しい問題への対策も大切ですが、まずは基本的な問題を間違えないようにするのが重要だと思います。


第1回 臨総医学総論とは  おわり


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