合コン・・・・「合同コンパ」の略
              友人の女性・男性関係を介して、見ず知らずの男女が出会い
              お互いの未来を賭けて命懸けで挑むこと。








・・・・・・命懸け?







                                                      ─── 『 額当て 』













看護婦のマキホちゃんに合コンに誘われた。



合コンねぇ・・・・・・。




別に恋人を探しているわけでもないし、なんだか面倒だなって思って一度は断った。
けれど人数が揃わないからとマキホちゃんに頼み込まれて渋々OKした。
よくよく聞いてみると、相手・男性組は火の国のとある病院のお医者さん達。
研修会で知り合った人達らしい。
旅行の途中で、木の葉の里に寄る予定とか。
マキホちゃんや他の子達の気合いの入れ方を見ていると、私だけ場違いな気がするんだけど・・・。
そんなやる気ゼロの私に、マキホちゃんは言う。

先生、そうやってのんびり考えてると、チャンス逃しますよ。
私達、24っていえば、もう若くないって自覚あります?!」
「チャンスって・・・。
マキホちゃんかわいいんだから、いくらでも出会いあるじゃない。
ここに勤務してる医療班にだって若い子はいるし。
あ、そうそう、暗部なんてエリートだし、木の葉の忍者は結構有望株いるわよ。」
「でも、いつどうなっちゃうかわからない忍者なんて嫌じゃないですか。
私達はもっと安心して一緒にいられる人がいいんですよね。
・・・って、ごめんなさい。任務中に大怪我した先生にこんなこと言うなんて・・・。」
「別にいいのよ、そう思うのもしょうがないものね。」


確かに、いつ死んでしまうかもわからない忍。
その愛する人を案じながら待つのは、本人以上につらいかもしれない。
一緒に戦うことができないなら、なおさら。
けれどその忍達がいるからこそ、この里が守られているのも事実。
この里を守るためだからこそ、忍達は命を懸けられる。
愛する人たちを守るために。














「さて、と・・・、今日はどうなさったんですか?」
は、目の前で俯いている患者に言った。
「ええ。実は胸が・・・胸が苦しいんです。」
確かに苦しそうだ。それは確かなのだが。
「はあ。そうですか。見たところ外傷はないみたいですが、いつからですか?
任務中のケガというわけではないようですね。」
「ええ、違います。違うんですっ。」
「ガイさん?」
胸を押さえて震える患者に、は心配そうに声をかける。
するとその男は、いきなりガバッとの両腕を押さえて訴えた。



「貴方なんです!さん!」



かなり濃ゆいその存在感に圧倒される
そう、この男はマイト・ガイ。
木の葉の気高き蒼い猛獣。いや、珍獣?
が木の葉の里に戻ってきてからというもの、勤務先であるこの病院に頻繁にやってくる。
目当てはもちろん治療・・・ではなくて
任務で里を離れる時以外、毎日といってもよいほど、現れる。
そして今日はとうとう「患者」としての前に座っていた。

「は?わ、私・・・ですか?」
よく訳が分からないと言う顔でが答えると、ガイはの両の手を握って目を輝かせた。

「そうです!貴方です!ボクの胸を焦がすのは!
ああ!貴方のことを考えると、ボクの胸は熱く燃え上がり、
貴方を見つめると、この瞳は焼きつけられるのです!!」
「ガ、ガイさん、あの───」
さん!ボクと一緒に永遠の愛を誓っていただけないでしょうかっ?!」


あまりに突然でしかも大嵐のような告白に衝撃を受けて、ただ呆然としているを助けるように、
看護婦のマキホがガイを引き剥がす。

「ちょっと、ガイさん!先生びっくりしてるじゃないですか!ダメですよ!襲っちゃ!」
「なっ、何を言うんです!人聞きの悪い!ボクはただ純粋に───」
「ここは病院です。」
「うっ、た、確かに。・・・申し訳ありません、さん。場所もわきまえず・・・。」

マキホとガイのやりとりに、ただただ硬直していたがすこしずつ我に返る。
先程のショックもかなり和らいでいるようだ。
がなんとか「もう大丈夫だから」と言うのを聞いて、マキホが「まったく、もう」とブツブツ言いながら
診察室から出ていった。

「ホントにすいません。つい興奮してしまって。けれど、さん、ボクの気持ちは決して──」
「ガイさん。」
「ハイ!」
「ありがとうございます」
さん!」
「でも、ごめんなさい」
「・・・・・・」
「ガイさんの気持ち、うれしいです。
いつもガイさんは私のこと、まっすぐに見てくれていました。
私が忍として生きていたときも、忍として使い物にならなくなったときも、
いつも変わらず私を女性として見てくれていました。
手のひら返すように周りの態度が変わっても、あなたは変わらずにいてくれた。
あの頃、それに少し救われていたような気がします。でも・・・。」

静かに話すの言葉に、勢いづいていたガイの脳裏にも傷ついた姿のが蘇る。
一命をとりとめても、忍者としての生きる道を失った、その絶望感。
自分の心を奪った、まるで花がほころぶような笑顔を忘れてしまった彼女。
それでも必至にリハビリに取り組む姿。
新しい人生を選んだ彼女に、必要とはされなかった自分。
消えるように静かに里を去ったその人を忘れることはできなかった。
そして、彼女が再び里に帰ってきたと知った時の喜びは、誰にも負けないと思った。
たとえ、それがカカシであろうとも・・・。


さん」
「はい。」
「これだけは忘れないでください。」
申し訳なさそうに俯いていたが顔を上げるのを待って、ガイは続けた。
「ボクはいつでも貴方のことを待っています。
この気持ちは誰にも負けないつもりです。」
「ガイさん」
キマった・・・と、気高き蒼い猛獣が、そう思った瞬間だった。


先生、週末の合コンのことなんですけど───って、げっ!
まだいたの?!マイト・ガイ!!」

とっくに帰ったと思っていた男を見て、マキホがお世辞にも品がよろしいとは言えないような悪態をつく。
そんなマキホを無視して、ガイはに噛みつくように叫ぶ。
「なっっ!なんですと!さん、それは本当ですか?!
合コンなんて!合コンだなんて!ボクの気持ちを知ってて、他の男を探すなんて!
ボクだってこれでも木の葉の上忍です!何が足りないというのです?!」
「え・・・、そんな、言われても──」
「あ・ん・た・に・は、関係ないでしょ〜?!さ〜、帰った帰った!
だいたいねー、病気でも無いくせに仮病なんて使って病院にくるなっつーの!」
容赦なくマキホに追い払われるガイを少し気の毒に思いながらも、
はホッと一息ついた。



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