養源院の狛犬 色づき始めた紅葉 宗達の杉戸の象
今盛りの金木犀 智積院・利休好みの庭
ひとり一句
ちょうどいい位に庭をゆるませる 内田真理子
古井戸のポンプ旧かな汲みあげる 八上 桐子
済んだこと忘れたころよさるすべり 松田 俊彦
石ひとつなだめきれずにいる小雨 北村 幸子
宗達の噛みつきそうな波頭 柴本ばっは
秋草の乱れには鍵が要るでしょう 辻 嬉久子
白萩のうしろに間違えて並ぶ 畑山 美幸
ストールをくるっと巻いてある京都 峯 裕見子
キュッキュッと昔をほどく音がする 森田 律子
さらさらと少し触れ合う少し離れる 今井 和子
秋色に染まる頃にはおりません 笠嶋恵美子
調味料なんかいらない血天井 小林満寿夫
ゆるい坂ゆるく男を赦せそう 前田芙巳代
獅子は八方にらみ裸電球ゆらいでいない 墨 作二郎
一本の傘の内側 傘の外側 徳永 政二
聞いてません黙って庭を見ています 藤井 孝作
ひたすらに闇の出口を探ってる 八木 侑子
イマジンが聴こえてる墨絵の大桜 岩根 彰子
僧侶の列しずしずと雨はしとしと 北原 照子
秋なのにしみの消えない白い壁 久恒 邦子
戦国の世の無常が天井に 松岡 篤
血の廊下まっ逆さまに見せられる 本多 洋子
2011年9月 更新
第百八十回
点鐘散歩会
堺 山口家住宅から妙国寺へ
今回は大阪府の南に位置する堺市を訪れる。先ずは天王寺から阪堺電車に乗って上町台地を堺へ向かう。この電車は一両で走る「ちんちん電車」。利用者が少なくなってその存続が危ぶまれたが、文化的歴史的意義から、地元の強い要望で、現在も懐かしい姿を見せてくれている。ちんちん電車が走るのは大阪でもここだけ。沿線の綾之町駅で下車。徒歩三分ほどで山口家住宅につく。ここは、江戸時代初期の数少ない町家のひとつ。堺の町家歴史館として国の重要文化財にも指定されている。
中に入ると、広い土間に面して畳の部屋が三室も並び、土間には太い梁の壮大な空間がある。
山口家から妙国寺に至るまでの徒歩二十分程の間には、十指に余る寺々が並ぶいわゆる寺町で、与謝野晶子にゆかりの覚応寺・本願寺堺別院などに立ち寄りながら妙国寺に着く。
ここは蘇鉄の寺とも呼ばれ、樹齢千年あまりの蘇鉄が堂々と繁っている。信長がこの蘇鉄を、安土城に移植してみたが、日夜妙国寺に帰ろうと泣いたので怒ってその蘇鉄を切りつけてしまったという。蘇鉄はやむなく妙国寺に返され、この地で蘇生を果し、今に至ったと伝えられている。
慶応四年にはここで堺事件が起きたのは有名。フランス軍と土佐藩士が衝突した例の殺傷事件である。土佐藩士十一名がここで切腹を果している。
家康や秀吉を慰めたという庭園をじっくり見ながら句作に励んだ。
ちんちん電車 町家の表通り 説明板
覚応寺 与謝野晶子の歌碑 妙国寺の蘇鉄
ひとり一句
家康と秀吉がいる蒸し暑さ 峯 裕見子
掃除きらい料理きらいこんな大きい家きらい 柴本ばっは
ブランコになるか木霊に戻るか 梁 清水すみれ
土間抜けて裏に出るしかない煙 中野 六助
さむらいの墓のあたりで汗を拭く 墨 作二郎
ここからがいいとみんなになっている 徳永 政二
駅の名をひとつ覚えて帰ります 笠嶋恵美子
ちんちん電車どぜうも金魚も乗ってくる 本多 洋子
雨雲はムーンウォークでやってきた 森田 律子
空洞に恨み節など詰めておく 岩崎千佐子
くけ糸の始末を誰に頼みましょう 内田真理子
シュロは緑でお寺は赤で 北川アキラ
天王寺のいっしょくたにまみれている 畑山 美幸
踏み石を外して海へ出てみよう 藤井 孝作
もっくりと太陽抱いている蘇鉄 八木 侑子
語り部の貌して壷が置いてある 神野 節子
よそものですごじゃごじゃと阪堺電車 北原 照子
艱難に耐えてそてつの長い旅 瀬渡 良子
2011年8月 更新
第百七十九回
点鐘散歩会
京都市美術館
フェルメールからの手紙展
門外不出といわれるアムステルダム国立美術館所蔵の「手紙を読む青衣の女」が修復後、初公開されて日本に上陸。今京都市美術館で展示されている。今回はそれと「手紙を書くおんな」と「手紙を書く女と召使」の3点が、フェルメール珠玉の3作品と名打って一堂に会していた。
今回の展示は17世紀のオランダの風俗画の中で、特に手紙によるコミュニケーションを中心に取り上げ、さまざまな場面でのコミュニケーションのあり方を提示したテーマ展になっている。
フェルメールの作品は3点のみであったが、当時のオランダの風俗画を様々なコミュニケーションのあり方という観点から四章に分類して興味深く展示されていた。
第一章では、人々のやりとり・・しぐさ、視線、表情。
第二章では、家族の絆、家族の空間。
第三章では、職業上・学術的なコミュニケーション。
第四章では、手紙を通したコミュニケーション。
で、フェルメールはこの第四章に分類されていたことになる。
ひとり一句
風の吹く窓辺で「ノン」という手紙 峯 裕見子
返信にこちらの雲を送ります 清水すみれ
スカートの中は壊れている電車 小林満寿夫
天窓からそっと帰ってゆきました 太田のり子
すこしずつ青で黄色でオランダで 墨 作二郎
笑うので少し揺らしてくれますか 徳永 政二
物語は終った青を脱ぎなさい 中野 六助
ゆっくりと犬が動けばフェルメール 石田 柊馬
眠る兵士 女はあきらめが早い 下谷 憲子
押しピンの数を数えているホテル 辻 嬉久子
光から影引いている許される 中村せつこ
絵の中へ手紙の中へ戻らねば 西田 雅子
終焉はラピスラズリの青になる 本多 洋子
重いことはみんな額縁の裏側 森田 律子
真ん中のビオラがどうも牽制球 岩根 彰子
青衣の女はコレステロールの薬も飲む 畑山 美幸
体臭はレモン 息遣いは山椒 久恒 邦子
あの頃と同じ麦わら帽子です 平井 玲子
羽根ペンを削るあなたを刺すために 谷口 文
落書きをせずにしっかり書きなさい 八木 侑子
いまおでこからことば引き出しているの 山田ゆみ葉
はじめましてはるかとおいくにの青 道家えい子
顔のない男が立っている真昼 笠嶋恵美子
スポンジに青が浸透して行くような 神野 節子
レターラックからメールでお返事 北原 照子
ウルトラマンブルー海の青か空なのか 山下怜依子
抽斗に溜まり始めた愛の色 瀬渡 良子
2011年7月 更新
第百七十八回
点鐘散歩会
史跡 今城塚古墳・古代歴史館
今城塚古墳(いましろづかこふん)は大阪府高槻市郡家新町(ぐんげしんまち)にある。6
世紀前半では最大級の前方後円墳。学術的には継体天皇の真の陵墓といわれている。西向きの墳丘の周囲には二重の濠がめぐり、総長約350m・総幅約340mもあり、日本最大の家形埴輪や精緻な武人埴輪が発見されている。中でも日本最大級の埴輪祭祀場や墳丘内石積み、石室基盤工など当時としては最先端の土木技術が発見されている。
古代歴史観では三島古墳群の概要や古墳作りの工夫を、ジオラマ模型や映像を通じて解説されている。広大な今城公園内では祭祀に使われた様々なハニワ・(家・人物・動物)などが再現され並べられていた。
記念館外観 火の鳥モニュメント 入場券