ひとり一句
なんだか楽しいあの世との境目 岩根 彰子
母という生あったかい飴である 北村 幸子
私へ鳴る鐘だと過ぎてから気づく 峯 裕見子
三月のひとつひとつを結んで遊ぶ 徳永 政二
どこまでが境内どこからが時代 清水すみれ
五条坂の春は豊次の下駄の音 墨 作二郎
朱の堂の朱の企みが見抜けない 前田芙巳代
片方の耳落としとくこの辻で 辻 嬉久子
非常口か六道の辻かを確かめる 中野 六助
三番目の仏は喉に詰りそう 本多 洋子
線香の三本寄せてある煙 森田 律子
錆びついた信心少しだけこする 安土 理恵
六波羅のフレアスカートひるがえす 岩田多佳子
水滴のつつつつつつつ春のうつ 八上 桐子
春がすみ歴史の臍でありし地の 小川 佳恵
今空いてます冥土への通い井戸 八木 侑子
息をするたびに出てくる仏様 笠嶋恵美子
なで牛のなでたい左足みあたらぬ 北原 照子
千年も経つと概ね黒くなる 畑山 美幸
2012年 2月 更新
第百八十五回
点鐘散歩会
草間彌生展
永遠の永遠の永遠
於・国立国際美術館
世界的な現代美術家として活躍する草間彌生の最新の創作活動を紹介する展覧会が今大阪中之島の国立国際美術館にて開催されている。
草間彌生は1929年、松本市生まれ。水玉や網目模様をモチーフに半世紀以上に渡り作品を作り続けて来た。57年には渡米し、巨大な平面作品や鏡や電飾を使った環境彫刻も発表、以後ボディペインティングなど多数のハプニングで話題を呼んだ。73年帰国後は2001年には朝日賞を受賞、2009年には文化功労賞を受けている。
2009年以後も創作意欲はますます盛んで、まったく新しい絵画の仕事に取り組み、人間の内面世界を抉り出す様々な作品群を発表している。今回は「永遠の永遠の永遠」というサブタイトルのもと、色彩豊かな50点からなる連作やモノクロの線画作品など、無限に湧き出る連鎖的なイメージをこれでもかこれでもかと吐き出すように製作している。どでんと置かれたかぼちゃの彫刻にもドギモを抜かれる思いがする。
草間彌生という特出した才能をもった芸術家の、飽くこと無きを最先端の兆戦を心ゆくまで鑑賞することが出来た。
ひとり一句
水玉がこんなに尖っていたなんて 北村 幸子
疑問符を持たないジュラ紀の水玉 清水すみれ
水玉がいやになったりしませんか 徳永 政二
いやだ!と言うたび水玉が増える 峯 裕見子
たぶんそう死は一本の黒い線 八上 桐子
繊毛は正常でした内視鏡 河村 啓子
思い出をお持ち下さい無料です 中野 六助
水の出るところに唇を描く 笠嶋恵美子
たましいの切断面を見せられる 内田真理子
どろどろと吐き尽しても尽しても 太田のり子
裏側もきっと大きな水たまり 佐藤美はる
魚の目の眼帯はずすアルバイト 久恒 邦子
天地無用です 草間彌生です 本多 洋子
失ったワタシの赤がここにある 安土 理恵
樹木希林岡本太郎に草間彌生 中村せつ子
赤色を足せば重心ずれてくる 小川 佳恵
春も夏も秋も冬も反逆者 森田 律子
あの丸に乗れば極楽いけるかな 桜 風子
祈りとは動かない雲動く雲 墨 作二郎
千の目で探していますわたくしを 瀬渡 良子
ハートをくすぐる みじんこもゴキブリも 山本 早苗
草間彌生であり続けるチューリップ 藤井 孝作
神に兆戦する水玉のオーラ 八木 侑子
孤独です頭がぐるぐる真っ白に 北原 照子
キャンバスを埋める不安を埋めてゆく 中岡千代美
2012年1月 更新
第百八十四回
点鐘散歩会
西宮十日えびす
西宮えびす神社の創建は遠く平安時代ともいわれている。鎌倉時代には既に十日えびすの祭典が厳粛に行なわれていたらしい。以後七福神信仰によってえびす様が福の神の代表となり、ここで広まったえびす舞は、文楽や浄瑠璃の源流になったと云われている。江戸時代徳川幕府からは御神像札の版権が与えられ、福の神えびすが商売繁盛の神として信仰されるようになった。
国宝の三連春日造りの本殿は戦災で焼けたが昭和36年もとのままに復元された。大練塀と表大門も国の重要文化財で同じく復元されている。
テレビでよく放映される開門神事は、昭和15年から、何事も一番のりされた参拝者を称えようと、先着上位3名を福男として認定するようになった。昭和45年からは大マグロの奉納などの行事も加わって十日えびすは三日間(9・10・11)で百万人を超える参拝者で賑わう。
ひとり一句
南天の箸でつまんでみる日本 北村 幸子
小さい手を引いてる小さいお姉ちゃん 墨 作二郎
途中から妙にかさばる縁起物 中野 六助
ものがたりとして横たえるからだ 八上 桐子
XもYもZも神の意志 森田 律子
クリムトと張り合うマグロのうろこ 八木 侑子
食べられて人間になると言う鮪 安土 理恵
えびす様も自然解凍されている 大橋あけみ
空晴れて神は大きくなっている 徳永 政二
ここは出口です神様は照れ屋 前田芙巳代
えべっさんでポックリ祈願しています 田中 女里
大凶の身替りになる大欅 笠嶋恵美子
ありがたい日は今日らしい混んでいる 弘津秋の子
神笑う 椿の赤がふくらんで 本多 洋子
帰ってますか行方不明になった福 北川アキラ
縄電車はぐれないよう右左 桜 風子
鯛焼きの空にタイ焼きが浮かぶ 辻 嬉久子
神さまにそそうなきよう深呼吸 道家えい子
イケメンの兄ちゃん
手があついから焼きそば買って 北原 照子
外に出て川柳