オーディオ自作の意義

自作する意義は今と昔では違う。 昔の理由は物が普及していない、即ち高価なのでテレビやオープンデッキまでキットがあり自作したそうだ。 今は 1)他人の持っていないものを作りたい 2)メーカーの製品に不満がある 3)作りたいから作る[最後のこれが本当の理由か?病膏肓に入る。] 

実質、アンプは高価な測定器や製造設備を持つメーカーに勝てるわけがないし、自分で部品を集めると、量産効果がないのでかえって高くつく。 スペックの面ではアンプ自作は必然性がないが、1)狙ったものが出来る 2)不要な機能を省略できる 3)回路や用途が分かっているので、作りかえても無駄にならない。 自作にハマルよりはソフトにお金を使った方が手っ取り早いかもしれないが、自作で得た知識(失敗も含めて)は決して無駄にならないと思う。 少なくとも、自作は改造自由だし、不満の原因が分かるので、高いメーカー製品を次々買い換えることはなくなる。

スピーカーは箱さえしっかりしたものを持っていれば、バッフル交換でユニットは取り替えられるので、末永く楽しめる。Onkyo FR-12A, Diatone P-610, Altec 405A、Phillips AD5061/M8, Fostex FE103, Coral 6F-60/4A-60(FE103対抗品)/Flat-5, LCC LC-12S 等 口径10〜16cmのフルレンジを試してきた。 現在は20cm Woofer(エッジは鹿皮に交換)をドローンコーンとして使い、AlpineのDDDS5IIをマウントしている。 音の密度の面では小口径のフルレンジが一番だと思う。 中でもLC-12Sは今は数少ないfolded edgeで音離れが良くボーカルが生生しいー大きいスピーカでは再現しにくい音だ。 小口径ほど音の鮮度を感じるのは貧乏人の僻目[耳]か? スピーカーを裸で鳴らした音は低音は出ないが澄んだ音がする。共振反射面を増やすキャビネットも本当はない方が良い? 7cmのユニットを椅子の背もたれに立てたイヤーホーン(後面開放型)を作ったら・・・実験したいことは山ほどある。
追記:
DDDS5IIのゴムエッジが崩壊しました。騙し騙しGクリヤーボンドで補修をしてきましたが限界です。20年ぶりにユニットを探しましたがFostex FF165WKの一択でした。今では箱を自作する人が少なく専用箱キットを買う人が多いようです。20年同じスピーカーを使う人も少ないようで、ゴムより劣化の早いウレタンエッジが傷む前にスピーカーシステムを買い換えるのが当たり前になったようです。箱鳴りの豊かなメーカー製ブックシェルフ型スピーカーを択ぶか、もしくはフロア型・トールボーイ型のスピーカーを択ぶのか、現在の市場を見渡してみましたが私にはこれというものが見当たりませんでした。40年以上昔スキャンダイナ(Dynaco A10と同等品)が私の初めてのスピーカーでしたが、いやな刺激的な音がしないのが取柄でした(今でもスピーカーターミナルだけが形見で残っていますがバナナプラグ対応なんですねー70年代当時はバナナプラグなんて知りませんでした)。以後2ウェイのシステムを自分で組んでみましたが、ネットワークを通した音が苦手で結局フルレンジに落ち着きました。ネットワークを通した方が歪を避けられるはずなのですが。。。distortion eater:特定の歪が好きな人になっているのかもしれませんね。体力と気力がある限りクラフトは止められない。私は2台のスピーカを内向きに設置して視聴位置をほぼ正三角形にし、スピーカの軸上で聞くのが常でしたがFF165WKに交換したところ4kHzあたりの高音が耳につきます。リッジドームのせいなのか首を振ると位相が違って変に聞こえます。そこで一般のようにスピーカーを正面向き(それぞれの耳に対して13度程度)にしたところ、定位が改善し高音のピークも取れて聞きやすくなりました。メタルドームにダンプ剤を塗ったりもしました。それでも一年間はダンパーが固く低音が詰まり音が前に出ず、ユニットと箱が同時に振動し床に伝わり難儀しました。スピーカスタンドを新調したりハネナイト・ゴムを挟んだりいろいろやっているうちに2年目に入りやっと音離れが良くなり低音も前に出て箱や床に振動が逃げる事が少なくなりました。高能率のモニター系のスピーカを買って直ぐは音が悪いのが当たり前で、ダンパーがこなれるまでには相当の時間がかかるようです。「だんだん良くなる法華の太鼓」は環境問題がうるさい現在では死語になっていますが、この先どんな音になるか楽しみです。しかし折々違う音のうち「どれが本当・本来の音」なのか分からなくなります。楽しめる・感動した音が「その時点での良い音」というだけのことか。半導体アンプのスイッチを入れてから最初の30分はモヤついて音が伸びないように感じられるのは電源コンデンサー周辺の温度によるものと思われるが、それなら夏の方が寒い冬より早く良い音に聞こえるはずですね。真空管アンプならこの慣らし運転が短くて済む?

山の道具も昔は高かった。最近は壊れたら補修せず買い直すのが普通になったらしい。フランス製Le Grand Tetrasの赤い1L水筒は中心が窪んでいて持ちやすく転がりにくいので40年近く愛用していたがゴムパッキングが劣化し水漏れしはじめた。交換パッキングを探したら本体も既に入手不能になっているらしい。そういえば最近使っている登山者を見ない。パッキンはカクダイの9192セットに含まれる外形30o内径20.5o厚さ3mmで代用出来ることをネットで知った(有難し)。私は愛用のものを長く使う(新しいものをなるだけ買わない)貧乏性です。若い時は数種類水筒を集めたが残ったのはLe Grand Tetrasです。オーディオ製品(特にカートリッジ)も同様で十数種類未だ手元にありますが常用しているのは限られてきます。若いうちはあれもこれもと目移りし発展的(散漫)ということでしょうか?老年になると自分の趣味の方向性に気づき、限られた物に集約される(固執)という事なのでしょうか?ワンデイハイク用は500mlペットボトルで十分で1L水筒は一泊用ですね。利便性とエコどちらが正義かは永遠の課題です(笑。それぞれの正義(身勝手な理由)がある。ミッドソールが縫い糸で括っている重い革製の登山靴は長期保存に対しても耐久性があるが、近年の軽量靴は長期保存により接着部やプラ部が劣化するので出来立てを直ぐ使うのが良いようです。頑丈と軽量のどちらを選ぶかにもそれぞれの正義がある。

テレビを楽しむのに今、テレビの仕組みに興味を持つ人はいないだろうが、オーディオを楽しむのに何らかの自作は必要ではないだろうか? もちろん純粋に音楽を聴けるのなら装置は何でも良いと思うのだが。


趣味としてのオーディオ機器

VintageかBrandかSpecか?

カメラ蒐集とよく似ている。 木製組立暗箱であるClassic Camera, 八ッセル・ブラッドのようなブランド物、Nikon/Canon/Minolta等の現代カメラ - どれも写る。 カメラ機構[自動化]より実はフィルムの進歩の方がずっと大きい(感度だけでも100倍以上)。 オーディオも機器よりメディアの方が進んでいるのではなかろうか?

特定のフォーマット(SP/LP/CDなど)に拘るのはmonomania(偏執狂)そのもの。

製品を愛する「蒐集」は物フェチである。 自作を愛するのは自己愛である!?


感慨

自分を振り返えってみても、ずいぶん無駄使いや寄り道をしたものだと思う。
ナス管DA30シングルの[重さがモンスター!]アンプ/マニア気取りの2トラ38のオープンデッキ/アンプ調整中に昇天させたスピーカー達/記事を見ては作りたくなる病。

もしこれらの勉強代を返してもらって、新しくオーディオを始められたら?と馬鹿なことを考えるときがある。 でも、結果は振り返ってみればやはり同じことになりそうだ。

オーディオをやらなければ家が建つ、といった人がある。「音の夕映え」を書いた池田圭氏などは身代を傾けてオーディオを見届けた。

最近は機器に拘らず、音楽を楽しめる幸せを感じている(聴けるだけで幸せな音楽がある)。


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