デンオンDDモータDP-2000の測定

Motorゴロ(Rumble)はどの程度あるのか?

使い続けて5年ほどした頃からゴロが聞こえるようになりました(当時はまだスピンドル上部は切り取っていなかった)。スピンドル上部を切り取ってからゴロは少し改善されましたが、今でも内周側でゴロが気になることがあります。ただこのゴロ音はレコードによって聞こえ方が違うので、レコード(特に古いモノラル録音)にエコーのようなゴロが含まれているのではないかと疑っています。その証拠にエンドグルーブになるとぴたりと止む事が多いのです。試しにLoop/Plain Grooveのオッシロ波形を見てみましたが誘導雑音成分しか見えませんでした。

Magnet Head出力波形

この機種のサービスマニュアルが手に入らないのと全くのトウシロ(素人)なので解析は出来ませんが、調整の目安にはなると思い出力波形を観察してみました。後記:最近Vinyl Engineにてサービスマニュアルが閲覧可能になりました。それによるとモータ制御部はDP-3000譲り[control the motor by means of modulating the amplitude of commercial power source AC75V=即ちAM制御]で水晶発振回路とストロボ回路は前年(1976年)のDP-6000譲り。DP-6000と同じくDP-2000も約DC5V brake方式を採用しているがブレーキコントロール回路がDP-2000ではDP-6000と異なる。同時期に日本コロムビアは"Braking Apparatus"の表題で米国特許4110670(1978)を得ています。DP-2000はDP-6000の廉価版という位置付けのようです。DP-6000はPMW(パルス幅変調)制御でプラッターも1.8kgsとデンオンとしては異例の重さ。1978年には2方向制御+2重ターンテーブルの嚆矢DP-80が発売されました。世に知られた「名機」の間に挟まってDP-2000は目立たない存在。

このモータはターンテーブル周辺に磁化されたラインを配しそれを1個のMagnet Headでピックアップしてコントロールするようになっています。以下はそこからピックアップした波形。出力周波数を見ると一周に1200サイクル程度の磁気パターンを記録しているようです。100/3回転と45回転では当然出力周波数と電圧(約2mVと2.7mV)も違っています。DENONは独自の方法を開発し、記録されたパルス幅自体の変動を0.01%以下にできたと主張しています。ピックアップ周波数の変動を観測するDenon独自のワウフラ測定法もあったようです。電圧が数ミリボルトなのでミリバルのモニター出力(フルスケール1V)を通して観測しました。周波数に比べ出力電圧がかなり変動するのは経年変化(磁力減少)でしょうか?磁気ヘッドのギャップは調整できますが壊す恐れがあるので、クリティカルに追い込んではいません。試しに1mmほど離してみたらトップスピードで回り始めてあせりました(冷や汗タラーリ)。DP-2000のサービスマニュアルには記述が無いがDP-6000では0.2-0.25mmを推奨しており、DP-47Fのサービスマニュアルでは最適ギャップは0.18mmとされています。メモ用紙1〜2枚分の厚さで調整するのが良いようです(それとテープデッキの場合と同様にヘッドが磁気バンドに対して直角になっていることが重要です)。DP-2000は双方向サーボではないのでMagnet Headは1ch(モノラル)です。80年代以降のDP-47Fは2chの双方向サーボとのことです(回転の行き過ぎを抑えるメリットがあるのでしょうか?)。余談:このようなモータ制御はDenonとSonyのDDに使われており、そのルーツとなる直接の特許は不明ですが、初期のコンピュター周辺機器から派生した技術のように思われます。例えば米国特許2932778(1960):Frequency Comparison Rate Servoがイメージ的に近いと思います。現在のハードディスクと違いMagnetic Drumは回転する円筒の周辺に記録するタイプで、ヘッド固定式でアクセスが早かったので磁気ドラムメモリとよばれています(その具体的な外観は米国特許2797378に示されています)。3110853(1963)ではdriven tooth memberとmagnetic pick-upを組み合わせcrystal oscillatorで発生する周波数との差で制御する方法が示されています。別な方式としてはスリット穴の円盤と光源とphoto-cellを組み合わせた制御方式もほぼ同時期に誕生しています(3154730など)。

100/3回転の0.5mSec/Div45回転の0.5mSec/Div

ワウ・フラッター

このターンテーブルで感じた疑問:<不思議なのは極端にこの電圧を上げると同期はするが再生音の表情が平面的になる。サーボの掛けすぎまたはハイトルクは忙しない演奏に聴こえる。DDの音がそれもクォーツロックが掛かった音がいやだと言う人はこのオーバーサーボが気に掛かる人なのだろうか?ストロボを見る限りでは変化が無いのに実際には揺らいでいるのだろうか-そして適度な揺らぎがいい音に聞こえるのか?> 特にハイトルクだとリズムセクションで滑らかさに掛けた演奏に聞こえます。この原因が<トルク・サーボタイミングと慣性のアンバランス>にあるのではと思い、ワウフラッターとの関係を調べることにしました。

MJのテストレコード(3.15kHz)をぞんざいにセンターリングして再生したら周波数計では3145から3168Hzまで揺れた(偏芯量逆算推定値0.3mm)。ワウを0.1%以内に収めるには偏心は外周で0.15mm、内周では0.06mm以下にしなければならない。レコードの中心孔直径7.24mmとしてターンテーブル・スピンドル直径を最大7.2mmとすれば遊びは0.02mm(多くのレコードできつすぎる), 最小7.13mmとすれば遊びは0.055mm。 MJのレコードはデジタル音源(44100に対してサンプル数14の)3.15kHzを記録しているらしいが、半径約120−115mmの所に記録されているので0.1%以下のワウ・データを得るには偏心許容量は0.12−0.115mm以下にしなければならない。穴径の許容量+0.09-0mm、溝自身の偏心許容量0.2mmを考慮すると測定だけでなく普段のワウフラッター(偏心量0.25mmの時)は外周で0.2%、内周で0.4%になることもあるが、聴感補正後(0.55Hzでは約-10dB)は品質の良い(穴がずれていない)レコードでは問題は起こらないのか? IEC98−1958以来、溝の偏心許容量0.2mmはそのことを配慮して決められているようです(聴感補正後ワウは全音溝半径にわたってあわよくば±0.1%以下に出来る)。

普通ワウフラッター計の周波数カウンターは中心周波数を示すようです。もっとgate timeの短い周波数計では上記のようにその時々の周波数ゆれを示します。

ワウフラッター計

古い(1979年製)リーダーのワウフラッター計LFM-39Aが手に入りました。これはデジタル周波数カウンターの代わりにアナログのDrift Meterが付いていて、長い周期のドリフトをモニターするようになっていました。20年物のカセットテープデッキを測定してみると、ワウよりフラッター分が大半でした。下の画像はDIN WTD0.1%です(W&F UNWEIGHTEDは0.2%以内)。JISでは当然少なめに表示されました。70年代当時の旧CCIRは3kHzで表示はDINと同じくピーク値なのでJISとCCIRポジションでJISとDINの比較が出来ます(後にCCIRは3.15kHzのDIN/IECのグループに帰属したようです)。リーダーのワウフラッター計LFM-39AのマニュアルによるとこのアナログメータでのDIN INDICATIONは本当の尖頭値ではなくquasi-peakだとしている。JIS INDICATION=RMSの1.4倍に指針を振っているだけで、正弦波とは程遠いワウフラッター波形の本当のピーク値はアナログ指針では表示できない。しかも旧DINの測定範囲は0.3-200Hzではなく0.3-300Hzだったらしい(B&Kのメータで-3dB落ちの聴感補正なしリニア評価部は0.3-315Hz)。この機種にはないNABポジションは平均値を示すのでRMSのJISよりさらに低い値になる(正弦波の場合、尖頭値peak100%とすると平均値mean63.6%、実効値rms70.7%)。B&KのLadegaard(1977)の測定系でもアナログメータType 6203が使われており、RMSx1.4142をピークとして表示していると思われる。<RMSによるワウフラッター表示は聴感との関係が疎遠で本来+/-peak値で表示すべき>としているが、Ladegaardが示したピーク値は+側と−側が同じになっているのでquasi-peak=RMSx1.4142に他ならない。ピークホールドfunctionなどを装備したWow&Flutter計も実際にあるようですが規格でそれが要求されていたかは不確かです:ワウフラ測定についてのWIKIページ(http://en.wikipedia.org/wiki/Wow_and_flutter_measurement)では"IEC 386 DIN45507 BS4847 CCIR 409-3...all specify the weighting filter together with a special slow-quasi-peak full-wave rectifier designed to register any brief speed excursions"としています。 IEC 386=現在のコード60386-1972(1988年amendment-1発行)はDIN45545-1966(テストレコード)やDIN45507(ワウ測定機器)を踏襲している。IEC60386の草稿は1969年ドイツのNational Commiteeによって準備された物が基になっていて、ワウフラ測定のweighted peak techniqueについての勧告でした。AmpexのJ.Mcknightは1972年IEEEで次のように報告しています:
The old IEEE/ANSI flutter measurement standard did not predict subjective flutter; it also failed to specify several important characteristics of the meter. Comerci proposed a "flutter index" method but it was never adopted. Results of several workers were incorporated in 1962 in a German Standard (DIN) Weighted Peak Flutter measurement. The NAB flutter measurement of 1965 incorporates the frequency weighting of the DIN Standard, and the volume indicator of Comerci. CCIR adopted the DIN method in 1966. Experiments in the U.S.A. comparing the DIN and NAB methods showed the DIN method to be more satisfactory, and this method is incorporated in the new IEEE Standard 193-1971, based on an IEC draft. Circuits to achieve the desired time and frequency responses are given, as well as suppliers of commercial flutter meters and test records to the new standard.

Band-pass Filters : Unweighted
Standard Hz  Value W&F range HPF LPF
NAB 3k Mean 0.5-200Hz 0.5Hz 6dB/Oct 200Hz-15dB/Oct
JIS 3k RMS 0.5-200Hz 0.5Hz 6dB/Oct 200Hz-15dB/Oct
CCIR 3k (3.15kHz) Peak 0.3-200Hz 0.3Hz 6dB/Oct 200Hz-15dB/Oct
DIN 3.15k Peak 0.3-300Hz(0.3-200Hz) 0.3Hz 6dB/Oct 200Hz-15dB/Oct
IEC 3.15k Peak 0.3-200Hz 0.3Hz 6dB/Oct 200Hz-15dB/Oct

Wow Flutter & Drift Meter: LEADER LFM-39A

テープデッキのワウフラッター

1981年のPIONEER CASSETTE DECK CT-970で3kHzを録音して再生時のJISポジションのオシロ出力波形をefu氏のWaveSpectraで成分を見ると1-300Hz全域に渡ってノイズがあります。3kHzの小さなピークは信号残留分と思われます。10Hz以下入力はUSBオーディオデバイス+Onkyo SE-U55X(ライン出力側は0.3Hzまで保証)では参考程度です。赤線がピークホールドです。Maxの周波数はその時々によって5−30Hzに分布しました。ワウよりもフラッター成分のほうが多い結果になりました。テープのたるみによりテスト結果は悪化しますので一度裏面を再生してから測定しました。

オシロの波形:このワウフラメータのオシロ出力はMODEやINDICATIONに関係なく生の波形が出力されます。5msec/divでの波形は写真では波が重なって見えるが目で見たところ上の波形(スケール10msec)と相似です。

私のワウフラッターメータは正常に動作するようですが旧いもので校正もしていません。簡単な校正方法とワウフラッター率の内容を確認するためにefu氏のWaveGeneで実験しました。Wave1サイン波3.15kHzをWave3サイン波でFM変調すると、Wave1とWave3の振幅差がそのままメータに反映されました。つまり-40dB=1%、-60dB=0.1%、-80dB=0.01%。3150Hzと0.55Hz(−40dB)の時(ワウ1%)はパソコンのスピーカーでもビート音が聞こえました。−60dBの時(ワウ0.1%)でははっきり聞き取れませんでした。 ワウフラ0.1%以下であれば問題ないとする従来の経験則も同意できるもののようです(例えば3〜6Hzでは−50dB=0.3%でも聞き取れます)。-40dB=1%時DIN W&Fのメータは0.97%(JISの方は0.71%)を指示し、他のレンジも同程度のずれなのでそのままにしておきました。CCIR=DINも確認できました。Wave3を6Hzにしてワウとフラッターを切り替えてもフラッターがほんの少し多くなる程度(14:14.5位)でした。Wave3の周波数を変えてメータ反応を見てみました。Weightedの場合10分の1になるのは0.3Hzと100Hzに位置するのでほぼ規格どおりです。 Unweightedの方は上下周波数とも少し早く減衰していますが測定範囲内の周波数(JIS 0.5-200Hz, DIN 0.3-200Hz)で-3dB±1dBまで許容されているのでなんとか規格内におさまっているようです。低い周波数の読み取り値が少な目になったのはメータ振幅の中間をとったためでしょうか? [4Hzを頂点とする聴感補正カーブは現在では各規格共通=国際規格とされているようです]ー古いJISでは一番下のカーブを示していましたが1975年にはDIN/IECと同じカーブに改正されました。

frequency responses of Leader LFM-39A DIN weighted curve for measuring Wow & Flutter which is adopted also by IEC.

Curve based on Old JIS C-5521 before 1972 which is revised later to adopt DIN/IEC curve.

ワウフラッターのオシロ出力は常にW&F Unweightedの波形だが、W&Fのメータ感度切り替えにより波高が変わる。メータでクリップしない範囲でなるたけフルスケールに近くなる時、オシロ波形も精度が出てくるようだ。メータが振り切れた状態では奇数次高調波歪み(3/5/7..)が現われる。

ターンテーブルのワウフラッター

テープデッキでの測定を見ると6Hz以下のワウ波形を比較するよりもフラッター波形を見た方が違いがでるのではと予想するが果たしてどうか? MJのテストレコード(DIN3.15kHz)を使いFull scale0.3%ポジションで見たDP-2000のワウフラッター(右がUNWTD, 左がWTD)。

 

予想に反してフラッター分は少なかった。0.1%Full scaleポジションで見たフラッター成分。ワウは注意してセンターだしをしたつもりですがメータが0.05-0.1%fsまで大きく揺れて写真に取れませんでした。

ワウフラッター波形(5ms/div)*㊟:テープデッキよりも波形が規則的=単純です。(写真では3波重なって見える)。約11ms(91Hz)の周期は何? レコード自体またはピックアップ系にあるフラッターなのか? それとも某所で見た<埋込磁石構造のIPMモータのコギングトルク波形>と同じなのか? DCモータは<理論的には固定子スロットピッチの1 ピッチ分スキュー(斜めスロット)すれば影響はなくなる>が<鉄心端部での磁束の漏れなどの影響で端部における磁束密度が中心部に比べて低下してくるので,スキュー 効果が理論通り得られなくなる>とのこと。コアレスのDCモータもあり見かけはスロットレスだが磁束の谷間は現存する。デンオンのACモータはコギングが少ないといわれているので、これは駆動トルクムラというより定速度にするためのドライブ・サーボ系に由来する波形ではないかと疑える。ただそのサーボ波形がそのまま現われるとしたら<慣性質量が足りない>のか? すると同じ慣性質量なら反応の悪い自然サーボ系=ベルトのほうがフラッター周波数が低く(周期が長く)なるのか? 技術がない私では解析しようがありません。

以上は現状(一応いい音と思っている)中間サーボ・トルクでのものです。これを以下のように調整するとどうなるのか?

  1. ベルベットクリーナーで盤に触れるとふらつく最低サーボ・トルク

  2. リズムセクションがEdgyに聞こえる最強サーボ・トルク(行き過ぎか?)

上記に対応するモータのドライブ波形は壊してしまいそうなので測定していません。トランス引き出し線:橙が(pin10、11間)AC80V,緑(pin13,14間)AC33V。ピン15〜18がモータをドライブする線。モーターの回転が同期する1kΩのVRの調整角は60度以上ありますので非常にブロードです。

今回の測定から予想される結論は測定続行中なので当然まだでていません。

㊟:上図の余りにも規則的過ぎるワウフラッター波形はオシロ操作ミスなのか? この疑念が解けず測定の続きが簡単に進みません。というのもカートリッジを替えて測定すると測定値だけでなく以下のように波形も違って見えますーカートリッジのFIM歪みは1%以内であれば優秀な方です。針圧や針先の形状さらには支点支持方法で違いが出るのか? だから前述したデンオンの測定方法(Magnet Headの出力を監視し周波数変動を見るターンテーブル単体のワウフラ測定法)が有効だったのか? Magnet Headの出力の基本周波数を除去すれば、レコードやピックアップ系の精度に関係なく、じっくり観測できるように思います。別記:回転が不調のDP-7Fを入手しました。DP-7Fもターンテーブル周辺に磁化されたラインを配しそれをMagnet Headでピックアップしてコントロールするようになっています。ヘッドのギャップが少しずれていたため一周する間に速度が変化していました。ヘッドギャップを調整すると一応正常運転に近くなりました(ストロボ盤のズレは起こらない)。DP-7Fの磁気ヘッドはステレオ2チャンネルですがDP-47Fなどと違い1チャンネルしか使われていません。試しに別チャンネルに接続しても変わりはない。そこで空いたチャンネルの波形を実際にいろんなレコードを掛けてオシロスコープで観察してみましたが明確な周波数変動は発見できませんでした(残念ー何が残念なんだか!測定馬鹿ですね。しかも一方のインピーダンス変化は他方に影響を与えワウの一因となりうることが分かりました。磁気ヘッドのコイル間にも相互誘導や干渉があるらしい。測定対象に影響を与えない測定法はなかなかないもんだ)。ベルベットクリーナーを強く押し付けると確かに周波数は変動しますが、押し付ける力を増やし周波数の変動がオシロスコープで明確になる前に、中程度の負荷でもワウが聞こえ始めますーこの点では目視でみる測定器より耳の方が歪感度が高いようで、この方法(負荷による変動)ではターンテーブルの実際の(1%以下のオーダー)のワウの影響は分からない、という結果になりました。オシロスコープ上で波形歪がはっきり分かる歪の程度は数%以上でなければならない、ということも遅まきながら確認できました。速度振幅の大きいテストレコードの音溝をトレースした時のカートリッジの歪はオシロスコープで観察されますが、その時の歪量は10%をゆうに超えています。

Ladegaardのいうようにモータゴロと感じるものもアームとカートリッジの低域共振による変調なのかも知れない。同じカートリッジとターンテーブルを使ってワウを測定してもアームを換えるとワウフラ値も大いに変化することが指摘されています(P.6)。

horizontal rule

LFM39-Aで測った手持ちの20年もの回転機器:テープデッキは録音再生しているのでテープのフラッターが大きく出てしまうようです。テープの弾性による伸縮効果、俗称Scrape Flutterなのでしょうが、市販のカセットテープの弾性効果についてはその研究発表を知りません。オシレーターを使わない場合は純音テストトーンの音源としてテープ録音ではなくテストレコード盤の方を採用していた過去の事実があります(周波数テストレコードはDIN/JISなどで規格化されたが市販のテストテープは主に高域のヘッドアジマス調整用で全域の周波数テストではなかったー特に低域のレスポンスはレコード盤の再生より劣ることがある)。MJのテストレコードは3.15kHzを盤の中ほどに1分くらいしか記録されていませんのでじっくり観察できないのですが、以下のようになりました。1万時間以上回しているDP-2000の回転がそれほど悪くなっていないので安心しました。P-5Eはジャンクから引き上げたので実働時間はわかりませんが、ワウフラッター値はDP-2000と大差ありません。DINやIECで規定されたテストレコード自体の周波数揺れは±0.06% (unweighted ±0.12%)以内でセンターだしを妨げる高さの変化(変形)は0.3mm以内とのことなので、weightedでワウフラッター値が0.06%以内であれば実質問題ないわけで、例えそれ以上の悪い数値が出たところでテストレコードの品質と測定環境に影響されたものとも考えられます。

Items MAKE & MODEL W&F WF Wtd Wow Flutter Remarks
1 PIONEER CASSETTE DECK CT-970 DIN 0.14% 0.08% 0.05% 0.13% 3.15kHz
Quartz Lock DD around 1980 JIS 0.10% 0.06% 0.04% 0.09% 3kHz
Nominal W&F 0.023%(WRMS) with metal position tape type IV TDK MA-X54
Tape sag is most influencing measurement so that above data were obtained after one trial play.
2 KENWOOD  P-5E DIN 0.12% 0.05% 0.05-0.1% 0.04% 3.15kHz
DD Linear Tracking Record Player with cartridge AT-type MM/spherical tip
3 DENON  DP-2000 DIN 0.10% 0.04% 0.05-0.1% 0.06% 3.15kHz
Quartz Lock DD Turntable measured with ADC XLM+MICRO-MA505
Nominal W&F 0.025%(JIS-WRMS) Denon method 0.015%(WRMS)

Wow%+Flutter%≠W&F%。正弦波6Hzで変調したW&F1%は、WowもFlutterもそれぞれ約0.7%になります。

アイワのリニアトラック機LX−F1はカウンターウエイト錘を使わない昔風のダイナミックバランスアーム(ヘッドの重さ−バネの力=針圧)ですが、このアームで不思議な経験をしました。付属の薄いマットでは問題ないのですが、厚いマットではワウが聴こえるのです。針圧とは関係ないしVTAの違いも1度程度で問題が出るとは思えない。どうもスプリングのテンションが少なくなると変な音になるようです。実際のバネはある程度のテンション範囲でのみリニアだといえます。針圧可変のためにはある程度長いコイルバネが必要ですが、同じ長さで比較すると、このタイプのアームでは現代のダイナミック型より硬いバネを使う必要があり、バネの共振も出やすいようです。 LX−F1でマットを変えてワウを測定してみました。 

付属ゴムマット(2mm厚):W&F0.08%以内・WTD0.05%以内・WOW0.05%・Flutter0.04%
Jelmaxマット(4mm厚):W&F0.15%・WTD0.1%・WOW0.15%・Flutter0.15%

2倍くらい悪化しています。付属マットにスタビライザーを付けて重くしてもワウフラ数値は変わりませんのでワウは主にマットの厚さによるものと考えられます。

現代のダイナミックアームで半分だけスタチックバランスにする(例えば:針圧の内0.5gがスタチックで0.5gがダイナミック=針圧1g)のは、バネのリニアでないところを使うことになり薦められない。例外的にJoseph Grado Signature Laboratory Standard Tone Armはスタチック(重力gravity force)とダイナミック(バネの張力spring force)の比率2:1を推奨しています。見かけのトレース能力と針圧変化による歪(ワウなど)のどちらを優先するかによっても評価は分かれると思いますーそもそも「トレース能力」の内容を定義することが難しい:「偏芯やワープのないレコードに刻まれた最大速度振幅の音溝をトーレスした時の歪が許容できる一定の範囲にあること」(テストレコードによる定義)なのか又は「偏芯やワープや多少のゴミのある普通のレコードを聴感上問題なくトレースすること」(我々の感覚)。溝半径(=線速度)と針形状による録音再生限界や劣化は存在しますが「内周歪」は学問的には定義できません。「クリーニングしてゴミをなくしたら内周歪が目立たなくなった」という時の「内周歪」はもともと内周歪ではなかった類です(ゴミは内周にたまりやすい)。このように原因と結果をごっちゃにしてはいけません(自戒の言葉)。用語の内容を定義することなくしてはまともな議論も成り立ちません。学問的でないからといって私は自分の感覚を否定はしません。私はできる限り「自分の思考の筋道を開示したページ」を作りたいと願っています。

カートリッジでピックアップされるワウの原因は第一に<レコード音溝の偏心>第二に<汚れなどによる音溝と針の異常な摩擦によりカートリッジ・ダンパーの伸縮または実効針圧の変化>第三に<アームのrocking現象または低域共振>第四に<レコードのそりによる実効針圧の変化>が主な原因でターンテーブル単体はメンテナンスが行き届いている限り問題が少ないと思っています。ターンテーブルのストロボドットが揺るがなくても、針先に異常な外力が加わればワウを拾うはずです。モータのドライブ波形やターンテーブル形式により音質が変わる問題はワウとは別の観点からアプローチしなければいけないようです。つまり回転方式よりも、モータから筐体やアームへの振動伝達経路とその強度(伝達率)の方が音質上の決定要素だと今では思っています。

ワウフラッターの検知限(敷居値threshold:

テープ録音のワウフラだって従来は(70年代頃まで?)は0.07%(恐らくWRMSだからピークは0.1%)がテープデッキの設計<目標値>だったと加銅・山川先生のオーディオデータ便利帳(誠文堂新光社1998年)P.12にある。 私の好きなレコードの大半は70年代より以前なのだから、ターンテーブルのワウフラ値を問題にしても始まらない。 ジャズは40-50年代、ポータブルの録音機で収録されたものがかなりある:有名な例はCharley ChristianのMinton House録音(1941)やエアーチェック録音。 古楽器では少し遅めにした方が雰囲気が出るし意図的にピッチを落として弾くリュート楽器や演奏家もある。 DDでも回転シャフトに傷やごみがあるか油切れすると、一定の周期で瞬間的に回転が遅くなることがある。この変動はストロボでも観察されるー定速・ストロボ縞ズレ・定速となる現象でサーボが不安定になった時にも見られる。そのような現象が起こったらメンテナンスが必要なだけ。BDで例え一方向ドリフトが出たとしても聴感上は問題がないと思っています。1分とおかずストロボ縞が右往左往するようなターンテーブルはメンテナンスがしっかりしていればありえない。イギリスの田舎や第3世界では電源周波数の変動が結構大きくシンクロナスモーターで回転変動が出るそうですが、日本では普通50Hz±0.1Hzです。周波数の変動はワウフラのように急ではなく長い時間単位で変動するようです(発電タービンのイナーシャはターンテーブルのモータと比べれば桁違いに大きい)。 DDは一定の抵抗値では定速度になるが、断続的負荷変動にはそれほど強くありません。試しに安物のリニアトラックのDDターンテーブルを傾けて取り付けプラッターが一部箱と軽く接触するように取り付けた所、<定速・ストロボ縞ズレ・定速>現象が出ました。

以下の表は1965年NAB規格で規定されたテープ再生機のflutter要件=最低条件(NABではwowを含めたワウフラの意味でflutterと呼んだ)。1953年のNAB規格では聴感補正はなかったが1965年の改正時にDINと同様の聴感補正カーブを採用した。Audio1967年7月号でHerman Bursteinは次のように述べています:「1953年のNAB規格では単に"the instantaneous peak flutter and wow shall not exceed 0.2% ... when recording and reproducing on the same equipment"とされ測定器や測定法については触れなかった。。。テープスピード15ipsで補正しない値で比較すると1953年のピーク値0.2%は1965年のrms0.15%と実質的な違いはない」 さらにテープスピードについて面白いことが書いてありました:「1953年のNAB規格では15ipsが正標準で7.5ipsは副標準で30ipsは補足標準となっていたが、1965年の規格では7.5ipsが標準スピードで3 3/4ipsと15ipsは補足標準スピード。」

Tape Speed (ips=inch per second) Unweighted Flutter (rms) Weighted Flutter (rms)
15 0.15% 0.05%
7 1/2 0.20% 0.07%
3 3/4 0.25% 0.10%

テレフンケンの1970年の資料からの抜書き:図3は聴覚野の図です(原図は不明ですが最近の物と同じで1934年ベル研究所が発表したものを修正したもののようです)。ワウフラ測定に3150Hzを選んだ訳は音程感度のピークがそのあたりにあるからとしています。図4はピアノ演奏を録音しそれを特殊な機器を使って周波数変調(FM Distortion)した時のWow&Flutterの聴覚敷居値(% peak value)を示した図でStottとAxonが1957年JAESに発表した論文 "The Subjective Discrimination of Pitch and Amplitude Fluctuations in Recording Systems"からのものです。繰り返しの速度が低いところ(此処では4-15サイクル)が感知しやすいことを示し聴感補正カーブの有効性を傍証しています。加銅鉄平・山川正光 共著「オーディオデータ便利帳」(誠文堂新光社1998)P12には主に1kHzを周波数変調した場合の検知限の比較表(1950年代NHK/Axon/Comerci/Zuicker=Zwickerの誤植)が載っています。

共振とワウフラは別々に計測するのが一般ですが、それでは実際のプレーヤの音質評価に結びつかないことがあります。日本ビクターの特許(特開S56-47903/特許1279820)「試験用レコード」に興味深い記述がありました:「ところで、レコード盤を再生した際、可聴周波数以下とされる20Hz以下においてカートリッジとアームとが低域共振してもそれが数kHzにある楽音に対して影響を与えずそれ程音質が劣化しない場合があり、一方、上記可聴周波数内の低域周波数特性が平坦でも混変調等の他の要素の影響によって楽音の周波数に悪影響を及ぼす場合がある。」 そこで3Hz〜125Hzの低域周波数Sweep信号に3kHzを重畳(superimpose)し、縦方向(もしくは垂直・水平両方向)に20ミクロンの振幅でカットしたテストレコードを提案しました。それにより低域周波数の各帯域ごとに発生する揺らぎ・共振が観測でき、プレーヤの特性を正確に知ることが出来るそうです。

horizontal rule

Calibration of Wow&Flutter Meter:

In Dec 2003 I got second-handed Leader LFM-39A (made in 1979). From my simulation of wow-frequency modulation(0.55cycle/s) by eccentric hole I assumed that wow/flutter is a kind of frequency modulation of fundamental frequency - this is ascertained by reading actual frequency fluctuation on playback of MJ test record (3.15kHz) and Japanese free soft WG.EXE-this has function to generate sine wave combined with Frequency Modulation from another channel (any frequency). I have digital sound processor Onkyo SE-55EX.

I tested wow-flutter meter as follows: Generating one channel fixed 0dB at 3.15kHz(DIN/IEC/new CCIR) or 3kHz(JIS/NAB/old CCIR) to be modulated with frequency by another channel: 0.1 to 300Hz (-40 to -80dB). The meter indicated around 1% when the difference is -40dB (modulating frequency around 6Hz), 0.1% at -60dB, and 0.01% at -80dB as expected. W&F meter shall delete fundamental from FM wave and indicate modulating frequency and its amplitude ratio compared to fundamental. In this way I gathered data though lower frequency than 10Hz is dubious with USB Audio I/O. The meter response per frequency is so near to the standards that I have no need to calibrate this meter. My DENON DP-2000 indicated flutter component around 0.06% (wow 0.05-0.1%) and W&F weighted around 0.04%. After 25 years use (more than 15000 hours) of this turntable, the W&F rating is almost unchanged from initial specifications (JIS 0.025%) since JIS RMS shall indicate 70% of DIN peak.

I come to know: 

  1. The output level to oscilloscope is corresponding to the sensibility of meter and not concerned with functions (W&F WTD/UNWTD/W/F)- always output the unweighted waves of modulating frequencies upto 200Hz.

  2. Why fundamental 3kHz or 3.15kHz is selected? It is said that the sensibility peak of human ears is located around 2kHz-3kHz. Moreover if fundamental frequency is nearer to modulating frequency, then more sharp LPF is required otherwise W&F 0.1% (-60B) cannot be measured. Why modulating frequency upto 200Hz is enough might be another story (acoustic psychology).

  3. The acoustic psychology (tests carried out by NHK-1955 and Eberhard Zwicker etc) tells us that human ears are most sensitive to wow 3-6Hz so that weighted curve for hearing compensation is decided. Upon my hearing of FM waves generated experimentally, even thru PC speakers I can hear clearly WOW of 3-6Hz upto -50dB=0.3% as something like beating echo sound while I could not discern W&F of any frequency at less than 0.1% - thus I can reconfirm conventional theory: there is no real problem in sound quality as far as continuous W&F (excluding any peaked thrust from groove irregularity) is lower than 0.1%. I suppose this is the reason why IEC recommends groove eccentricity to be within 0.2mm. Wow caused by 0.2mm eccentric groove 0.14-0.33% can be reduced to less than 0.1% if weighted with hearing compensation=1/3(-10dB at 0.55Hz).

horizontal rule

ホームページへ戻る