-線形代数- 1.代数の世界 一般に、代数は、既知の数がa,b,c,・・・というアルファベットの始めの方の文字で表され、それに加減乗除の演算(a+b,a-b,ab,a/bなど)が行われる。 特に、未知数は、x,y,z,・・・のように、アルファベットの終わりの方の文字で表される。既知と未知との関係は、方程式で表示され、 などがあり、これを解く方法、根を求める仕方が確立されている。つまり、代数の世界は、記号化された数学の一つの分野でもある。 代数学は、一次方程式 ax=b の解法に始まる。そこから、一方は1つの未知数に関する高次方程式の理論へ、他方は多くの未知数に関する連立一次方程式へ発展する。 この後者が線形代数の出発点になる。線形性という概念は、直線や平面を一次方程式で表示することから生まれた。 その後、ベクトルやベクトル空間、行列および行列式の概念が導入され、線形代数の基礎が出来上がった。 未知数xを含むn次(n≧1)の方程式は、 で表示される。ここで、a0,a1,・・・,anはこの方程式の係数、n個の解x=x1,x2,・・・,xnは根と呼ばれる。 もし、この方程式が、 に変形するならば、 である。なお、係数bkと方程式f(x)=0の根は、次のように結ばれている。
なお、これらの式のおのおのは、根の対称関数であり、x1,x2,・・・,xnの置換で不変である。 m個の未知数y1,y2,・・・,ymを持った代数方程式は、 の形の方程式である。ここで、F(y1,y2,・・・,ym)は、 の形の項の和であり、係数aαβγ・・・ρは任意、α,β,γ,・・・,ρは正の整数である。また、α+β+γ+・・・+ρのとる最大の値がこの方程式の次数である。
2.線形代数 2-1.スカラーとベクトル 大きさを与えればそれで完全に指定される量がある。ここで、大きさとは、ある尺度を単位として、何単位あるかを表わす数のことである。 物理学や幾何学では、物体の質量、電子の電荷、水の比熱、電気抵抗の抵抗値、円の直径、三角形の面積、球の体積などがある。 これらの量は、適当な測定単位を選べば、いずれもただ一つの量で表すことができる。このような量は、スカラーと呼ばれる。 一方、ただ一つの数では記述できないような物理的あるいは幾何学的な量が存在する。これらの量の完全な特性を表わすためには、大きさだけでなく、方向を記述することが必要になる。 例えば、力学における力は、この典型的な量の一つである。力を図示する場合、ある適当な尺度を単位として表した力の大きさはその長さで表現し、その力の方向に向かう矢印を伴って、有向線分で表示する。 速度も大きさと向きを持つ量である。図中で三角形を平行移動する場合、三角形の移動距離が大きさであり、その移動方向を持ち、有向線分で表示できる。 このような有向線分はベクトルと呼ばれ、その長さはベクトルの大きさ、その方向はベクトルの向きである。 二つのベクトルは、それらが同じ長さと同じ向きを持っている時に限り等しい。したがって、ベクトルは任意に平行移動してもよく、その始点は任意に選ぶことができる。 一般に、ベクトルは太文字a,b,u,vなどで記述する。また、ベクトルvの長さ(大きさ)は、|v|と記述する。 もしも、二つのベクトルaとbが等しければ、a=bと書く。異なるならば、a≠bと書く。長さ1のベクトルは単位ベクトルと呼ばれる。 2-2.行列と連立一次方程式 線形代数の基本は、連立一次方程式とそれに関連した行列式、逆行列などに関する計算を行うことにある。 連立一次方程式の解法は、理論的にクラーメルの公式により、古典的な定義に基づき、展開して求めることが可能である。 しかし、この展開式は、未知数が多くなると、大変である。そこで、一般には、行列を用いて、消去法(掃き出し法)あるいは反復法によって求める。 mn個の数(実数または複素数)の配列、
はAのi行(またはi行の行ベクトル:1≦i≦m)と呼ばれる。また、行列Aの縦の並び、
はAのj列(またはj列の列ベクトル:1≦j≦n)と呼ばれる。 つまり、(m,n)型の行列Aは、m個の行とn個の列を持ち、aijを行列Aの(i,j)成分という。 特に、行の数と列の数が等しい行列は正方行列と呼ばれる。n×nの行列はn次の正方行列(単にn次行列)という。 成分a11,a22,・・・,annは主対角成分である。 主対角成分がすべて1で、他の残り成分がすべて0のn次の正方行列は単位行列という。成分がすべて0の行列は零行列である。 また、行列は一つの連立一次方程式の係数を並べたものと見なすことができる。例えば、3元連立1次方程式、
は、次のようにマトリクス(行列)とベクトルで表示される。
2-3.行列式 n次の正方行列A、
に対して、行列Aの行列式(determinant)は、
と表示される。 行列式|A|は、余因子を使用して、展開することができる。例えば、3次の行列式を余因子展開すると、
係数行列Aの第i列を、定数項の列ベクトルyで置き換えて得られる行列をAiとすれば、連立方程式Ax=yは、 丨A丨≠0の時、ただ一つの解を持ち、次式で与えられる。 以上 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||