コラム:総合技術研修と基幹技術研修

総合技術研修と基幹技術研修

 昭和55年7月から翌年6月までの1年間、総合技術研修のデバイス技術コースを選択して受講した。この総合技術研修は、研修を通じての、創造的な思考力、合理的な認識力、積極的な行動力を養って、幅広く深い基礎技術力の獲得を目的としていた。そして、技術の体系、理論と実際との関係、関連技術との境界領域、技術の進展方向、世界の技術水準、技術の問題点等について、理解を深めることが求められた。

 講義のレベルは、研修生がその技術分野で、大学卒業程度の基礎学力があることを前提として進められた。また、当時の総合技術研修は、通信技術コース、情報処理技術コース、生産技術コース、デバイス技術コースがあった。それぞれは、毎週の曜日毎に分けられ、選択制の必須講座を受講した。デバイス技術コースの講座は、毎週木曜日が割り当てられ、電子デバイスの動作原理、電子デバイスのための材料化学、電子デバイスのための材料物理、エレクトロニクス材料、材料評価技術、半導体デバイスの製造技術、電子デバイスのための界面物性、集積化デバイスにおける電子回路、電子デバイスの実装技術、LSIのCAD等があった。最後の卒業試験は、朝8時にテスト開始、翌日の朝方までに答案提出することを前提に、選択的な問題に悪戦苦闘した。この時、あらゆる資料の持ち込みが可能であり、豊富な専門書を所蔵している図書室はすべて開放され、生徒間のディスカッションは認められた。但し、答案の内容は、論理的な思考や問題解決の手順などに対して、個性的かつ独創性が求められた。

 その後、基幹技術研修にも挑戦し、耐放射線性半導体デバイス技術コースを選択した。基幹技術研修は、総合技術研修のアドバンズド・コースであり、事業グループ内および事業グループ間共通の技術分野における高度又は先端的技術の研修である。それは企業の技術戦略に基づき、基幹となるべき技術が研修課題として選択され、他社を凌駕しかつ拡大・強化すべき技術、企業の将来にとって重要でありさらに育成・強化すべき技術、企業として確立途上にありさらに改善・強化すべき技術などが選択の観点になっていた。

 研修期間は昭和58年2月から12月までの約10ケ月間であり、このコースの研修生は幾つかの事業グループから、計11名が参加した。当時の研究開発本部長クラスが主指導講師となり、宇宙科学研究所や東京工業大学や立教大学等の教授クラス及び社内の専門家が副指導講師となった。研修は丸1日毎週行われ、講義形式を併用しているが、各研修生の輪講とセミナー形式を主体とした。膨大な最新の原著論文が毎週配布され、その内容紹介と論題に対する専門的な討議を行った。最後に、研修論文課題が与えられ、その基幹技術研修報告を作成することが求められ、その成果発表を経て、翌年2月に修了資格が与えられた。なお、「Si,GaAs結晶の放射線損傷」は、この研修成果の集大成の論文であった。

戻る