私の人生物語その8
社会変革と情報社会への道

8. 私の人生物語・その8
社会変革と情報社会への道

 それにしてもサラリーマン社会では同じ仕事を継続的に続けることの難しさを知らされた。仕事の内容は次々と変化した。 腰をすえて与えられた課題に長期間をかけてじっくりと真剣に取り組むことができなかった。 長くて三年程度が限度、組織の改変もあれば、人事異動や配置転換が頻繁に行われた。勤務地が地方や海外になることもある。 出向や移籍あるいはリストラに遭遇することもある。激変する市場社会の中で、企業が継続的に存続するためには、 社会の変化に追従しなければならない。私の場合、仕事の内容に変化はあったが、入社してから勤務地にほとんど変更が無く、 サラリーマンとして平穏無事に過ごしたようだ。一方、同期入社の多くは、地方や海外や協力会社へ出向になり、 離れ離れになっていた。知人の中には海外から嫁さんを貰った人もいた。 会社という法的に擬制的な人格を与えられた巨大な組織はその存続を求めて常に自己変革を遂げていかなければならない。 結果として、多くの企業の社員(サラリーマン)は、一定の制約の範囲内で、組織の都合に翻弄されるのである。

 社会変動を大局的に捉えれば、狩猟社会から農耕社会を経て、工業社会から情報社会へ変化してきたようだ。 特に、工業社会から情報社会への変化は科学と技術の歴史的背景と密接に関係する。 十五世紀後半から十六世紀の西洋のルネッサンスが契機となり、経済が拡大し、地動説や錬金術、初歩的な測定技術が進歩した。 十七世紀になると、可動活字の印刷術が生まれ、デカルト哲学やニュートンやライプニッツの時代になる。 日本は江戸時代に突入していた。十八世紀はイギリス産業革命、フランス市民革命、アメリカ独立宣言の時代があった。 地学と天然資源、力学と天文学、微積分や博物学等が普及した。蒸気機関が出現し、腕力から動力へとなり、機械の発達が始まった。 十九世紀は発明と発見の時代といえる。電池の発明、電信電話の発明、理論と実験の確立と科学の成熟が見られ、 電磁気の解明、数学の発展、進化論や考古学が生まれた。二十世紀は科学と技術の時代であった。二度の世界大戦があり、 物理学の進展と電子工学の発展が顕著であった。コンピュータが出現し、半導体や集積回路が普及した。 巨大科学や宇宙開発の進展も見逃せない。この百年を振り返ると、二十世紀に入る頃には、電話機、発電機、 電気機関車などが発明されていた。電気機械工業の創成期として、多くの先進国で研究機関が競い合って設立された。 二十世紀後半になり、コンピュータと半導体が普及、遺伝子工学の発達、ソフトウェアの進展、ネットワーク社会、 マルチメディア化、情報の所有権、地球規模の情報管理、動力の価値から情報の価値へと社会が変化していった。 確かに現在は、世界各国間の言葉の自動翻訳を可能にした音声や文字、自然現象や芸術的表現が可能な高品位映像など、 高度な情報を扱う高付加価値通信システムが実現した。夢のエネルギー源としての核融合発電の可能性が検討され、 新しい輸送システムとして超音速旅客機や超伝導磁気浮上鉄道の実現など、科学技術の発展が目覚しく、行き過ぎのような感じもする。 技術はあらゆる知識の集大成であり、アイデアだけで製品は生まれない。 二十一世紀の技術課題は有限の資源と有限の空間を使う工夫および自然環境と人間社会との共存が前提になる。

 20世紀の技術の進展過程を振り返れば、エレクトロニクスの分野では白熱電球から真空管(電子管)が生まれ無線電信を実用化した。 半導体の発明から集積回路へ発展した。高度情報化社会を実現するための基本コンポーネントとしての各種の電子デバイスを 生み出したのは材料技術の進歩と言える。数理科学の分野においても、物理現象の数式モデル表示から、 プログラム内蔵方式のコンピュータの出現で、数値シミュレーションや大規模な情報処理が可能になり、 新しいソフトウェアの世界を構築した。コンピュータ文化は、CAD/CAMやFA/OAの普及、 人間の脳の働きに近付いたニューロ・ファジィ・コンピュータの開発、パソコンやインターネット時代を到来させた。 一方において、人々の生活を取り巻く環境は、便利さとともに環境への汚染や自然の破壊が進み、 情報量の増大とともに自然界への認識や社会の仕組みを変えた。同時に、コミュニケーションが世界の平和に大きく貢献すると考えられ、 世界規模での情報処理が益々必要になる。未来へ向って変化への対応は、人々の知恵と努力に期待され、 過去の失敗や経験を踏まえた土台の上に継承される。

 この激変する社会の中で、半世紀以上もの期間、社会の僅かな一部分を担いながら、 我が身を置くことができたことに素直に感謝したい。しかしながら、さらなる激変の社会に突入していることは確かなようだ。 インターネットに代表される情報社会の到来は、今まで築き上げてきた人間社会のルールを根本から変更しなければ ならないのかもしれない。封建社会から市場社会への変更が余儀なくされたように、新たな社会の枠組みが求められているようだ。 社会変革の過程で情報社会へ直面した時、エネルギー消費の異常な増大や大量消費と地球環境の汚染と破壊など、 工業社会の負の遺産が顕著になった。当然、企業に求められる組織的な行動にも影響を与えた。環境問題は大気汚染や水質汚濁や 土壌破壊などの公害から始まり、四日市ぜんそくや水俣病やアスベスト被害など、人の健康を損なうことになった。 成長の限界が叫ばれ、工業化の進展が自然循環のバランスを崩し、地球規模の環境問題を惹起した。 企業内では、環境に優しい化学物質の取り扱い方法や産業廃棄物の処理方法の改良など、地球環境保全を重視する姿勢が打ち出された。 それは製品の開発・調達・生産・販売・使用・廃棄にいたる全ライフサイクルで環境に配慮した行動指針が求められた。 その後、地球温暖化の原因物質としての二酸化炭素などの国別の排出規制と排出権取引などの京都議定書が採択された。 世界人口の爆発的な増加が資源やエネルギーや食料の枯渇に結び付くとも考えられた。しかし、地球温暖化現象を取り上げると、 温暖化の結果で地球上の二酸化炭素の濃度が増えたとする説もある。環境問題の科学的な因果関係は慎重な検証が必要であろう。 エントロピー増大による地球の処理能力が有限の個体生命に限界を与えているのかもしれない。

 これまでの私の半生は、企業内で製品やサービスを含む生産活動に携わってきた。 企業は人・物・金の経営の三要素を資本の循環過程に投入し、健全経営に基づき最大利益を得ることを目的とする。 この場合、資金は株式・社債・借入金によって集められ、土地や家屋や設備などの資産・材料や部品・人件費や経費などに投入され、 管理費や販売費を計上して、商品を売上に結び付ける。売上は、債権を経由して収益となり、資金に加えられ、 一部が配当や利子や税金に回され、残余資金を生産のために再投入する。この場合、生産のための事業活動は、 新製品開発を経て、既存製品に新製品を加えて生産するが、顧客の要求を満たす必要がある。つまり、顧客からの受注を確定するか、 確度の高い受注を見込み、計画的に生産しなければならない。特に、新製品開発は研究開発活動を経て、最新技術や修得技術、 経験や技術導入や改良技術など、新規技術と進歩技術を加えて新製品を開発する。 開発された新製品は信頼性評価や品質改善を施して製品となるが、企業利益の追求を満たす生産管理活動が可能なものを商品とする。 これが一連の技術開発活動の基本であり、常に生産すべき商品群に新製品を戦略的に加え続けなければ、事業は継続的に発展しない。 当然、この過程において、競争相手が参入し、新規参入業者の脅威に晒され、買い手と売り手の交渉力が問われ、 代替製品や各種サービスの脅威にも対応しなければならない。

 一般的に、このような事業活動は戦略的なプロセスに基づいて実施される。 戦略的なプロセスは、最初に事業領域を識別して確立することであり、それに対する戦略案を作成・評価・選択することにある。 例えば、既存の事業を区分し、製品のライフサイクルと経験曲線を前提にして、 それぞれの市場の成長率と占有率を明確にする必要がある。そして、それが高成長で高い市場占有率を持つ維持すべき花形製品なのか、 低成長ではあるが市場占有率が高く収穫すべき金のなる木なのか、高成長ではあるが市場占有率の低い育成すべき問題児なのか、 低成長で低い市場占有率のために撤退すべき負け犬なのかを知る必要がある。 その上で、自社の強みや弱みおよび市場の機会と脅威を明らかにして、現市場に現製品を浸透させるべきか、 現市場に新製品を開発して投入すべきか、現製品で新市場を開拓すべきか、 新製品と新市場で事業の多角化を狙うべきかの判断が行われる。 この場合、市場浸透の戦略はコスト競争や品質競争が重要な鍵を握っている。 新製品開発は新技術のハイテク戦略を伴う技術力が不可欠である。 新たな市場開拓は応用力とマーケティング力を酷使した新市場創造が必要になる。 また、事業の多角化は市場成長の先見性と先行投資による投資力が問われる。 この上で、経済指標や市場環境を見極めて、経済的環境に基づく景気動向に注目し、 市場の競争的環境に基づく市場占有率を予測した売上試算が求められる。 さらに、費用構造などの内部的環境と採用すべき戦略との関係から得られる利益を把握しなければならない。

 この時期、私の仕事の主要な内容は半導体の生産管理であった。何しろ一万品種以上の製品を毎月数億個も取り扱うのである。 半導体の生産管理は、狭義の意味で、多種多様な製品について、受注から出荷までを扱う。 この場合、オンライン処理が可能な情報処理システムは欠かせない。地球規模で展開されている生産基地に対して、 その生産状況を一瞬にして把握できる仕組みが求められる。つまり、何の製品が、どこの工場のどの工程に、 幾つ仕掛けられているか、時々刻々と変化する状況を全世界から把握することを可能にする。このような情報処理システムは、 既に世界規模の社内情報システム構築プロジェクトの一員として参画し、その成果により顕貢賞を受賞したことでほぼ完成していた。 顧客からの情報は、品名・規格・価格・納期など受注活動に結び付くニーズ情報を主に販売部門が収集し、 商品の特性・仕様・信頼性や品質など製品開発に結び付くシーズ情報を主に技術部門が収集する。 販売部門と技術部門の相互の情報交換を伴って顧客からの受注に結び付ける。 それを計画的に生産すべく管理と具体的な技術指定に基づき、納期と品質と価格を満たす生産を行う。 生産された製品は物流に乗りお客様へ配送され、債権化された売上の回収まで、一連の行為をシステム的に処理して実行する。 特に、半導体製品の生産工程は、大きく分けると、前工程と呼ばれる拡散工程、後工程と呼ばれる組立工程がある。 拡散工程は半導体チップを作り出す工程であり、ウエハーと呼ばれるシリコン単結晶の薄い円板上に、 極めて微細なトランジスター回路のパターンを持つ、多数の同一チップが形成される。組立工程は、 ウエハー上のチップを一個ずつ切り離し、リードフレームと呼ばれる金属板に載せ、ミクロンオーダーの細い金線等で接続し、 金属のリード部分を残して樹脂に封入する。これらの生産工程で使用される装置類は多種多様であり、 数十工程から数百工程が組み合わされる。資材の合理的な調達、必要な生産設備と人材の確保、各工程の品質と日程の管理など、 システマティックに組み合わせて処理して、実行しなければならない。

 企業内の業務改革は止まる事が許されない。次々と新たな課題と難問に挑戦しなければならなかった。実務の主要テーマは、生産管理業務の再設計である。 売れる製品のみを生産する仕組み、無駄なモノを生産しない仕組み、有限な生産能力を有効に活用する仕組み、 即時に製品の確定納期を約束できる仕組み、業務を自動的に処理する仕組みなど、生産管理上の基本的な課題だけでなく、 その根本的な仕組みの解決には多くの奥の深い問題が潜んでいた。リエンジニアリングの手法に基づき、 あらゆる業務プロセスを根本的に考え直し、抜本的な再構築が進められた。分業に基づく生産や業務を情報で結び付け、 業務の流れを再構築する。成功と失敗を繰り返しながら、独自の業務改革を進めていた。間もなく制約理論の概念が普及し、 SCM(サプライ・チェーン・マネジメント)が意識されるようになった。 制約理論とは、工程のボトルネック能力に生産を同期させる方法であり、その制約を無くす工夫が重要課題になる。 この点において、「かんばん」に基づくプル情報に同期させて、生産のムダ・ムリ・ムラを無くすトヨタ生産方式と対比される。 SCMは供給連鎖の管理とも呼ばれ、市場のモノやサービスの流れを提供する供給側から消費する顧客側へ、 そのすべての取引と情報を連鎖的にチェーンで結び付け、一連の流れを全体的に管理する仕組みのことである。 この考え方は、多様なビジネスモデルを生み出し、製造業や物流関連企業、コンサルティングやパッケージベンダーなどを巻き込み、 調達・生産・納品・計画などに区分したモデル化を可能にした。そして、これらの概念やプロセスや用語やフローなどが標準化され、 国際標準(グローバルスタンダード)に向けた動きが活発化してきた。

 商取引に関する注文書や請求書は電子化され、標準化された規約に基づき、専用回線あるいはインターネットなどの通信回線を介して、 合理的に文書の作成や処理を行う環境にあった。いわゆる電子データ交換(EDI:Electronic Data Interchange)を利用した事務経費の 合理化による経費削減である。 当初は、専用回線を用いた独自の規約で取引先との電子データ交換であったが、次第に世界的な標準規約が必要になり、交換データの形式統一 が試みられるようになった。インターネットの仕組みを利用したロゼッタネットなどは電子商取引のその代表的な事例である。 そこで、品名をキーワードにして、技術情報を始め、販売情報や生産情報など、あらゆる情報を関連付け、大規模なデータベースを構築し、 世界中の多様な規約に即座に対応できる仕組みを準備した。

コラム:サプライチェーンマネジメント(SCM)の本質

 なお、ロゼッタネットの名称の由来はロゼッタストーンにある。ロゼッタストーンはナポレオン軍が1799年にエジプトへ遠征した時、 ナイル河口のロゼッタ村で発見した石碑である。古代エジプト文字ヒエログリフ(聖刻文字)が上段に、 古代エジプト後期の民衆文字デモテック(象形文字を簡易に崩した文字)が中段に、 下段にギリシャ文字(アレキサンダー大王のエジプト遠征時に支配階級で使用していた文字)が刻まれていた。 当時、古代エジプト文字は解読されていなかった。この発見によって、ギリシャ文字を頼りに、 古代エジプト文字の解読が進められるようになった。ロゼッタネットは、インターネット時代の電子商取引を可能にするため、 取引上の多様な文字や記号を解読して、世界を繋ぐ仕組みの構築である。 それはサプライチェーンを根本から変える意味での電子商取引のグローバルな標準を提供する。 すなわち、ロゼッタネットの目的は電子商取引のグローバルな標準策定とその普及にある。 また、ロゼッタネットは消費者への直販により急成長したデル・モデルに対抗するための大同団結型のサプライチェーン・モデルでもあった。 なお、デル・モデルは消費者指向の直販ビジネスモデルである。パソコンの構成と仕様を消費者が決定し、注文から納品まで短納期、 低価格、直接販売を特徴とする。一方、ロゼッタネットの狙いは、サプライチェーンの強化による在庫削減、機会損失の最小化、 企業間取引全般に関するオペレーション・コストの削減、ビジネス・スピードの向上、グローバルなビジネスへの対応にあり、 最終顧客の満足度向上にある。このために、ロゼッタネットは、 独自の規約策定にこだわらずに社会に受け入れられる真のグローバル標準を積極的に活用し、その実用化を重視した。 また、企業の自主的な参加により、規約の受益者が応分の負担をして、人員と資金を提供し、主体的に規約策定に参加し、 その成果を自由に利用できる権利が与えられる。つまり、参加企業が一定の費用を負担すれば、規約の策定作業に参加でき、 事業規模の大小に関係なく、同一権利の投票権が与えられる。

 一方では、多様なビジネスモデルが出現したことで、その活用の独占的な権利が問われるようになった。 最も単純な代表的ビジネスモデルは、従来方式に基づくものであり、モノやサービスを売りその代金を頂くという 直接的な相対取引である。そこには、生産のための部材調達の局面があり、付加価値を付与する生産のプロセス、 商品を顧客に提供して換金する手法などが存在する。同時に、競合他社が同様な手段で市場に参入する。 典型的な新しいビジネスモデルとして、自企業は、顧客へ情報を提供するが、顧客から情報提供の代金を頂かない。 顧客はその情報に基づいて、他企業からモノやサービスを購入して代金を支払う。自企業が顧客へ情報提供したことの代金は 他企業から頂戴する。これはヤフーなどが採用している。また、自企業は、顧客へ情報提供し、 顧客が求めるモノやサービスの代金を頂戴するが、顧客へモノやサービスを直接提供しない。 モノやサービスの提供は他企業が顧客へ提供する。この場合、他企業は顧客からその代金を頂かない。 その代金は自企業が他企業へ支払うのである。この仕組みはアマゾンに代表される。 モノやサービスの流れとそれに対する対価の代金の流れが必ずしも直接的に相対取引でない方式が管理可能になったのである。 この様なビジネスの仕組みを情報技術と組み合わせることで、多様なビジネスモデルが考え出され、 それぞれのビジネスモデルに特許権なる独占的な使用が保障されるようになった。 市場経済の場に知の情報が加えられ新しい変化が生まれ始めたようだ。 コンビニエンスストアでは売れ筋商品の情報が瞬時に集中管理されて、合理的な商品物流の流れが構築されている。 目に見えない情報の領域で変化が起きている。企業行動は、違法行為や不正、ミスやエラーなどがなく、 組織が健全で有効かつ効率的に運営されることが望ましい。そのために各業務に所定の基準や手続きを定め、 それに基づく管理・監視・保証を行う仕組みが欠かせない。この企業の内部統制問題にも一般的モデルが生まれ法制化される傾向にある。 環境保護に加えて個人情報保護など、情報の扱いにも多様な制約が必要になった。

 仕事や業務の内容を分業によって区別し、それぞれを情報やモノの流れで関連付けることで、科学的な様相を持つようになった。 そして、予測不可能な市場変動の動きに物理学と類似の仕組みが存在するように感じた。取引のルールに普遍性が見出されれば、 その事象は物理法則と類似である見なすことができる。このことから、市場変動即時対応のシステム化に着手していた。 しかし、経済市場が連鎖的な仕組みで結ばれ、在庫調整などに素早い動きができるようになると、 その振る舞いは次第に冗長性が失われ、企業や市場の一触即発的な行動で、一瞬に不安定な状況に陥る危険性も感じられる。 サラリーマン生活の晩年は、SCMやグローバル化を視野に入れた新たなシステム構築の一端をサポートすることになった。 生産革新を推進するグループに配属されていたが、システム構築の第一線から外れていたようだ。 企業を取り巻く環境の激しい変化を意識しながら、やり残した仕事に未練を感じつつ、定年を迎えた。 職場の都合で一年間の継続勤務を要請されて嘱託契約を結んだが、気力や体力の衰えを感じるようになっていた。 私の場合、与えられた仕事に全力で挑戦してきた。生活優先のため、仕事を選択する余裕はなかった。 一方では、仕事を自分の土俵に引き込み、自分自身に合う環境を無意識に構築してきたようにも感じる。 社会や世界を再構築したいという夢を抱きながら、その夢の実現は次世代を担う人々に託すことになった。企業環境は激変の時代を迎えた。 情報化、地球環境、エネルギー問題、企業倫理、地球規模の国境なき大競争など、大企業と云えども生き残ることが難しくなってきた。 日本は少子高齢化社会に突入するが、昔から優れた工芸や社会システムを生み出す力、質の高い商品や高付加価値産業の育成など、 他国に負けない飛躍的な発展が期待できるものを持っている。地域産業を復興させ、地域の職人技術を結集し、 高付加価値の商品開発と海外展開を目指す企業と大学や専門家などの集団を核として、 新たなネットワークの構築と人材育成の場が形成できることを願っている。

(文責:yut)

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