パワーアンプICを卒業し、本格的なHi−Fiアンプの製作を目指したのが本作品です。1980年代後半から構想を暖めてきましたが、結局製作したのは1993年です。第17作目となります。
回路は、OPアンプに、電流ブースターとしてエミッタフォロワを追加した形式となっています。CQ出版「トランジスタ回路の設計」に載っていた回路をアレンジしたものです。特にNFBは多重帰還形式になっていて、エミッタフォロワ段はDC帰還のみと、ACは無帰還となっているのが特徴です。
パワートランジスタは2SC2238/2SA968で、特にこだわって決めたものではなく、たまたま手元にあったコンプリメンタリペアです。ドライバ段は2SC1815/2SA1015で、これは説明の必要の無いぐらい一般的なトランジスタです。一応、パワー段は10ペア分、ドライバー段は25ペア分から、特性のそろったペアを選別してあります。
OPアンプはNJM4580Dです。抵抗器は一般的な金属皮膜抵抗です。
コンデンサも特にこだわってはいませんが、カップリングとNFBにはジーメンスのポリカーボネイトコンデンサを使用しました。
トランスは、近所のパーツ屋さんがジャンクとして放出したトロイダルトランスを使いました。容量は16V3Aが2回路で、外観からすると、元々低価格帯プリメインアンプ用だったと推察されます。
整流ダイオードは、今は亡きOtecで購入したファーストリカバリーダイオード、S5KC20とS5KC20Rを使いました。
ケースはアイデアルのCB−60を使いました。トランスはトロイダル型なので、電流容量の割には小型なのですが、それでもケースの約半分を占めており、余裕の無い実装となってしまいました。パワートランジスタはケースの底板に取り付け、ケースを介して放熱するようになっています。パワーアンプですので、ボリュームは省略しました。
高域まで素直に伸びています。−3dBポイントは200kHzです。低域は、入力カップリングコンデンサのため、10Hzで若干(−1dB)の低下が見られます。いずれにしても、可聴領域は完全にフラットで、申し分の無い特性です。
歪み率を示します。さすが両電源OCL回路だけあって、単電源パワーアンプによく見られる、低域での歪み率の悪化はまったく見られません。
出力無帰還ということで、歪み率の絶対値は、半導体アンプとしては良くありません。どちらかといえば真空管アンプに近い特性です。
概ね意図した感じに完成しましたが、不満な点が多いのも事実です。
パワートランジスタの放熱は、ケースだけでは少し不足だったようで、夏場はかなり熱くなります。やはり専用の放熱板を使用したほうが良かったです。そもそもケースが小さすぎで、もう少し余裕のあるケースを使うべきでした。
また出力無帰還ということで、ある程度は覚悟はしていましたが、ひずみ率が悪すぎます。ドライバ段まではNFBループに含めても良かったのかもしれません。
一番の不満点は、規模の割にパワーが取れないことで、耐圧が±22VのOPアンプ(NE5532とか)を用いるなりして、電源電圧を高く設定すれば、もっとパワーが出せたはずです。