TA7204Pは東芝のカーステレオ用パワーアンプICで、かなり昔(1970年代)の製品です。
IC単体の性能は、最大出力が4.2W(電源電圧13.2V,負荷4Ω)で歪み率が0.4%(データシートの歪み率カーブから)となっています。同等製品で秋月電子のパワーアンプキットに現在(2012年)採用されているTA7252(最大出力5.9W、歪み率0.07%)と比較すると、昔のデバイスなので当然といえば当然ですが、かなり見劣りのするスペックです。
このICを使ってモノラルアンプに仕上げたのが本機です。第4作目のアンプで、製作は1978年です。残念ながら昔の作品なので、アンプ本体はすでに解体し、右の写真のような基板だけが残っている状態です。
回路図を右に示します。回路はオリジナルではなく部品キットのものです。店の名前は忘れてしまいましたが、名古屋の新瑞橋から少し北に行ったところに小さなパーツ屋があって、そこで購入したキットです。特に特徴のある回路ではなく、データシートの応用回路に沿った回路です。現在の同等製品と比較して外付け部品が多いのは、やはり古い世代のICだからでしょう。
なお次項でも触れますが、8ピン−10ピン間の0.022μFのコンデンサは位相補正用で、オリジナルには無かったものです。発振止めのため今回挿入しました。
幸いにして心臓部の回路基板は残っていますので、性能評価をしてみました。
ただ今回の性能評価で最初に判明したのは、オリジナルの回路が非常に不安定で、ほとんど発振しかかっていたことです。このため以下の評価では、発振を止めるため位相補正用のコンデンサを挿入しての計測となります。また各部品類も30年ほど経過し、劣化が懸念されたため、すべて交換しました。
負荷8Ω、出力1V(125mW)時における周波数特性を右に示します。
-3dBで30〜90kHzとなっています。位相補正コンデンサを追加していますが、まだ若干不安定で55kHzで6dBほどピークがあります。
電源電圧13.2V時の歪み率を右図に示します。データシートのスペック値から予測されるように、100Hzと1kHzでは概ね0.2%〜0.5%、10kHzでは1%台となっています。この歪みの大きさは、明らかに音質に影響するレベルです。最近のカーステレオ用パワーアンプICから比較すると、かなり悪い値です。やはり古いICだから、と言うべき結果です。
HiFiオーディオ用としてはちょっと使えそうにありませんが、用途(カーステレオ)を考えればそれなりだと思います。一つしか所持していないのでステレオアンプとして試聴することはできませんが、音を聞いて見たい気もします。特性からすると、全く期待はできないのですが・・・。