HA1366W/WRは日立で開発された、カーステレオ用のパワーアンプICです。型番の最後にRがついているものは、ピン番号の配置が逆になっています。このICを使ってBTLアンプを組む場合、WとWRを組み合わせると、プリントパターンがきれいにまとまるというコンセプトです。写真はWRの方です。
初歩のラジオに載っていたミニパワーアンプの製作記事が、このICとの出会いでした。使いやすく安定に動作してくれたので、かなり長い間お世話になったICです。
これまでに第3作(1978)、第5作(1979)、第7作(1980)、第10作(1981)、第14作(1994)と、事ある毎に使ってきました。
最後の第14作目は今でも現役で、PCスピーカー用のミニアンプとして活躍しています。
右はデータシートに記載された基本回路です。元々カーステレオ用に開発されただけあって、外付け部品が少しですむようになっています。
カタログスペックは以下のとおりです。
最大電源電圧 18V
出力 5.5W(Vcc=13.2V,RL=4Ω,THD=10%)
ひずみ率 0.35% (Typ,f=1kHz,Po=0.5W)
ゲイン 52.5dB
LM380に比べるとゲインがかなり高いのが特徴です。また最大出力電流が4.5Aと大きく、2Ω負荷に対しても、余裕でドライブできるように設計されています(ちなみにLM380の最大出力電流は1.3A)。
右は第14作目の回路図です。HA1366Wは、NFBを12dBまで増やして特性が改善できると、規格表に記載されています。第14作の回路では、HA1366Wの5ピンに300Ωの抵抗を挿入して、NFB量を増やしています。最終的なゲインは40dBです。
右の写真は第14作の内部です。第14作は、このICを使ったパワーアンプの決定版という意気込みで製作したので、音声信号が通る電解コンデンサは、すべてオーディオ用のMUSEを使っています。フィルムコンデンサはジーメンスのポリカーボネイトコンデンサです。どの程度効果があるかはわかりませんが、一応自己満足ということで。
電源トランスは、インスタント(大阪高波)の一般用トランスHS1220で、規格は12V2Aです。本来ならこれもトロイダル型などの高級品にしたいところですが、このトランスは第3作目から受け継がれてきたもので、思い入れが結構あるので、そのまま採用しました。ケースはアイデアルのCB−60で、ルックスを良くするため、アルミのパネルを追加しています。またHA1366Wは、電源投入時のポップノイズがひどいので、ミューティング回路も挿入して、スピーカーを保護しています。
−3dBポイントで20〜80kHzと、必要にして十分な特性です。変なピークもなく素直な特性です。
1kHzではまずまずの特性ですが、他の周波数では概ね0.1%以上と、半導体アンプとしてはイマイチです。
特に低音域での悪化が顕著で、40Hzでは最大出力も低下しています。低域での特性悪化は、出力コンデンサ付きの単電源SEPP回路の限界と言うべきもので、あきらめるしかないようです。
このアンプ、特性から言っても、広い部屋でガンガン鳴らすのには向きません。能率の高いスピーカーを使うか、夜間に静かに鳴らすか、ニアフィールドリスニングが最適です。サイズも小さいですので、手軽に使えて質の高いPC用アンプとして、結構重宝しています。