LM1875パワーアンプ

2008年4月27日公開

はじめに

外観写真

 パーツ箱に眠っていたLM1875を活用しようと製作したアンプです。2008年4月に製作しました。第25作目となります。

 

LM1875について

 LM1875はナショナルセミコンダクター社のパワーアンプICです。両電源OCL(出力コンデンサレス)で使うことができ、電源電圧±25Vで20W(1kHz、8Ω)の出力が出せます。歪み率(THD)も0.015%(1kHz、20W、8Ω)と、カーステレオ用のパワーアンプICとは一線を画した本格Hi−Fiアンプ用のICです。

 ただアプリケーションの例としてデータシートに載っている回路は、いわゆるDCアンプではなく、NFBラインにコンデンサが入ったACアンプとなっています。この点が不満をもつ方もいるかもしれませんが、ACアンプであってもクリスキットP−35のように評判の良いアンプも存在するので、ACアンプだから駄目だというものではないと思います。

回路

回路図

 データシート通りの回路ですが、NFB量は若干増やしゲインを18倍にしてあります。

 NFB回路の22μFを短絡するとDCアンプになります。こうした場合、温度の変化などによる出力のDC漏れが心配ですが、他のサイトで試された方の記事を読むと、実際はそれほど問題はないようです。ただこのコンデンサを短絡して音質がそれほど変わるとも思えないので、この作品では安定動作優先で、データシートどおりACアンプとしています。

 パワーアンプとして使用する予定なので、入力のボリュームは省略しました。

 

製作

回路部写真

 性能が期待できそうなICだったので、電解コンデンサはオーディオ用を投入しました。平滑用は、若松通商で買った、ELNAのforAUDIOと刻印された電解コンデンサを使い、電源デカップリング用とNFBライン用にMUSEコンデンサを使いました。特に何か効果を狙ったというよりは、昔購入したオーディオ用パーツの使いどころという意味で、多分に気分的なものです。

 入力カップリングコンデンサは松下のメタライズドポリエステルフィルムECQ−Eです。秋葉原の鈴商でまとめ売りしていたものです。音の評判は知りませんが、電解コンデンサよりはよいと思います。抵抗器は一般的な金属皮膜抵抗器です。
 トランスは、以前作ったアンプで使っていたものを取り外して使いました。このトランス、前のアンプではオーバークオリティ気味だったので、より性能が期待できるこちらのアンプで利用することにした次第。前のアンプはまた改めて適正な容量のトランスをあてがうつもりでいます。
 整流ダイオードもファーストリカバリー型を使いました。秋月電子で売っていたER504というものです。

内部写真

 回路は、立てラグ板を使って立体配線しました。外付けの部品点数も少ない時にはこの方法が簡単で、スピーディーに製作できます。放熱板は、LM380の時でも利用したSlot1 CPU(PentiumII/III)用の放熱板で、1chで1つ丸ごと使っています。
 実はこれでも放熱性能の不足が懸念され、実際、市販のラバー製絶縁放熱シートでは、条件が悪いとICの熱保護回路が働いてしまいました。このため絶縁シートをマイカ板に変更し、CPU用の高性能グリス(もちろん導電性のないもの)を使った結果、そのような現象は起こらなくなりました。

 ケースはリード社の一般向けアルミケースです。ボリュームもないので、電源スイッチだけの味も素っ気もない面構えです。でも個人的にはこういうシンプルなデザインが好きだったりします。

 

特性

周波数特性

周波数特性

 負荷8Ωにおける、1Wと5W出力時の周波数特性を上図に示します。−3dBで8〜320kHzと、オーディオアンプとしては申し分のない特性です。変なうねりやピークもありませんでした。

ひずみ率

ひずみ率

 47〜10kHzで0.01%オーダーと、これもまた申し分ない特性です。
 出力コンデンサつき単電源パワーアンプのような、低音における歪み率の悪化も見られません。
 市販の半導体アンプに比べるとさすがに歪み率は高いですが、このオーダーでの差が音質に大きく影響するとは思えないので、特性的には十分といえると思います。

 

試聴(プラセボ入り)

 特性から予測されるように、普通に良い音がします。PMA−390Vとの比較では、このアンプのほうが若干クリアな音かなという気がしましたが、ほとんど差はないように思います。取り立てて特徴がある音ではないですが、そのナチュラルさが逆に特徴なのかもしれません。