1石エミッタ接地回路はヘッドホンアンプとなるか?(1)

2012年4月29日公開

はじめに

接地回路

 私が電子回路に触れたのは小学校4年生の時ですが、小学生6年ともなると次第に電子回路のパターンが分かってきて、デタラメながらも色々な回路を考えて、夢に浸っていました。
 その頃のノートを眺めていたら、トランジスタのエミッタ接地増幅回路にスピーカーをつなげた回路が書かれていました。スピーカーを鳴らすにはエミッタフォロア(コレクタ接地)とするのが当たり前なので、今から見ると一笑に付すような回路です。しかしながら考え直してみると、スピーカーは無理でもヘッドホン程度なら、上手に設計すれば駆動できそうな気もします。
 そう考えると少年時代の夢よ再びと言うことで、確かめずにはいられません。早速検証してみることにしました。

 

回路

回路

 まずざっくりと設計したのが右の回路です。トランジスタに超定番の2SC1815を使った非常に単純な回路で、部品も含めて少年時代の自分でも楽に作れそうな回路です。

 電源電圧はエネループ2本の使用を想定して2.4Vとしました。006Pの角型電池を使えば9V程度まで高くできますが、小信号用の2SC1815でヘッドホン駆動に必要な電流を流し、かつコレクタ損失を最大定格の枠内に収めるためには、電源電圧を低くする必要があります。ポータブルアンプを想定すると、普通の電池はサイズ的に2本までが限度と思われます。

 バイアスは自己バイアス回路としました。電源電圧に余裕が無いため、エミッタ抵抗が必要な電流帰還バイアス回路は使いたくなく、かといって固定バイアス回路では動作点が不安定でこれまた使いたくないので、エミッタ抵抗不要で比較的動作点の安定が期待できる自己バイアス回路を採用しました。またこのバイアス回路は、交流的にもNFBがかかるので、歪み率の改善も期待できます。

 出力インピーダンスは、エミッタ接地回路の場合コレクタ抵抗とほぼ同じになるため、出来るだけ低くしたいところです。かと言って低くし過ぎるとコレクタ電流をたくさん流す必要があり、小信号用の2SC1815の場合、コレクタ損失を超えてしまうことになります。この回路では33Ω負荷への対応と手持ち部品の関係で、コレクタ抵抗を27Ωとしました。このためコレクタ電流は41mAとなりました。

 またこの回路では信号源の出力インピーダンスが性能に大きく影響し、信号源インピーダンスが高いと増幅度が下がります。これは本回路の入力インピーダンスが低いことと、Rbによる負帰還量が増大するためです。この影響を低減するため、入力にあえて470Ωの抵抗を挿入しています。この抵抗の有無による性能の違いも評価したいところです。

 

特性評価

周波数特性

周波数特性

 周波数特性を下図に示します。
 低域において、Rgが無い場合、入力インピーダンスに対してカップリングコンデンサの容量が不足しているため、100Hz位から大きく減衰しています。Rg470Ωを挿入すると、その分入力インピーダンスが上がるため、減衰は改善されます。
 高域は、Rgに関わらず1MHz(-6dB)まで伸びており、非常に優秀です。

 

歪み率

歪み率

 歪み率を右図に示します。すべての領域で数%の歪み率を示し、HiFiとは程遠い性能です。
 Rgがある場合、歪み率は悪化します。NFBが増えて歪みは減るはずですが、別のところで歪みを発生しているようです。

 なお増幅率は、Rgが無い場合で5.3倍(14.5dB)、Rgがあると0.85倍(-1.4dB)でした。Rgの値が大きすぎたのか、Rgがあると入力信号が減衰していることになります。

 

まとめ

 予想されたとはいえ、評価できるのは高域特性だけで、他はヘッドホンアンプとしては無理のある数値です。回路定数を追い込んでいって、特性改善できないか検討してみます。