手軽に作れて音の良いCMoyアンプ、今や自作ヘッドホンアンプのほとんど定番となっています。CMoyアンプの楽しみ方のひとつがオペアンプ交換です。回路が教科書的な非反転増幅回路ですので、発振さえしなければ、各社のオペアンプを試すことができます。すでに色々なサイトで、オペアンプ試聴レポートなども報告されています。
ただ物理特性を評価した例はなかなかお目にかかれません。オペアンプの歪み率は普通に使えば0.00オーダーなので、計っても仕方がないと思われているかもしれません。しかしながら、CMoyアンプの場合オペアンプにかなり無理をさせているというか、ほとんど想定外の使い方をされているので、性能はカタログスペックより悪化していると思われます。
その辺をはっきりさせるため、オペアンプの種類による特性の違いを測定してみることにしました。
比較で採用したオペアンプは3種類です。
OPA2134…CMoy回路で使われたOPA134のデュアル版です。
NJM4558…オーディオ用オペアンプの元祖
LM4562…National Semiconductorが誇るオーディオ用超高性能オペアンプです。
一般的な傾向として、負荷が重いと高域特性が悪化します。オーディオ用を謳っているOPA2134やLM4562はさすがに広帯域です。
NJM4558は古いだけあって、さすがに帯域は狭くなっています。100Ω負荷では何とか問題のないレベルですが、33Ω負荷の場合、かろうじて可聴領域をカバーしているといった状態です。
100Hzと1kHzの歪み率は申し分ないです。ただ10kHzではかなり悪化しており、特に重い33Ω負荷では、0.2%前後と革命前のLM380並みです。
古いだけあって、OPA2134に比べて歪み率の悪さが目立ちます。歪み率が出力の低い段階から悪化するのは、出力電流が取れないからでしょう。もともと想定外の使い方ですから、性能が出ないのは仕方が無いのかもしれません。
さすがにオーディオ用を謳う最新オペアンプだけあって、重い33Ω負荷でも、歪み率0.01%以下をキープしています。OPA2134よりも一段と優れた特性です。1kHzの歪み率は測定限界を超えています。他のオペアンプで性能が出なかった10kHzにおいても、歪み率の増加はあまり見られません。素晴らしいの一言です。
オペアンプの性能評価と言うことで、計測するまではあまり差が出ないのではと思っていましたが、予想以上に差がある事が分かりました。特に10kHzでの歪み率は、NFB量が減ることもあって違いが顕著です。
オペアンプによる違いに関しては、OPA2134もなかなか健闘していますが、LM4562の性能が際だっています。これだけ性能が出ているなら、特にバッファアンプを追加する必要は無いと思います。こんな高性能なデバイスが、秋月電子でたったの¥250です(2008年4月現在)。半導体デバイス業界恐るべしです。
一方NJM4558ですが、やはり古いと言うべきでしょうか、物理特性はいまいちです。ただ実際に試聴してみると、少し音が甘いかなーという程度で、物理特性ほどの聴感上の違いは感じられませんでした。逆に、人によってはこういう音質が良い音に聞こえるかもしれません。このあたりは「高忠実度≠良い音」と言うことで、オーディオの面白いところだと思います。