前回(と言っても3年前になりますが・・・)、インバーテッド・ダーリントン接続により特性の改善を試み、それなりの結果を得ました。温度特性を考えての採用だったのですが、普通のダーリントン接続ではどうなのかというところも知りたいと思い、実験してみることにしました。
回路としては右図のとおりになります。前回のインバーテッド・ダーリントン接続場合は全体がPNPトランジスタになりますが、普通のダーリントン接続にするとNPNトランジスタとなります。電流の向きも逆となるため、回路図の+と−が入れ替わっていることに注意してください。
前段のトランジスタは、一般的な2SC1815としました。
1kHzにおける歪み率を右図に示します。見てのとおり普通のダーリントン接続法が明らかに歪み率が低いことが分かります。実験する前までは、あまり違いがないと思っていたので、ちょっと驚きです。
歪みの値はクリップするまで1%以下をキープしており、無帰還でも十分使えそうな数値です。
今回の実験で、ダーリントン接続でも種類の違いで歪み率がかなり違い、普通のダーリントン接続の方がかえって良いことがわかりました。この結果から、インバーテッド・ダーリントン接続の採用はデメリットが大きいと考え、今後は普通のダーリントン接続を採用した回路で実験を行うことにします。
ただ普通のダーリントン接続では、2つのトランジスタのVbe温度依存性が両方とも影響することになるので、バイアス回路にそれなりの温度補償を行う必要があると思われます。