標準的な使用法ではとてもピュアオーディオには使えないLM380ですが、何とか特性改善は図れないのでしょうか? 一般的に増幅器の特性改善でよく使われるのはNFB(負帰還)です。LM380は幸いなことに、標準的な回路でゲイン(増幅度)が34dB(50倍)といささか過剰気味ですので、この過剰なゲインを負帰還で減らせば、特性の改善と適正ゲインが得られそうです。
LM380に負帰還をかける方法ですが、反転と非反転の2つの入力があることから、オペアンプのように使うことができそうです。オペアンプと違うのは、LM380はDCアンプではないので、負帰還をかける際に交流のみを帰還する必要があるということです。そこで下に示す回路で色々実験してみました。
結果として、RNF=20kΩまでが増幅器としてのぎりぎりのラインで、それ以上RNFが低くなると発振してしまいます。RNF=20kΩの時のゲインは23dBで、11dBのNFBがかかっていることになります。もっとNFBをかけられればよいのですが、元々そんな使い方は想定されていないので、仕方がないと言ったところです。
さて、深いNFBは無理にしてもそれなりにNFBがかけられるようなので、NFBをかけたときの性能を測定してみます。
周波数特性は元々数百kHzまで伸びていることもあり、オーティオ帯域では大きな変化はないのですが、10Hz付近の低音域でよりフラットになっていることが分かります。ただ超高域に関しては、NFBが深いほど周波数特性上にピークが発生し、特にR2=20kΩにおいては若干不安定な状態になっていることが分かります。
RNF=100kΩでの10kHz矩形波応答波形です。リンギングもなく素直な応答波形です。
RNF=20kΩでの矩形波応答波形です。さすがにリンギングが出ています。単純にNFBをかけた場合、この辺が限界のようです。
最後に高調波歪み率を示します。負帰還による特性改善がきれいに出ています。RNF=20kΩでは、1Wで0.027%、30mWで0.007%と、Hi−Fiアンプとしても十分使える値となっています。
外付け部品が少なくお手軽なICと思われがちなLM380ですが、NFBにより侮れない性能を持つことが分かりました。しかしながら、増幅器が不安定になっている物また事実ですので、増幅器の安定化が今後の課題です。