286マシンでWindows95!? PC−9801EX後編
2000年5月21日改訂
2000年4月7日公開

EXの内部メモリー増設

メルコの拡張メモリー、 ERX-3000
 ある日ジャンク屋を覗くと、メルコのEX用3MB内部増設メモリーERX-3000が出ているのを見つけました。4倍速CPUアクセラレータを装着して、DOSマシンとしてはかなりの性能になったEXですが、拡張メモリーがCバス増設なのが難点。DOS/Vマシンで言うとISAバスにメモリーを接続するという今では考えられないような増設方法で、当然アクセススピードも非常に遅いのですが、CPUクロックが遅かった8086−V30時代はこういう増設方法が標準でした。286−386時代になりクロックが上がってくると、さすがにCバス増設の遅さが問題とされるようになり、より高速な内部バス増設が普及していきます。特にWindowsが普及し、メモリーにも高い性能が求められるようになると、低速なCバス接続によるメモリー増設は姿を消しました。
 そういうわけで見つけたERX-3000を即購入し、増設することにしました。それまで付けていたCバス用メモリーボードEMJ-4000mkIIは、取り外したところで使い道がありませんし、ERX-3000で増設した上に、さらに増設することができるので、そのままプロテクトメモリーとして装着し、最終的に
  640KB(EX標準) + 3MB(ERX-3000) + 4MB(EMJ-4000mkII)
という感じで、合計7.6MBまでメモリーを増設しました。面白いのは、リセット後のメモリーチェックの時、640KB+3000KB以降のメモリーカウント速度が目に見えて遅くなることです。Cバス増設メモリの遅さが実感できます。

EXはWin95の夢を見るか?
 これでWindows3.1なら十分使えるマシンになりました。が、486でメモリー約8MBというと、実はWindows95に必要な最低スペックに相当します。最低ではありますが、Windows95を使う条件を満たしています。もしかしたら元286マシンでもWin95が動作するかもしれません。動作するならどのぐらいの性能なのか?HDBENCH等の最近のベンチマークでどんな値が出るのか?等、いろいろ興味がわいてきます。  こうして、EXにWin95をインストールするという泥沼(?)に足を踏み入れることになりました。

HDD増強
 Win95をインストールするとなれば、HDDが340MBでは役不足です。ここはドーンとGBオーダーまで増設しましょう、というわけでメルコの2GBのHDDを接続しました。ところが、DOS6.2のHDDフォーマッターでマップをみてみると、たった33MBの容量しか表示されていないではありませんか。領域を開放したり、装置全体を初期化したりしましたが、結果は同じ。
 しかし、ここでピンとくる物があり、原因はSCSIボードではないかと推測。というのは、それまで使っていたロジテックのLHD-301AはHDD容量が多くて1GB前後という時代の製品で、2GBという大(?)容量には対応していないことが考えられたからです。そこでもっと最近のSCSIボード、メルコのIFC-NNを装着。予感は的中で、今度は2GBまできちんと認識してくれました。  Win95とDOS6.2のデュアルブートのためにを2つの領域を確保します。Win95用に1.2GB、DOS6.2用に800MB領域確保しました。

インストールしてみたが・・・
 元が286マシンなので、Win95インストールには非常に時間がかかるだけでなく、トラブルで何度もインストールし直すことが予想されます。少しでも時間を節約するため、CD−ROMから行う一般的なインストールではなく、CD−ROMの内容を一旦HDDにコピーして、そこからHDD間でインストールすることにします。ちょうどDOS用の領域があるので、そこにCD−ROMの内容をすべてコピーしました。
 いよいよセットアッププログラムを起動します。Win95用の領域からDOSを起動し、CD−ROMのコピーがあるパーティションのドライブから、setup.exeを起動します。
 素のままのDOSだと、セットアッププログラムのCPUチェックで、セットアップがいきなり中断してしまいますが、DOS起動時にconfig.sysにPK486SQ.COMとPKXMS.SYSを記述して読み込むことで、これは回避できます。
 セットアップは順調に進み、いつものようにシステム最終調整のためのリセットが行われました。そしてHDD起動メニューからWindows95を選択して起動したところ・・・
  「このバージョンのWindowsには386以上のプロセッサが必要です」
との非情なメッセージ。この時点では、インストーラーが削除したPK486SQ.COMとPKXMS.SYSをもう一回組み込めば回避できるだろうと思っていました。実際、DOSパーティションから起動してWin95領域にあるconfig.sysを見ると、案の定REMがついていて、読み込まれないようになっていました。さっそくエディタでREMを取り除き、再びリセット。今度は大丈夫とWin95領域から起動しました。

非情なメッセージ・・・
が、しかし、またもや例の非情なメッセージ。どうもconfig.sysを組み込む前、すなわちWin95起動の直後にCPUチェックが行われているようです。これではどうしようもありません。
 Win95インストールはここにきて暗礁に乗り上げてしまいました。

Win95のCPUチェック回避法
 昔ならこの段階で断念していたでしょう。でも今はインターネットという心強い味方があります。PC98関連の情報といえば、やはりどるこむ(http://www02.so-net.ne.jp/~dorcom/)。私のように286マシンにWin95をインストールしようとした物好きが必ずいるはずです。
 過去ログを検索すると・・・やはりいました。ログで紹介されていたhttp://www2s.biglobe.ne.jp/~a-a-net/のサイトの「RX21再生記」に、Win95をRXにインストールした詳細な記事が載っています。
 そこでは、大変巧妙な方法でWin95のCPUチェックを回避しています。すなわち、まずDOS領域からDOSを起動し、PKXMS.SYSとPK486SQ.COMを組み込んだ上で、HSB(森河 正男氏の超高速リブートプログラム。http://www.vector.co.jp/soft/dos/util/se002233.htmlで手に入ります)で再起動して、今度はWin95領域から起動するという方法です。ホットリセットの場合CPU周りの設定がある程度保持されるのでしょう。大変にうまいやり方です。
 再びトライです。ちょうどいい具合にDOS領域がすでに作ってあります。さっそくHSBを入手して、DOS領域に組み込みました。そしてあらためてDOS領域から起動しPK486SQ.COMとPKXMS.SYSが組み込んだあとHSBでリブート。再度表示された起動メニューからWindows95を選択すると・・・見事、画面に「Windowsを起動しています」とのロゴが。チェック回避は大成功です。
 あとは非常に順調でした。いささか古いI・Oデータのアクセラレータボード、GA−1024Aが装着してありましたが、それすらプラグアンドプレイで自動認識し、勝手に256色に設定してくれました。

DOS互換モード
 こうして、なんとか無事にインストールを終えることができました。
 ところが若干問題があります。システムのプロパティを見ると、DOS互換モードのため最適なパフォーマンスが得られない、となっているのです。原因は明らかで、Win95パーティションのconfig.sysに記述した、PK486SQ.COMとPKXMS.SYSのせいです。もともとWin3.1用のドライバーなのである意味当たり前です。DOS互換モードを回避するために、この2つのドライバーを外せばいいわけですが、PK486SQ.COMはともかくとして、PKXMS.SYSを外すと、起動途中で、
  「VMM32.VXDが見つからないかまたは壊れているため、Windowsを起動できません。」
というエラーを出して止まってしまいます。いろいろトライアンドエラーで調べてみましたが、config.sys内にPKXMS.SYSが組み込まれていないと、このエラーが発生することが分かりました。詳細は分かりませんが、どうもアドレス線A20の制御に関係するようです。Win95起動にPKXMS.SYSが必須となると、どうやってもDOS互換モードでしか起動できないことになります。
 I・Oデータが286CPUアクセラレータ用に、Win95ドライバーを開発してくれるとは思えません。もうこれはあきらめるしかないようです。

元286マシンのWin95パフォーマンス

HDBENCHも実行できました
 DOS互換モードとは言ってもWin95はWin95です。デスクトップはDOS/Vマシンの95と何ら変わりません(当たり前)。かつてのDOSマシン、CUIで使うことしか考えられないマシンで、GUI−OS、しかも1024*768ハイレゾリューション256色表示が動作しているのを見ると、感嘆すら感じます。
 ただし動作はシャレにならないぐらい遅く、使用感は最低です。PK486SQ.COMを外してCPUキャッシュと無効にするとさらに遅くなり、使用に耐えるどころの話ではありません。何しろウィンドウの各パーツを描画する順番が、はっきり分かるぐらいですから。
 どのぐらい遅いか、有名なEP82改/かず氏作のベンチマークプログラムHDBENCH Ver2.61( http://www.lares.dti.ne.jp/~ep82kazu/)の結果を示しておきます。

機種CPUALL TextScrollReadWriteMemory
EX改IBM486SLC/50MHz
Cache ON
515198 158693747123835 285371469
IBM486SLC/50MHz
Cache OFF
147101 179308665226209 23543
My Main PCCeleron/450MHz2037536572 2901748057499929037284 7828720623778

 L1キャッシュの効果が良く出ています。ないと本当に遅いですね。
 ちなみに一番下の行は、私のメインマシンでの結果です。

---- Memory Speed Test ---.
DataSize   Rate   .
--------------------------
4KB :  6.78 MB/Sec
8KB :  6.92 MB/Sec
16KB :  5.05 MB/Sec
32KB :  3.52 MB/Sec
64KB :  3.20 MB/Sec
128KB :  2.75 MB/Sec
256KB :  2.33 MB/Sec
512KB :  2.13 MB/Sec
1024KB :  1.90 MB/Sec
2048KB :  1.88 MB/Sec
4096KB :  1.88 MB/Sec
8192KB :  0.10 MB/Sec
--------------------------
Average :  3.20 MB/Sec
--------------------------
 メモリースピードはどうでしょうか。
 Yone氏作のMemSpeed(Ver1.1)ベンチマーク  ( http://www.lares.dti.ne.jp/~yonet/index.html) で検証します。
 右の表がその結果です。CPUキャッシュ領域で約6MB/s、 メインメモリー領域で約2MB/sぐらいでしょうか。 8194kBで極端に遅いのは、EXのメインメモリーが少なく(Total 7.6MB) HDDにスワップが起こったためです。
 PenII+BXチップセットだと、 L1キャッシュ領域で約600MB/s、 メインメモリ(PC100対応SD-RAM)領域で大体130MB/sなので、 いかに遅いかがよく分かります。
 それにしても486SLCのCPUキャッシュが、SD-RAMのアクセスより遅いのは驚きです。
Win95インストールのまとめ
 最後に、EXへのWin95インストール手順をまとめておきます。
1.DOSのFORMATコマンドで、Win95用とDOS用の2つの領域を確保しシステムを転送する。
2.DOS領域のconfig.sysに、PK486SQ.COM、PKXMS.SYSを組み込み、HSBもインストールする。
3.CD−ROMドライブを接続するか、CD−ROMの内容をHDDにコピー。
4.Win95領域からDOSを起動し、setup.exeを実行してセットアップ開始。
5.ファイル転送のあとリセットがかかる。HDD起動メニューが現れたらDOS領域からDOSを起動
6.エディタでWin95領域のconfig.sysを編集し、PKXMS.SYSとPK486SQ.COMを有効にしておく。
7.HSBでリブート。またHDD起動メニューが現れるが、今度はWin95領域から起動
8.Win95が起動し、インストールが続行する。システムの最終設定が終わったらインストール終了。
9.Win95を使うときは、まずDOS領域から起動して、HSBでリブートした後、Win95領域でWin95を起動するようにする。


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