FreeBSDで活用!PC−9821Cx編
2000年2月26日執筆
購入のいきさつ
PC−UNIXがはやり始めた頃でした。会社でも、使われなくなった486系DOS/V機にFreeBSDをインストールし、サーバーやルータとして再活用していました。(私は部内ネットワーク管理者なのです。)
そんな仕事をしていると、同じUNIX環境が自宅にも欲しくなってきます。そのとき所持していたパソコンにFreeBSDを導入することも考えたのですが、メインマシンではHDD容量に余裕がなく、エプソン486GRでは標準でグラフィックアクセラレータを持たないことからX−Windowの動作に不安があり、PC−9801RAではさすがに役不足でしたし、グラフィックアクセラレータ内蔵で一番使えそうなPC−9821Xeは手元にないという状況で、とにかくFreeBSDをインストールできそうなパソコンが手元にありませんでした。
そんな状況の中、安いDOS/V機でもあればと行きつけの中古ショップを覗くと、ジャンクコーナーに486搭載と札のついた、手頃な大きさの9821がおいてありました。それがこのCxでした。いったん家に帰り、Cxのスペックをチェックすると、483/33MHzのグラフィックアクセラレータ内蔵で、FreeBSD(98)にはもってこいのスペック。さっそく店にとって返し、購入しました。
さあ、チェックだ
さっそく購入したばかりのCxのチェックを始めます。Cxは98Multi CanBeと呼ばれた家庭向けの製品で、本体に合わせたデザインの15インチディスプレイが標準でついています。買ったCxにはディスプレイはなく、そのためにジャンク品扱いになったのでしょう。本体の天板に虚しくあいていた、ディスプレイ取り付けのためとおぼしきネジ穴が哀愁を誘います。
まず、掃除と内部チェックのため正面パネルと上蓋を開けます。CxのCPUはFDDの後にあるCPUボードにあります。CPUボードを外してCPUを見ると、なんとそこには33MHzの486SXではなく66MHzの486DX2がついていました。前のオーナーがアップグレードしたのでしょう。そして、Cxは標準で1ドライブ構成のはずなのに購入したのは2ドライブついているのにも気がつきました。もしやと思いメモリースロットもチェックすると、やはり増設してありました。増設RAMサブボード(PC-9821CX-B01)とその上に装着された4MBのSIMMが2つ。つまり8MB増設されており、全体で15.6MBものメモリーを持つマシンでした。
前のオーナーはかなりのアップグレードを試みたようです。これならWindows95でもいけます。予想以上のスペックに思わず顔がほころびました。
まあ、そうは言っても動かなければ意味がありません。とりあえず電源投入してみます。しかし、グラフィカルなCanBe起動画面が表示された後、エラーを起こして止まってしまいました。そこで、NEC版MS−DOS6.2のインストールディスクをFDDに挿入し再起動。今度はすなおにDOSが起動しました。基本的なところは問題なく使えそうです。次はHDDです。DOSから"FORMAT /H"コマンドでHDDフォーマットを試みます。ここでHDDが認識されていないと、はねられてDOSに戻ってしまうのですが、幸いHDDは生きているようでフォーマット画面が表示されました。マップで既存のHDD情報を読むと、容量270MB、何のデータも入っていないまっさらな状態でした。HDDだけで起動しなかったのは当然です。さっそくHDDをシステムフォーマットして、HDDからDOSを起動させることができました。
パワーアップ!
HDDは生きていたのですが、270MBでは大したことはできません。そこで、昔のDOS/V機に使っていた2GB−IDEディスクを代わりにつけることにしました。新しいHDDにすげ替え、DOS6.2のFORMATコマンドから初期化−領域確保−システム転送で、問題なくシステムフォーマットが完了しました。なお領域確保の際、DOS領域は500MB程度にとどめ、残りはFreeBSDのため残しておきました。
せっかくですのでメモリーも大増強します。メルコのEMF-P16が手元に2枚あったので、これを増設RAMサブボード上のSIMMと交換しました。これでメモリーは計35.6MBとなりました。
ここまで来るとCPUも増強したいところですが、CxのCPUはソケットではなく基板にじかに半田付けされており、手軽にCPUだけ交換というわけには行きません。1996年頃に売っていた、486DX4やCyrix5x86を使ったCx用CPUアクセラレータがあるといいのですが、CPUアップグレードはとりあえず断念です。中古・ジャンク屋で見つけたら即Getすることにします。
内蔵TVボードも入っていましたが、使うには付属品のドライバーディスクが必要です。ドライバーディスクの入手はほぼ不可能と思われるので、結局、内蔵TV機能の利用をあきらめ、ボードごと取り外してしまいました。代わりに手元にあったアイ・オー・データのGV-MTV/98を装着しました。
ここまでの経緯を表にまとめてみました。
| 標準状態のCx | 購入したCx | パワーアップしたCx |
CPU | i486SX/33MHz | i486DX/66MHz | i486DX/66MHz |
Memory | 7.6MB | 15.6MB | 35.6MB |
HDD | 270MB | 270MB | 2GB |
FDD | 3.5inch 3mode×1 | 3.5inch 3mode ×2 | 3.5inch 3mode ×2 |
Graphic | Cirrus Logic GD-5430 | Cirrus Logic GD-5430 | Cirrus Logic GD-5430 |
そのほか | FAX Modem(14.4kbps) TV機能 | FAX Modem(14.4kbps) TV機能 | FAX Modem(14.4kbps) GA-MTV/98(アイ・オー・データ) |
Windows3.1の導入
DOSインストールが思いの外順調だったので、勢いでWindows3.1もインストールしました。最初はパッケージ版のWindows3.1を導入しました。導入こそはうまくいきましたが、パッケージにはグラフィックアクセラレータのドライバーは入っていないので、ノーマルモード(640×400)しか使えません。本来なら、製品購入時にシステムバックアップディスクを作成し、そこからドライバーを含んだWindowsをインストールすることになるのでしょうが、付属品がまったく無いジャンク品にそれは望むべくもありません。ドライバーがダウンロードできないかと思いNECのサイトも覗いてみましたが、アップデートプログラムはあるものの、パッケージ版にインストールできるようなドライバーはありませんでした。
ここで、高解像度でWindows3.1を使うのに行き詰まってしまったのですが、そのときふとあることに気が付きました。そういえば、新品購入したXeのグラフィックアクセラレータはCxと同じCirrus Logic GD-5430。もしかしたらXeのバックアップディスクがそのままCxにも使えるのではないか、と。果たして、Xeのバックアップディスクを使ってインストールしてみると、見事にWindows3.1を高解像度で動作させることができました。
こんな感じでWindows3.1を無事動作させることができましたが、XeにプレインストールされたWindowsをCxに使うのはライセンス上問題です。結局、動作確認できたことに満足してWindows3.1は削除し、DOS環境に戻してしまいました。
FreeBSD(98)の導入 さて、もともとこのマシンはPC−UNIX用に購入したので、さっそくFreeBSD(98)をインストールすることにします。導入するバージョンはUNIXUSER誌1999年3月号に付属していたFreeBSD2.2.8にしました。インストールはいろいろなところで書かれているように、まずインストールフロッピーを作成してそこからブートし、あとはインストーラーに従って行うだけです。インストールフロッピーのカーネルで、Cx内蔵のCD−ROMも問題なく認識されました。このCD−ROMが2倍速という低速ドライブで、多少時間がかかったのですが、インストール自体は何ら問題なく完了しました。
次はX−Windowの設定です。XF98Setupを起動し、Mouse、Monitorを現在の環境に合わせます。Card設定は、Card ListにあったPC-9821Cxを指定しました。すべて設定してさっそくXを起動しますが、画面が真っ黒になってしまい、何も表示されなくなってしまいました。しかもキー入力すら受け付けなくなり、シャットダウンもままなりません。こんな場合、本来ならイーサネットやシリアルポートからログインして、問題のプロセスを殺すなりシステムをシャットダウンすべきなのでしょうが、面倒だったので、最低の手段と思いつつリセットボタンでリセットしました。幸いにして無事に再起動させることができました。
気を取り直して今度は98ノーマルモード(EGC)で設定を行います。ところがこれも失敗で、core dumpを吐き出してしまいます。ムムムと思いつつ、次に9821モード(PEGC)の設定で再挑戦。最初は画面がめちゃめちゃになってしまってダメかと思いましたが、Modeselectionで640*480を指定することで、無事にXの起動に成功しました。
さて、何とかXが使えるようにはなりましたが、640*480の狭い画面ではあまりうれしくありません。せっかくGD-5430が内蔵されているので、これを使って広い画面で使いたいものです。ふたたび、XF98Setupでトライです。設定と失敗を何度か繰り返すうち、Card ListでPC-9821Cxを設定したあとDetailed Setupボタンを押すと、画面中央にあるAddtional lines to add...と書かれたボックス内に「Use Option "no_bitblt" if you have graphics problems...」とあるのに気が付きました。追加オプションで"no_bitblt"を指定するといいようです。さっそくボックス内に"no_bitblt"を追加してXを起動します。すると今度は見事にXが起動し、設定した1024*768の高解像度で画面を表示できました。
その後のCx
奮闘の甲斐あって、CxはFreeBSDマシンとして活躍中です・・・と書ければ良かったのですが、実はあまり使っていません。一番大きな理由は、イーサネットボードが無いことで、ネットワークの使えないUNIXは魅力半減です。イーサネットボードを入れればいいのですが、他にしたいことも多くて、後回しになっています。
そんなわけで、Cxはもっぱら、98−DOSゲームと3.5FDDのメディアコンバートに使っている状態です。せっかく装着したGV-MTV/98も全く活用していません。勿体ないことです。
さらに活用できるように、いろいろな強化を考えない訳でもないので、その暁にはまたここに追加レポートしたいと思います。
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