火災調査探偵団                 Fire Investigation Reserch Team for Fire Fighters
Title:「百貨店等の火災」
D1-03   07’11/04 ⇒ 19’02/20      .   
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1, 百貨店等火災の主な火災事例(物販店舗も含まれる)
 過去からの主な百貨店等火災事例


  ○左図は、主な百貨店等の火災です。
 赤色番号は、「消防白書」掲載と同じです。
  焼損床面積が不明の火災は、「?」で記載
 しています。
  右端欄は、火災学会「火災誌」に掲載され
  ている事例を通巻Noで入れています。
  欄中の( )書きは、月刊「近代消防」に
 掲載されており、(H2-04)は
 平成2年4月号です。
 
 注) 表中の数字等は、間違っていること
 もありますので、注意してください。

 
  延焼中の大洋デパート。
  増築工事仲の火災。
 (最終的な死者は104名)
 改修工事により消防設備等の改修
 が予定されていたが、過去2年間防
 災訓練はなされていはいなかった。

 
  延焼中の神戸デパート。
  防火区画の不備。

2, 百貨店等の火災による法令改正
 1970年(S45)12月26日  水戸市・中央ビル火災
     (雑居ビル、出火したB1が百貨店の飲食店街)
    歳末の混雑した地下から14時30分頃出火し、耐火7/2をほぼ全焼した。防火管理未選任・消防計画未作成、自火報ペル停止など、
    管理がずさんであった。
      
☆ S46.06.01 法令改正。法8条等の強化。
       ・法8条第1項2号(管理権原者は遅滞なく防火管理者の選任を届け出る。)
           〃   3号(防火管理者選任命令)
 
1972年(S47) 05月13日 大阪市・千日デパート火災 
      (雑居ビル、出火した3Fは百貨店の婦人服売り場)
     最も多くの死者を出した火災。耐火7/1の約1/3が焼損した。7階のキャバレーの客と従業員等が犠牲者。
     工事中に出火した。 共同防火管理なし、自火報ベル停止、避難誘導なし、など管理がずさんであった。
       
☆ S47.12.01 政令改正。政令3条等(防火管理者の資格等)の強化。
         政令1条(現1条の2)「特定30人, 非特定50人」が防管該当となり、政令3条で「防火管理者の資格(管理・監督地位)」、
         政令4条(現3条の2)「防火管理者の責務」が定められ防火管理者の立場や役割が明確とされた。

  1973年(S48) 11月29日 熊本市・大洋デパート火災 
      (百貨店、2F階段踊り場から出火し各階に延焼)
    2階階段踊り場から、13時15分頃出火し、3階の店内へと燃え広がり、3階から9階へと拡大し、最終的に死者は103名となった。
    階段区画の管理不十分から全館に火煙が流れた。増築工事中であった。
        
☆S49.06.01 法令改正。 
          法17条改正により、特定用途の「既存そ及による設備設置」、「法8条(防火管理適正執行命令)」などが強化。 

3,百貨店等は、今 ⇒物販店舗含めて・・・
   百貨店等 
   わが国最初の百貨店は、1905年から営業がなされたと言われており、110年以上が経つ。
   その間、法律上は1937年に施行された初期「百貨店法」が1947年に廃止され、さらに、面積1,500㎡(大都市は3,000㎡)を対象とし改正、
   改正百貨店法となった。その後、百貨店以外の1,000㎡以上の小売店を含めて、1974年(昭和49年)3月大規模店舗法が適用となった。
   近隣の小売店舗との共生に力が注がれたが、規制緩和の中で撤廃された。 平成10年からは「大規模小売店舗立地法」へと変遷して
   いる。
    一般的に、消防法では1,000㎡以上の小売店舗と百貨店をまとめて百貨店(等)とよぶことが多い。
   現在(2018年)、日本百貨店協会に加盟している百貨店は、H.Pによると79社216店ある。
    東京23区内の「百貨店」のある区は、新宿・渋谷・豊島・中央・千代田・台東・世田谷の7区の30店舗で、他は、スーパーとなる。
  日本チェーンストアー協会(多店舗型スーパー)に加盟しているチェーンストアは58社10,045店あり、売り上げは約13兆円となっている。
  その規模から、百貨店を超えてとチェーンストア―が日本国内の国民の生活基盤を支えていることが分かる。
  面積的にも大型スーパー(GMS)は、昔の百貨店以上に大きい施設もあり、「百貨店」と「スーパ、量販店など」の垣根はほとんど「ない」とも言
  える。逆に、百貨店も食料品の扱いを増やし、通称「デパ地下」と呼ばれるスーパー的な売り場づくりにより肉薄している分野もある。
  映画館等の娯楽施設や区役所などの行政機関も入った総合複合ビルに百貨店、スーパー(SM)がテナントとして入居する施設も多くあり、単独
  の百貨店に比べて、客層の巾が極めて広くなっている。
   スーパーは、24時間営業を含め、深夜まで営業する店舗も増えている。これらの施設は夜間の自衛消防組織や防災訓練が脆弱な面があり、
  防犯上の課題も指摘されているところである。
    店舗間の競争力の違いも大きくなりつつあり、地域的な小売業から、チェーン店加盟による全国展開による「流通」を支配する系列会社が有利
  な店舗展開をしているケースもある。
    従業員の多数を「パート職」として採用し、正社員の比率を少なくして人件費圧縮につなげており、外国籍従業員も多い。
    反面、コンビニと異なり、パート職の採用巾が広く、近隣周辺の多様な勤め人を雇用する職場としての地域的な雇用機能をはたしている。
    施設内は、冷蔵・冷凍・惣菜(デリカ)・半調理品等の区分別商品が増加し、温度調整が複雑化し、大量の電気容量を使用する傾向にあるが、
  機器等を含めたメンテが追い付かない面もある。さらに、消費者の多品種化の影響、イートインの食堂部分の増床なと゜により、バックヤードなどの
  荷扱い場や廃棄品の管理も厳しい現状にある。その中にあって、コンビニ店、医薬品店等からの追い上げがあり、厳しい状況が報道されている。
   法令等の改正強化により、火災は減少し、百貨店のみを考えると東京地区には30店しかないことから、平成29年(2017年)は火災件数は2件で、
  統計的に集計する対象とはならなくなっている。また、平成20年以降10年間の火災は全て「ぼや火災」で、有効に初期消火されている。
   しかし、百貨店を含めた物品販売店舗は、平成16年に火災のあったドンキホーテイ浦和花月店のように、天井近くまで商品を積み上げ、迷路のよ
  うな通路としているケースもあり、潜在的な人命・延焼危険要因がある。出火原因としては電気系統からのものが多くを占める傾向にある。
   いずれにしても、防火区画、防火戸、避難通路等の避難施設の管理、営業時間内の自衛消防の活動能力の確保が求めらている。

4,百貨店等の火災
  百貨店等の火災-2006年頃 
 2004年~2008年の5年合計
 東京消防庁管内
   出火場所
  ☆ 2006年前後では、約75%は、「お客の出入りする空間」で、 残りの25%が従業員用の
    空間となる。
  ☆ 徐々に「売り場での出火比率が高くなりつつある。バックヤードでは、建物維持管理施設部分で
    の「出火」が増加しつつある。
   ・S61年6月14日の船橋東武デパートの火災は、地下2階の機械室から出火し、警備員3名が
    亡くなられたように、バックヤードの火災である。 
 
  火災原因
    2006年前後の百貨店等の火災原因は、「放火・火遊び」が多いが「電気機器類」が多いことにも
  気付く。 1984年頃(20年前)は「放火・火遊び」が約7割以上を占めていたのに比べ、減少し約4割
  となっている。
  電気機器類(蛍光灯・ダウンライトなどの照明器具、コード類、プラグなど)の火災が、売り場を含め増
  加しており、「火災原因」の過半を占めている
   物販店舗の火災-2016年頃 
 2014年~2016年の3年合計 東京消防庁管内(東京消防統計が平成16年版以降が百貨店等ではなく、業態の百貨店と物販に分けたため、
  年間の火災件数が少ない百貨店の火災を除いた「物品販売店舗全体の火災」を掲載した。
 
  出火場所
 
お客の出入りする売り場等からの出火は約7割となっている。
 最近の特徴として、物販であっても、バックヤードからの火災は
 「調理場」となっており、惣菜部門の拡張に安全性が伴わない
 現状がある。
  出火原因
  原因では「電気火災」が66%を占めている。配線器具やコードからの火災が最も
  多い。ついで電気機器、電気の調理器具(フライヤー等)が多い。
 2006年当時は「放火・火遊び」が4割を占めていたが、2016年では1割近くに減少
 している。最近の物販店では、テレビカメラの配備が徹底されるなど、抑止力となっ
 ている。
  消火活動
  発見は、従業員・警備員が発見しているものがほとんどで、店内監視の実効性が見られる。
  発見後に「初期消火」を行なっており、それらの初動対応は、各店舗とも、良くできており、大きな火災に至ることが少なくなっている。。
  消火活動としては、S16年のドンキ・ホーティの火災で、従業員が初期消火中に亡くなっており、出火時には「原則、お客様の避難誘導
  を最優先にして、消火できる時は消火に従事する」のが望まれる。
  しかし、現在でも、消火が優先されて、「避難誘導、通報の遅れ」が見られる火災がある。 
5,百貨店等の火災事例
  火災事例
   百貨店等の火災事例を取り上げて、注意喚起のポイントを示します。従業員の間で、危機意識を共有することが大切です。
   ①放火・火遊び ②喫煙管理 ③電気コード類の扱い ④電気機器類の保守
   このような4項目に着目してください。
   そして、万一の火災に対して、階段・廊下・非常口等に障害物が置かれていないか、初期消火の対応が取れているか、
  避難誘導の放送と119番通報などの取扱いに習熟しているか、など、消防計画に定める基本的事項が守られているかについて、
  日常的にチェックし、日頃の消防訓練につなげてください。
    そして、バックヤードは、廃棄物置き場等も含めてしっかり複数の担当者にり、安全性を確認してください。
   ①  放火の事例
   ② 火遊びの事例
   ③ タバコの事
   ④ 商品の積み上げ
   ⑤ 電気・冷凍庫ケース
   ⑥ 電気・コードの継足し

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