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三十糎艦船連合呉支部

三十糎艦船連合呉支部

1936年(昭和11年)11月14日建立。 合祀者209柱(1)[註1]

1935年(昭和10年)9月26日大演習中の第四艦隊が、岩手県三陸沖で台風に遭遇し、艦艇の多くが損傷した「第四艦隊事件」での殉職者の慰霊碑。 1948年(昭和23年)墓碑資格審査により碑文および裏面銅版が撤去されたが、1957年(昭和32年)10月に表碑文のみ復元。(1)

第四艦隊遭難殉職者之碑

第四艦隊事件について(2)(3)

1935年(昭和10年)度の秋の大演習は第一、第二艦隊で編成された常備連合艦隊(青軍)と、臨時に編成された第四艦隊(赤軍)との間で、同年7月から開始され、9月下旬に両艦隊の対抗海上決戦が実施される予定であった。 9月下旬、第四艦隊(赤軍)は津軽海峡を抜けて東航し、本州東方海面に進出しつつあったが、そのとき北上してきた台風2号と遭遇した。 、9月26日13時頃には風力27m、15時30分には30mとなり、大波浪が艦隊に襲いかかった。 この波浪により各艦は相当の損害を受けた。 主なものを以下に示す。

  • 駆逐艦「初雪」、「夕霧」:艦橋付近で艦体切断
  • 航空母艦「鳳翔」:飛行甲板前端圧壊、羅針艦橋からの操艦不能
  • 航空母艦「龍驤」:艦橋前壁損傷圧壊
  • 一等巡洋艦「妙高」:船体中央部の鋲継手弛緩
  • 二等巡洋艦「最上」:艦首部外板に皺発生
  • 潜水母艦「大鯨」:艦橋前方外板に皺発生
  • 駆逐艦「睦月」、「菊月」、「三日月」、「朝風」:艦橋圧壊

この事件発生をうけ、10月10日に野村吉三郎大将を委員長とする査問会が組織された。 委員には、のちに連合艦隊司令長官となる山本五十六中将(後に元師海軍大将)と古賀峯一少将(後に元師海軍大将)も名を連ねていた。 10月21日には、小林蹐造大将を委員長とする臨時艦艇性能改善調査委員会が海軍省に設置され、既成艦ばかりではなく、建造中および計画中のすべての艦船についての船体増強対策が立てられることとなった。 委員会は5ヶ月以上にわたって調査活動を行い、翌1936年(昭和11年)4月に各艦の強度上の計算案がまとまった。 その結果、以後の建造艦からは主要強力材(ストレングスメンバー)相互の電気溶接は中止となり、従来のように鋲(リベット)構造を主用する方針となった。 また船体補強対策が未成艦ばかりではなく、既成艦に対しても実施され、一般の小艦艇にいたってはドック入りの上、ほとんど丸裸同然に外板、甲板を取り外し、艦橋は船体と切り離して丸太で支えた状態で゜一切の補強が施された。 各工廠と民間造船所は全力で性能改善工事にあたり、大多数の艦の工事は1936年度末までに終了し、残余の艦の工事も1938年度末に完了した。 第四艦隊事件以降、艦艇の建造への電気溶接の適用が縮小され、造船技術的には後退したが、この対策以後、日本海軍艦艇の波浪による損害は皆無となった。

注記

  1. 参考資料(1)のままを示す。 ただし、同書の本文中では29柱となっており、巻末の名簿でも29名の氏名が記載されているので、29柱が正であると考えられる。 29名の内訳は、駆逐艦「初雪」乗組24名、「初雪」同乗の審判官附き1名、巡洋艦「天竜」乗組1名、巡洋艦「最上」乗組2名、乗組艦不明1名である。 このうち、「最上」乗組の2名は、一般で言われる「第四艦隊事件」に先立つ9月14日に発生した、巡洋艦「足柄」の二番砲塔爆発事件での殉職者である。 「最上」乗組員は演習の委員附きとして「足柄」乗艦中に被災したものである。 また、殉職者28名を出した駆逐艦「夕霧」の乗組員が数えられていないが、参考資料の名簿では殉職者の本籍地?を見ると、全員が呉鎮守府管下の府県である。 つまり、「第四艦隊遭難殉職者之碑」は「第四艦隊事件」だけではなく「足柄砲塔事件」他を含めての、呉鎮守府所属の士卒に対する慰霊のために建立されたものと考えられる。(4)(5)

参考資料

  1. abc梶本光義(編集責任者).呉海軍墓地誌海ゆかば:合祀碑と英霊.呉海軍墓地顕彰保存会,2005,p124-125
  2. 失敗知識データベース.失敗事例 > 第四艦隊事件.http://www.sozogaku.com/fkd/cf/CB0011022.html
  3. 飯尾憲士.艦と人:海軍造船官八百名の死闘.東京,集英社,1983,p99-114.(ISBN4-08-772441-7)
  4. 赤軍第4艦隊機密第11号 10.10.6 荒天遭難報告の件(2).アジア歴史資料センター,リファレンスコード:C05034650600.公文備考 昭和10年 T 事件 巻1,(防衛省防衛研究所)
  5. 足柄砲塔事件関係電(1).アジア歴史資料センター,リファレンスコード:C05034655200.公文備考 昭和10年 T 事件、災害 巻3,(防衛省防衛研究所)