私の音楽遍歴(7)<いっそセレナーデ>
♪「いっそセレナーデ」で静かにブレイクした陽水。心の襞をそっと触れて行く陽水の声。今まで
の日本の音楽にない新しい感覚、迷いを脱して新しい自分の世界を作り上げた陽水の初ヒット
曲ではないかと私は考えています。
♯「娘がねじれる時」、「リバーサイドホテル」などは、セックス表現に良くも悪くも寛容(鈍感)に
なっていく日本の中で、陽水ならではの表現という感じです。私は、むっつりスケベな性格の
わりにこの系統の陽水の曲は、あまり好きではありません。しかし、そういった社会風俗の変化
を敏感に捉え、独自の表現で仕上げられる才能には、感服します。
♭パフィーの「アジアの純真」を聞いた時、二人のありそうでなさそうな個性と共に歌詞の内容
にぶっ飛びました。後期ビートルズの寓話の世界のアジア版の様な作詞者は−「なんと!やはり!
そうか!陽水か」という感じでした。ビートルズの「バック・イン・ザ・U.S.S.R」を思い出させる
奥田民夫の曲もバッチリですが、私は、「陽水は、ビートルズも消化しきってしまったのか!」とい
う感想を持った程でした。
♯陽水が歌う「花の首飾り」を聞いた時に、テレビでタイガースがこの曲を歌っているシーンを
思い出しました。同世代だけが持つ「花の首飾り」への想いが連鎖反応を起こした感じです。
今になって思えば日本のGS(グループサウンズ)は、ビートルズやモンキーズの二匹目のドジョウ
狙いのプロデューサがプロの作詞・作曲家にそれらしい曲を書かせて−つまりやらせだったと私は
考えます。しかし、小学生の私にとって「花の首飾り」、「廃墟の鳩」等は、自分の知っている曲の中
では一番清楚な(神聖な)曲でした。「花咲く娘たちは〜花咲く野辺で〜」と口ずさむだけであの頃
の気分が帰って来る様な⇒生まれた経緯はどうであれ、名曲であり思い出深い曲なのです。
それを同世代の陽水が(あの頃の)思いをのせて歌うと『たまりませんな〜』の世界です。
♭昔、吉田拓郎がたしか「プライベート」という「夜霧よ今夜もありがとう」とか、他人作の歌謡曲が
入ったアルバムを出しました。今回の陽水のアルバムもコンセプト的には、似ている感じがします。
必死で売らなくても良くなって、昔の思い出にひたりながらアルバム作りをできる様な金銭・精神的な
ゆとりがこういったアルバムを作らせるのかとも思いますが、『もう曲が出来なくなっちゃったから』出
すなんて事でない事を心から祈っております。
(2001年12月29日掲載)