私の音楽遍歴(25)<鼻から牛乳(1)−今もすごいよ!バッハは>
♪「タラリ〜鼻から牛乳」を初めて聞いた時には、吹き出してしまいました。
それは、バッハのあのメロディーにアンマッチながら、いやその意外性故に
とてもマッチしてしまった歌詞に笑いのポイントを突かれた事が一つ。もう一つ
は、鼻から一筋(二筋?)流れる牛乳の白さと顔全体のアホさ観(?)がするどい
映像となって目の前に浮かんだからだと思います。
♯もうご存知かもしれませんが「タラリ〜鼻から牛乳」の原曲は、バロック時代
大作曲家ヨハン・セバスチャン・バッハのオルガン曲「トッカータとフーガ ニ短調」
の出だしです。「トッカータ」は、鍵盤に触れる(タッチ)見たいな意味があり即興
の主題を展開してゆくという様な意味があると読んだ事があります。「フーガ」は、
メロディーの追いかけっこですが、一定のルールに基づいた追いかけっこです。
この「トッカータとフーガ ニ短調」の出だしは、ドラマやギャグの中のショッキングな
状況を端的に表すメロディーとしてよく使われているようです。そしてそれに歌詞を
つけたのが「タラリ〜鼻から牛乳」です。
♭ヨハン・セバスチャン・バッハは、ヘンデルと並ぶバロック時代の巨匠であり、フーガ
様式の完成者と言われています。しかし、バッハの晩年には、「フーガ」は、旧い様式
として扱われ、バッハの死後はバッハも旧い時代の作曲家として忘れ去られた時期が
ありました。
♯忘れ去られたバッハの音楽を復活させた人は、バイオリン協奏曲や歌曲「歌の翼に」
で知られるメンデルスゾーンでした。彼がバッハの宗教曲「マタイ受難曲」を復活演奏し
た所、その素晴らしさに大反響が起こり、それがバッハ復活に繋がったのです。
♭バッハの後半生の職業は、教会付音楽監督でした。その仕事内容は、教会付の合唱団
や楽団の指導以外に毎月の様にある宗教儀式用の音楽の作曲でした。作曲する曲は、コラ
ールやカンタータ、そして「マタイ受難曲」の様な大曲まで作らなければいけませんでした。
ですからバッハの全作品中で宗教曲の占める割合は、半分か半分以上になるのではない
でしょうか。
♯「トッカータとフーガ ニ短調」はというと、世俗曲に分類されます。バッハは、その肖像画
からとても取っ付きにくそうな人間に見えますし、実際仕事の上では自分を通そうとしてか、
トラブルも多かった様です。その反面、子供や妻の為に練習曲や楽しい小曲などが入った
曲集などを作ってあげたりしています。そんな中からあの愛らしい「メヌエット ト長調」、「フラ
ンス組曲」、「イギリス組曲」、「インベンションとシンフォニア」、「平均律クラビーア曲集」などの
名作が生れています。
(2002年5月4日掲載)